偶然置いてあったテレビを目撃し、二次元にどハマりする
「うん!やっぱこれだね!」
「結局それかよ。やっぱり俺いらねぇじゃねぇか」
このスーパーに入って一時間、俺たちはようやく服選びが終了した。
彼女の審査を通った服は、なんと一着のみであった、それはもう厳しい審査だった。高校入るための「じゅけん」ぐらいのレベルと見た。
しかも森谷朱里が選んだ服というのは、俺の意見を一切聞かず、結局自分で選択したものだった。マジで俺が存在する意味は……?
俺はこいつの体型とかよく見て選んだつもりなんだよ、こいつは小柄な人間の女の中でも結構小柄なほうだ。
だから俺はこいつには可愛い感じの服が似合うと思って、子供用の可愛い感じの服を選んであげた。
我ながらナイスチョイスだと思ったのだが、その服を見た瞬間、「馬鹿にしてんの!?」と怒り、俺の案は却下されてしまった。
その時、俺の負けず嫌いな性格が災いし、どうにかしても、こいつが納得する服を選んでやろうじゃねぇかと意気込んでしまったのだ。
そして、今に至る。
「どう? 似合う? 似合うよね!」
「とても似合ってマース」
「何その適当っぷり!?」
そりゃ気も悪くなる、俺がすっごく頑張ってたのに「あ、いいねそれ」とか言って見向きもしなかったし。
もう拗ねた、勝手にやってくれ。
「むー……じゃあ買ってくるよ……」
森谷朱里はそのままレジに……向かわず、さらに店の奥に入り込んだ。
「ん? どこ行くんだ、そっちはレジじゃないが」
俺の声にまた耳を貸さず、俺は少しイラッときた、やっぱりこいつに情を向けることに意味は無い。
「えっと……あったあった」
「は? お前それ……」
何故か彼女が持ってきた服は、俺が似合うと言って持ってきた服だった。
「やっぱり、こういうのもいいかなって思ってね!」
……じゃあ最初っから素直に受け取れや! 本っ当に面倒臭い生き物だな!
でもまぁ、ちゃんといいと思ってくれたなら、よかった。選んだかいがあるってもんだし。
「ふーん……ま、俺はそれが一番似合うと思うから、いいんだけどね」
俺はそう言って、後ろを向いた。
顔が熱い……きっと俺も少し赤くなっているのかもしれない。そんな顔あいつに見せてたまるかよ。
「林田くん!」
「げっ」
だが彼女は俺の前に回り込んでくる。その時、俺は自分で「こいつからは逃げられない」と言ったことを思い出した。
彼女はゆっくりと口を開けて
「ありがとう、ちゃんと、選んでくれて」
ニコッと笑ってそう言った。そのまま彼女はレジに早足で向かう。俺はその姿から目を離すことが出来なかった。
「あいつ、服を選んでくれる友達もいなかったんだな……」
おそらく、この考えは間違っている。
どうして彼女が俺の選んだ服を買ってくれたのか、そして何故手を繋いで欲しかったのか。俺はまだその答えは分からない、わかったところでそれは多分俺自身が認めない。
ただ間違っていると分かっていても、正しさを認めたくない。それは当然我儘だ、自分勝手だ、そして何より。
人間らしい行動だ。
それが一番嫌なんだ、悪い方向に進んでしまっている、だからこそ、彼女の思いには、ちゃんと答えなくてはならないだろう。
たとえ彼女を傷つける結果になろうとも。
×××
彼女の買い物が終わり、特にやることのなくなった俺達は俺の希望により、このスーパーを見て回ることになった。
「え? じゃあ本当に林田くんはスーパーに来たことないの?」
「おう、初めての体験だ、だから色々と教えてくれ。というか俺がお願いしているんだからやれ」
「最低な人だなー……まぁいいですけど」
そんな会話を交えながらスーパーを回る、最初にはあった遠慮のなさが、今は何故かぎこちない。
「ん? おい、なんだあれは」
そんな時、俺は恐ろしいものを発見してしまったのだった
「あれって……何?」
な、なんだと!? こいつは驚かないのか!? まさか人間にとってはあれが普通とでも言うのか。
「あれだよ!あの動く絵だよ!」
俺が指さしたのはテレビ、そこには人間ではない人間が描いた絵が動いていた。
「え? アニメも知らないんですか?」
「あ、あれがアニメなの…!?」
「どんだけ田舎に住んでたの林田くん……」
こ、これが結城萌花の言っていたアニメというやつか……!
