彼女の頑張りによって、人間を認めたくなった。
ちょっとリンデン君優しすぎんよ〜
「わ、わたしの名前は、結城萌花といいます!よろ、よろしくです!」
そういうと、結城萌花、彼女は大げさに頭を下げた、なんか、俺が彼女に悪いことしたみたいだな……何もしないよ、「なに?」って言って彼女のほうを見ただけだよ?
「実は林田君に聞きたいことがありまして…」
「ふーん…」
そらきた、俺の思った通りだ、こいつは他の人に操られてここにきている。あの時の森谷朱里のように少しは同情するが、情けないなという思いのほうが強い。
森谷朱里は弱さを認めて、自分に原因を見いだせていたが、この女に同じことはできるのだろうか。俺はそんなことを思っていた。
「あ、あの、とってもいいにくいんですが……」
「うん」
そりゃあそうだろうね、自分が聞きたくないことなんだから。
質問の内容もなんとなく察せた。俺の顔はどうやらなかなか平均以上な部類に入っているらしく、どうせ好きな人のタイプはどんな人か、とか、趣味だとか、そんなんだろう。こいつが本当に聞きたいことを言わないのならば、俺も真実を伝える意味なんてない。適当に流してポイする気でいた。
ちなみに好きなタイプは俺の妹、趣味は妹を愛でること。言ったら引かれるから言わないというのもある。
「は、林田君って……」
「先に言っておくがすきなタイプとかつまんないことは答えな「アニメとか好きですか!?」……は?」
あ、あにめ?なんだそれは。
あまりにも予想外な質問に俺は少しだけぽかんとあっけにとられてしまった。
「い、いや、あにめ?よくわかんないけど……」
「そ、そうなんですか、残念です…」
さっきのアニメが好きかどうか聞いてきたキラキラした顔が嘘のようにしゅんとした顔になっていた。心底がっかりしているのだろう。ん? まてよ? がっかりしてるってことは……まさか、また俺の予想が外れた……?
「どうでもいいこと聞くようだけど、そのこと聞くように誰かに頼まれた……というわけではないのか?」
「いえ、わたしが気になって聞いただけですよ?」
「……すまん」
「な、なんであやまるんですかぁ!?」
彼女は俺の謝罪にとても驚いていたが、俺にとってこの謝罪は当たり前だと思っている。
そりゃ当然だよ、彼女は自分から来てたんだ、他人に任されたわけでなく自分から。それなのに俺はこいつのことを悪く言ってしまったのだ。
「まぁ、結城……さんのことを悪く思ってたから、かな」
「き、気にしませんよそんなこと、なれて、ますし……お寿司……」
「ん?なんでお寿司?」
「な、なんでもないですよっ!」
不思議な女だな、これまでこいつを抜いて2人の女性と会話してきたが(1人は会話とは呼べないが)その3人の中でも彼女が一番不思議だ。
「で、でも知らないんですか…アニメ…はぁ」
結城萌花がため息を吐いてとぼとぼと俺に背を向け自分の席に戻った。
それにしてもあにめ、か。そういえばなんか聞いたことはあるな、日本の文化ってことで。
そう思うと少し興味が湧いてきた。なんか結城萌花がとても悲しい顔しているのを見るとその容姿からかとても申し訳ない気分になってくるのだ。なにかせずにはいられない。
俺は彼女のいる席に向かった。
「おい」
「な、なんですかっ! 怒らないでください! さっきは変な質問してずびばぜんっ! 乱暴じないでぐだざいっ!」
「お、おいおい、そこまで取り乱さなくても……別に怒ってるわけじゃねぇよ」
過剰反応だな、森谷朱里と同じでこの子も見てて飽きない。
「あー、あの、あにめ? のことなんだけど…ちょっと知りたいなって思「本当ですかっ!!??」」
さっきまでのしょぼんとしていた顔はどこかへ吹っ飛び、アニメについて聞いてきた時のキラキラした表情に早変わりしていた。
「あのですねっ、アニメというのはですねっ……」
そして俺は彼女からアニメのご教授を昼休みのチャイムがなるまで延々と聞かされ続けた。
×××
「ごめんなさいぃ……」
チャイムがなり、アニメの話でテンションが上がっていた結城萌花は一気に消沈した。我に返り俺に対して貴重な時間を奪ってしまったことを泣きながら謝っていた。
「いや、別に謝んなくてもいいんだけど……」
「で、でも貴重なお時間を……」
彼女は涙を流しながら、こちらをじっと見つめてくる。おい、なんだこれ可愛いと思っちまったじゃねぇか。さすが上目遣いである、もしかして姉が可愛いと思えないのは俺より身長が高いから? なんて俺はどうでもいいことばかり考えるのだろうか。
「……お前がまず話しかけてくれなくても、俺は机に突っ伏して寝るだけだったと思うし、お前がどうこうしようと、そこまで影響があったわけじゃない」
「でも、あんなつまんないお話を長々としてしまって……」
