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全ての人類に絶望を。  作者: うまい棒人間
侵略者は頭を抱えて、疫病神は恋をする。
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どうしても、疫病神からは逃げられない

今日1日の授業の全てが終了し、今は放課後という時間になった。あるものは部活に、家に向かい、あるものは教室でだべっていた。


俺は一切部活というものをやるつもりはない、俺からしたら時間の無駄であるからである。


しかし、それはもはや昔の理想。


「ホラホラ、行くわよ林田くん!」


森谷朱里、この女によって俺の理想は粉々にされ、潰されて、焼き尽くされた。思い出すも無残な俺の理想。


彼女は俺の腕をぐいぐい引っ張り廊下を歩く。俺は今彼女に連れられて部活の入部希望をするところだ、本当にやめてもらいたい。


「……手離せ」


俺はあえて冷たく突き放すような言葉を使って、大袈裟に手を振りほどく。


先程まで背中を向けて歩いていた彼女が振り向いた。頬をふくらませて、明らかに不機嫌な顔をしていた。


 なんだっけ、確か地球にこんな生き物いたような……そうだ、フグ、だっけ?


「……だって、そうでもしないと林田くん他の人んとこ行っちゃうし」


不機嫌そうに彼女はぼそっと呟いた。なんか昼休みからこいつの様子がおかしい、なんかイライラしてるような感じでふてくされているのだ。まぁそんなの俺には気にならないし関係無いけど。


「他の人んとこ行こうが、お前は俺のこと引っ張ってくんだろが。もう諦めたよ、お前と一緒に部活には入るから手ぇ離せ」


実際もう諦めている、彼女が同じクラスという時点で諦めている。とことん自分の運のなさを恨んだね。


「……そう、ですか、わかりました」


それだけ言うと、森谷朱里はくるりと背中を向けて歩き出した。ずっと不機嫌な表情だったが、俺に背を向ける一瞬だけ、微笑んでいたような気がした。


そして俺たちはまたゆっくりと2人で歩き始めた。




✖✖✖




 そして俺たちは俺たちが初めて出会った場所。空き教室にたどり着いた。またの名も「お悩み相談部部室」である。


 「よし! それでは入部してもらえるよう部長さんに頼んでみましょう」


 「お願い? なんでそんなことしなきゃならんの、面倒だから帰っていい?」


 さっさと帰ってアニメについて研究したい、結城萌花の話を聞いた感じはすごくかわいい女の子が出るらしいじゃないか。しかも大体人間離れしてるらしいからな。しかもここ日本の文化ときたもんだ。一度は見ないと損をしそう。


 「帰らせませんよ! というか諦めたんだったらおとなしくしててくださいっ!」


 「ぐっ……」


 俺の動きを封じるために森谷朱里は俺の腹部に拳を叩き込んだ。その力は本当に女性とは思えなかった。俺の姉の一撃よりも重かったかもしれない。普通の人間がこんな強いパンチを繰り出すのか……人間を甘く見すぎていたなこれは。


 俺が苦しそうにもがいていると、彼女は「え?え?」と不思議そうな顔を浮かべていた。


 「な、なんで倒れないの?」


 「……あぁ? おいてめぇ、俺をノックアウトさせるつもりだったのか……?」


 こいつやっぱり人間の屑だ、ガチで不思議そうにしてやがる、だが俺はあいにく人間ではない、そんな攻撃びくともしないとは言えないが、膝をつくほどのものではない。


 「普通の人間なら今ので絶対に倒れるはずなのに……林田くん、もしかしてあなた」


 ガラッ


 彼女が何か言う前に、その声は扉の開く音によってかき消されてしまった。


 そこから出てきた人は、忘れもしない、俺が初めてこの世界であった人間だった。


 「もうこの部室怖いぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」


 ……人間はそう言って一目散にどこかへ走って消えていった。


 「え? ええ?」


 森谷朱里はこの流れるような状況に処理落ちしているようだった、そりゃそうだろうな、俺だってよくわからないからな。


 とりあえず中に入らないとわからない、しかし運よくあの人間は俺のことを見ないでどっか行ってくれた。もしあの人間が落ち着いていて、その状態で俺がこの部室に入っていたとなれば、俺は警察という者に逮捕をされていたことだろう。


「と、とりあえず、中で何があったか見てみるか……」


「そ、そうね」


 まずあそこで何があったのか確認せずにはいられなかった。俺らはどうも好奇心だけはあったから。


 「「し、失礼しまーす……」」


 俺たちは閉まっていた扉を静かに、そして中を覗き込める程度の隙間を開けて中の状況を確認する。


 細いため、俺は下、森谷朱里は俺の上に位置した。


 ところでおいおい、声がかぶったじゃないか、人間はこういうのをハモってしまったというらしいな。


 やめてくれよ、仲良しだと思われるだろうが。おい森谷朱里こっち見てニコニコすんな不愉快だ。合わせたくて合わせたわけでもないんだよ、むしろそうなってしまったから余計にダメージが大きいということはある。