人の描いた絵が動く、とは聞いていたが、ここまで激しく動くなんて考えてもいなかった。
「すげぇ……」
ほかにも言いたいことはあった、どうして絵が動くのか、そして誰がこんな上手な絵を描いているのか……? だがまず最初に出た言葉がそれだった。
「そうですかね……このアニメ、なんか作画が一人のキャラだけに本気で他がダメダメって聞きますけど。っていうか私はもうちっちゃいころにアニメは卒業しましたからねー、漫画は読みますけれど」
じゃあなんで今やってるアニメの作画を知ってるんですかね……というか漫画か、明日になれば読めるから楽しみだ。
しばらくじーっとテレビに映るアニメを見てると。俺の目にとある一人の女の子が映った。
俺はその姿にとても見覚えがあったのだ。
「なにぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!???」
俺は驚愕を隠しきれずに、腰を抜かしながらこのスーパーを破壊するほどの大声をあげてしまった。すごい情けない……てか俺自身、こんな声を出せるのかとすら思うところもあった。
って、今はそんなこと言ってる場合じゃない!!
「おい!森谷朱里!」
テレビとは別のほうを向いていた彼女の肩をバンバンとたたき、こちらを向かせる。その顔はそれはもう心底うざそうだった。舌打ちの音とかも聞こえてしまった。
「なんです……?」
さすがにやりすぎたかな、と一瞬思ったけど実際こいつもこれぐらいのことを何度も俺にやってるわけですから、俺は悪びれもなく話を続ける。
「あのアニメに出てきた、女の子の情報はないのか!?」
「あの子って誰ですよ」
「あの子だよ! 栗色のショートヘアーの子だよ!」
「あぁ、あの子ですか……ちょっと待ってくださいね」
心底だるそうな感じで彼女はポケットから四角くて薄い謎の物体を取り出した。これは知ってるぞ、確か『けいたいでんわ』という奴だ。すごい便利な道具と聞いている。俺もほしいとは思っている。
「へぇ……名前はライア、というらしいですね、」
「ほう」
「性別は女、身長は132㎝」
「……おう」
「体重はヒ☆ミ☆ツだそうです」
「……」
「あ、このアニメの人気投票で一番人気らしいですね」
「やっぱりな」
完全に一致してやがる。ライアちゃんのプロフィールが……俺の愛する妹と……!?
「決めた。俺このアニメのファンになります」
「何急に!? もしかしてこの子に恋をしてしまったとかじゃにですよね…それなら心底気持ち悪いんですけども」
「お前超能力者?」
「……きもっ」
後ろに五歩ぐらい下がり、おそらく二重の意味で距離が開いた。
ただ俺の心はそんなことを気にしないほど、高揚している……!!
だってそうだろ! 俺は血縁上、レストちゃんに恋をすることはできなかったが…このライアちゃんにならいくら愛情をそそいでもいいんだ! そしてまだ終わりじゃあない! 二次元という世界にはこのライアちゃんを超える可愛さを持つ存在がいるかもしれない!
そう思うと、俺は速くアニメが見てみたい! もっとアニメが見たい! 漫画というものを読みたい! その思いが爆発する!!
「アニメっていいな……いくら愛でても犯罪じゃない……」
「……度が過ぎると嫌われますけどね」
森谷朱里が呆れた、といった表情でそう言った。
俺のとってそれは人間の言葉で言う一石二鳥だ気にする必要はない。嫌われるためにここに来たようなもんだしな……。
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