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全ての人類に絶望を。  作者: うまい棒人間
狂ってしまった生き方と偏見と忍者とロリコン
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決戦、終結。

 右手には、嫌な感触が延々と残り続けている。もう手首から切り落としてやりたいと思うほど。


 そしてその感触は、どういうわけが結城萌花を見る度に強まってくる。彼女の少し潤んだ瞳、ぽかんと開いている口、痛みに震えるその体を見ただけで、どうにかなってしまいそうだ。


 やりようのない思いが込みあがってくる。


「……は、林田くん……?」


 一体何があったのかわからないと言った顔をしていた。目を合わせられない、心を読まれるからというのもあるけれど、今の俺は彼女を直視できない、罪悪感が俺の動きを阻害する。


 その空気を壊したのは、あの女。


「あんたね ……何してんのよっ!?」


「グッ!?」


 凄まじい勢いで森谷朱里が俺の胸ぐらを掴み睨みつけた。萌花の体同様、彼女の掴む右手は震えていた。


 怒りか、それとも別のなにかなのか。俺には到底わからない。


「そこまで、そこまでする必要ないじゃない!」


 初めて本当に俺達が出会った頃のような、そんな憎しみに溢れた視線を俺に向ける。


 もう、俺には彼女相手でも目を合わせることが出来ない。これは、裏切りと同類だ。


「……なんか、言いなさいよ」


 そんな俺に、まだ弁明のチャンスを与えてくれるのか。でも悪いな……それは出来ない。


「……悪い」


 舌打ちをして彼女は俺を離した、俯いていた顔を上げる、彼女は怒っているような、悲しんでいるような、そんな顔をしていた。


「……やっぱり、私達は分かり合えない」


 そんな表情のまま、とても悲しそうに朱里が呟いた。それは俺という存在が彼女にとって少しでも有益なものであった、ということだろう。


 俺自身、少しだけ……少しだけ、そう思っていた。


「……そうみたいだな」


「それじゃあ、これで終わりね……マキ」


「あぁ……」


 朱里は放心状態の萌花を連れて出入口の扉に向かってゆっくりと歩き出した。扉に手を掛けた。


 その時、一つ伝え忘れていたことを思い出した。


「朱里」


「……なによ」


「あとは、任せた」


「……分かった」


 最後の会話を終えて、彼女ら2人は部室から姿を消した。


 慣れっこだったこの孤独、今では少し居心地が悪く感じられた。


 夕暮れの放課後、茜色の光を写した教室に1人佇む。数多の思いを握りしめて、ただ立ち尽くしている。


 やはり、失うっていうのは気分が悪い。





 ✕✕✕





「……リンデン?」


「うおっ!? ……なんだ、いたのかよ」


 ノック音、開閉音、気がつくタイミングはたくさんあったはずなのに。俺は今話しかけられるまでブランシュの存在に気づくことすらできなかった。


 やはり、気が抜けてる。それほどまでにショックだったのだ。自分でももう分かっている。短い付き合いだったけれど、あの二人はいい奴らだったから。


 特に……。


「……センパーイもしかして、急に勝てないかもしれないとか言うんじゃないでしょうねー?」


「お前は馬鹿ですか? 仮に仲間だとしても流石にそんなマヌケな行為するわけ無いだろ」


 あまりにも頭の悪いこと言われてぼうっとしていた頭にスイッチが入った。そんなこと言った瞬間にお前はあっち側に戻っちゃうでしょうが。


 しかもそれを期待しているのかの如く、にやにやと俺を見てきやがる。やはり彼女にも、祖父を裏切るに近い行為はしたくないように思える。俺にはこの女に対する罪悪感なんてさらさらないけど。


 ……でもまぁ、彼女のためにもぜひ圧勝ですべてを終わらせたい。そもそも苦戦をしたらこのブランシュとかいう女は俺を見限り向こうに戻る可能性だってある。


 そうだ、ショックを受けてる場合じゃない。ショックを受けるのは生き延びてからだ。


「でも、ちょっと予想外の出来事が起こったのは本当だ。ブランシュ、お前にも色々やってもらうことになった」


「え? 何もしなくていいんじゃないの?」


「……だから予想外の出来事が起きたって言ってるでしょうが。このままじゃまずいから手伝ってほしいんだよ」


 フィニッシャーの森谷朱里がいなくなった今、こっちの陣営は二人きり。そしてこの二人で火力が高いのは俺だ。


「今から俺は帰宅するけど、お前は気配を消して俺の後をついていってくれ。多分奴らは帰宅途中に仕掛けてくると思う。相手は二人だ、でも敵はシーガだけみたいなもんだ。二人で倒すぞ」


「了解」


 そう言って、ブランシュは俺の前から姿を消した。


 気配遮断を発動させたらしい。これで、戦闘前の準備は全て終了した。


 一人いないけれど……それは仕方ない。


 ふぅ、と一息つく。この校舎から出てしまえば、もうこんなに落ち着いて深呼吸ができる時間なんてないだろう。


 敵は強い。


 だが勝つ為の布石はうった。


 この戦いを制し、俺はレオルドから話を聞く。


 部室のドアを開ける。


 惜しむかのように、俺は後ろを振り向いた。強い雨が視界に映る。嵐の前の静けさなんてものはない。


 何故なら、既に嵐。戦いはもう始まっている。


 覚悟を再確認し、部室から出た。




「よし……行くぞ!」



遅れてしまいました。ですが謝りません。これからは何とかします。

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