 教室の中を見ると、そこには一人、同じく見覚えのある女性がたたずんでいた。


「……おい森谷朱里、なんであそこに山本先生がいる……?」


「なんで私なら知ってると思ったの? ぼっちだって知ってるでしょ?」


「ぼっち関係ないと思うんだがな、あ、そういえばお前、いじめはなくなったのか?」


 「い、今それ聞くの!?」


 いや、ふと思い出したからさ、しかも俺が教室にいたとき特にいじめられてる様子とかなかったから。おもいだしもしなかったんだ。


「んー……いじめられるのはなくなったかな」


「ほう、さすが俺の力だな」


 よっしゃ、これが俺本来の力よ、人一人いじめから救うのなんかわけないわ。


 感謝するんだな。とでも言ってやろうかな、と思って一緒になってのぞいていた彼女の顔を下から見てみたら。どういうわけか、げっそりとした表情になっていた。


「そのかわり、学校内で私はヤンキーみたいな扱いになってしまいました……」


「……悪い」


 あー、うん、なんかこう、情けない奴で済まなかったな、でも本来の目的であるいじめ解消はしてやったんだからそこらへんは大目に見てほしいと思う。


「……じゃあ罪滅ぼしとして、今日入部届け終わったら、少し付き合ってください」


「は?」


 いや待ておい、どういうことなの、どうしてそうなるの。今お前に付き合ってるし、これ以上俺に何をさせたいんだよ。もうやだ俺を家に帰して。


 俺がそういう前に森谷朱里は俺の口元に人差し指を持ってきた。


「拒否権はありませんよ?」


「この鬼が……」


 初めてこいつに会った時に、俺はこいつがいい人間なのかもしれないと思ったことがあった。けどいざ蓋を開けてみたらいじめられて当然の性格の悪いただの人間。悪い意味で裏切られるというのはまさにこのこと。


 だが、そんなこいつとの会話とかは基本的にむかつくし、うざいし、あんまり好きではないし、できることならやめてほしいまであるが、なかなか楽しい。


 こいつはいい人間ではなく、俺になついてしまって勘違いした面白い人間だ。


 そしてこの部活で、俺は彼女との会話する量も増えていくのだろう。そう思えれば、退屈はしないかもしれないな。


 俺がそんなことを思っていることをこいつに知られるとさらにうざったらしくなるので、このことは俺の心の中にしまっておくことにした。


 その時、もう一度、ガラッと俺たちが隙間を開けていた扉が勢いよく開いた。


「きゃぁ!?」


「うおっ!?」


 俺ら二人は扉に体重をかけた状態で中の様子を見ていたので、その支えがなくなったことで俺たちの体は部室の中に流れるようにい倒れこんだ。


「……おい、重いからどいてくれ」


 俺が彼女の下に位置していたため、俺がものの見事に彼女の下敷きとなっていたのだ、実際ほんとはこいつちゃんと食ってんのかっていうぐらい軽かったけど、早くどいてほしかったので俺は彼女が早くどいてくれるような言葉を選んだ。


 どうよ、早くどけ、俺の上にダイブしていいのは俺の妹だけだ、お前は妹と体の感触は似ているが到底及ばないんだ。邪魔だから。


 ようやく森谷朱里は俺の上からどいてくれた、さて俺も起き上がるk…ん? おかしいね、頭の上になんか乗ってるね、どういうこと? さっきまで乗ってなかったのに。


 あれ、気のせいだったみたいだ。改めて立とうとしたとき後頭部に強い衝撃を受けて俺の顔面は床に打ち付けられた。


 「ごぶっ!?」


 「お、重い、そして……痛い?」


 な、なんか怒ってらっしゃる? なんか気に障ること言ったか……?

 俺はさっきの言葉から人間が怒りそうな言葉を探してみた。そう言えばねぇさんが言ってたな。「女性に体重の話はしてはいけない」


 ……なるほど、逆鱗に触れるどころじゃない、逆鱗を踏み潰すぐらいのことをしたからこそ、俺はこうして彼女に踏みつけられているというわけですか。


「……って冷静になってる場合じゃねぇ!!痛い!痛いからやめろ!!俺が悪かったから!!」


「サイテー!!サイテー!!女の子に向かって!!」


 彼女は涙声で俺の後頭部を踏み続けた。


くっそ痛い、やべー痛い。


 本当にこいつは地球人の女なのか? こんなに強い踏み付けを本当に女性ができるものなのか?そんな疑問がどこかに消えるぐらいの威力で俺は何度も何度も床にたたきつけられた。


 はっきりわかるのは俺以外の生き物ならきっと死んでいるということだった。


 でもこれ以上は俺も危ない、仕方がない、こいつが俺を殺す気でいるというのなら、俺にだって考えがある。

 

 (ここでこいつを殺すか……?)


 このままじゃ俺は死んでしまうかもしれない、これは正当防衛である。


 すまんな、初めて仲良くなれる人間だと思ったんだがな。


 俺がこの女を殺すことを決意したとき、森谷朱里ではない声がした。


 「なにをしているんだお前たちは……」


 森谷朱里の踏みつけが止まり、俺はようやく床以外のものを見ることができるようになった。

 そして声の先を見ると山本先生がため息をつきながら、俺たちを見ていた。


 


 


 










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