つまんないお話、か。またそうやって自分で決める、人のことなんて気にもしないで。
けど、こいつも森谷朱里と同じで、自分が傷つくことで他人への負担を減らしている。悪いのは自分なのだと自分に言い聞かせることで相手を正当化し、自分の良さを壊していく。
「本当にごめんなさい、不快にさせてしまって」
それは怒られたくないから、その人が怖いから、といった恐怖によるものが原因だ、きっとこの女は自分の語ったことをすぐに「つまらない」「気持ち悪い」そう言われて投げ捨てられたのだろう。そうなってしまうと自分に自信が持てなくなってしまうのはわかる。
「ごめんなさい……」
でも、否定されて悔しいのは、悲しいのは、それが好きだっていう証拠だ、頑張った証だ。
だからこそ、自分が語れる好きなものを否定されることが怖くなって自分でその好きを壊す。
やめてくれよ。お前は多分悪くない。
「おいおい、何時つまんないって言ったよ結城萌花」
「え?」
ずっと下げていた顔をようやく上げてくれた。
思い出した、こいつはあの時の集団にいなかった唯一の人間。そもそも俺に伝えたいのならば集団と一緒に来ればいい、周りに人がいる方が安心して質問できるはず。こいつのような人見知りで臆病なら尚更だ。
だが、彼女は集団にわざわざ入ってこなかった。そして自分が一人になったタイミングでわざわざ話しかけてきた。
答えは、俺が集団の相手をすることが嫌そうに見えてたから、ではないだろうか?
だからあえて勇気のいる2人きりの会話を選んだ。俺を困らせないために、最大限の配慮をしてくれていたのだ。
このクラスで、唯一と言っていいほど、俺のことを考えてくれていたんだ。
こいつは、俺のさっきまでの空想が現実なら、いいやつだ。優しい人間だ。
だからこそ俺は彼女を傷つけることはしたくない、初めて好きになれそうなぐらい優しい人間に出会えるかもしれないのだから。俺は彼女の好きを自分自身で壊させるなんてさせたくない、
「なかなか興味深い話だったぞ、時間があったら見てみようと思った」
「ほ、本当ですかっ!!」
「おう、ほんとほんと」
実際本当だ、新しい知識が増えることに、嫌気がさすやつなんていない。アニメか、今度見てみっかな。
彼女はじっと俺を見つめると、実に可愛らしい笑顔で、笑った。
「ありがとうございますっ!」
……そう、正面切って感謝されるのは、慣れてない。ちょっと恥ずかしいな。
「んー、ところで、お前のおすすめってあるのか?」
「た、沢山ありますよ! SFに日常系にローファンタジーに転生ものやチートにハーレム! BLだろうとなんでもあります!よければ小説も漫画も差し上げますよ!」
す、すごいな、ジャンルの量とか。お前の静かそうな雰囲気から出るギャップとか。というか気のせいかもしれないが最後の「BL」の一言で教室がざわめいたような気がするんだけど……。
「……じゃあ、今度なんか教えてくれ」
「は、はいっ!!」
これまでで、最高の笑顔だった、ほんわかと笑って、こっちまでほんわかしてしまった。ここまで安らぎを俺に与えたのは妹以来だぜ……。
「じゃあな」
「あ、ありがとです!」
「あ、最後に聞きたいんだけど」
「なんでしょうか?」
「君が集団に混じって話しかけなかったのは、人混みが苦手だからか?」
俺のためか? なんてとてもいいにくかったので少しひねった言い方にしてみた。伝わればいいけど……。
結城萌花は何を言っているのか分からなさそうな顔を一瞬するが、すぐにハッとなにかに気が付き、ふふっと笑ってこちらを見る。
「人混みが苦手じゃ、コミケにはいけませんよ?」
可愛らしくウインクまでしてそう言った。
だが……くっ! 俺には意味がわからなかった!!向こうもひねった回答してくるとはな。でもきっと、俺の考えているとおりだろう。彼女は優しい人間だ。こんな奴もいるんだな。見直したぜ人間。
俺は結城萌花との会話を終えて、自分の席へ戻った。
今回はあんまり大きな声で喋らなかったし、教室も騒がしかったから、あんまり会話は漏れていなかったと思う、安心して自分の席に座る。
「……むー」
「なんだその顔、イラついてんの?」
「別に……」
しかし、何故か隣の森谷朱里がご機嫌ななめのようだった。こいつとはまるで波長が合わんな。俺は今いいやつと巡り会えてなかなか気分がいいのに、こいつはまるで機嫌がよろしくない。
そして俺が悪いとこいつはニコニコする。
まぁ、こいつが何を思っていようが関係ない。俺は自分のノートの気になる点という項目に、アニメについてと、意味不明なイライラと書いて、先生が来るのを待つ体制に入った。
しかし、アニメを見るにはTVが必要らしいが、どうやって見るかな……。
今後の投稿は主の事情によって遅れるかも知れません…




