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全ての人類に絶望を。  作者: うまい棒人間
プロローグ
10/108

別世界にて④ 彼の決意は変わらない

この世界にも夜はある。朝から暗いこの世界ではまるで変化はないけれど、夜になると地球同様に気温が下がる。


異常なのはその下がり方。


地面は凍りつき、外は吹雪が吹き荒れる。今外に出たら間違いなく凍死してしまうだろう。


この世界の住人は、そんな生活を強いられている。



「寝れねーなぁ」


リンデンは自分の暗い部屋で吹雪の音を聞きながら明日のことを思い眠れなかった。


この世界に戻って6日が経過した。明日はリンデンが学校に通い始める日だ。ここには帰ってこられるが、この6日間、いや、これまでも喧嘩し合いながらずっと一緒に過ごしてきた。離れるのは少し寂しいと感じている。


「ま、一人は慣れてるし大丈夫だろ」


友達なんていらない、自分を理解してくれんのは自分だけでいい。そう思って生きてきたこの男にはいささか心の余裕があった。生活には困らないと思っていた。


ただ、リンデンには1つだけ。不安を残していた。


「すー……」


この隣で寝ているかわゆいかわゆいレストであった。本来ならばフォーレと一緒に寝ているのだが「今日はお兄ちゃんと寝る!」と言って聞かないので今日はリンデンと一緒に寝ることになったのだった。


(おいおい、可愛すぎかよ…)


彼女はリンデンと離れたくないのだろう、ぎゅーっとリンデンの体に抱きつきながら眠っていた。


(俺が兄じゃなかったら襲ってるぞ……)


可愛らしいその姿にリンデンの理性は崩壊しかけていた。だがその崩壊しかけていた頭でも、この子の将来のことを考えていた。


「俺がいなくて大丈夫かな……」


リンデンは心底心配だった。俺がいなくなれば残るは馬鹿な姉とクソ親父しかいない。この天使のような妹が、汚されてしまう可能性を否定出来ずに苦しんでいた。


自分がそうさせてしまう可能性は考えなかった。むしろしっかり養うまであった。


「……お兄ちゃん、起きてるの?」


「ん? あぁ、起こしちまったか。悪いなレストちゃん」


リンデンが考え込んでムズムズしていたせいか、眠っていたレストを起こしてしまった。リンデンは彼女の眠りを妨げてしまったことを心から後悔し、親父を殺すことでその罪を償おうと頭の中で考えた。


「お兄ちゃん、心配しないで大丈夫だよ。私がみんなを守ってみ、せる……か、ら……」


レストは言い切ると同時にまたスースーと寝息をたて眠りについてしまう。しかしどんなに小さな消え入るような声でも、リンデンは一語一句聞き逃すことは無かった。


心配するなと、リンデンは心配された。


この小さい女の子は、一体どこまで天使なのだろうか。


「ありがとう、レストちゃんお前が頼りだ。任せるよ家族を」


リンデンはレストの頭を撫でる。起きている時は嫌がられるその行動だが今は気持ちよさそうにしている。猫のようにゴロゴロと。


「こいつの兄でよかった……」


そう思いながらリンデンは安らかな心でまた眠りについた。



×××



「そもそもレストちゃんが隣にいる時点で、俺の近くに生き物がいる時点で眠れるわけ無かった……落ち着かねぇ……」


リンデンはまたもや起きてしまった。一人に慣れすぎたのか近くに生き物がいると落ち着かない。ぼっち特有の「急に話しかけてくると落ち着かなくなる」あれである。


その時ふとキィィと自分の部屋のドアが開く音がする。誰かが俺達の眠りを妨げに来た。だが外は吹雪、侵入者が入るのは不可能と知っているのでまずは家の中の人でこのドアを開けたものは確定させた。


あとは簡単だ。こんなモラルのない行動をする家族は4人中2人……。


(全然絞れてねぇじゃん)


自分にツッコミを入れながら開けたドアから入ってくる人を待つ。きっと俺とレストを引き剥がして一緒に寝ようとしに来たんだろうとリンデンは思いながらドアを見つめる。


そしてドアから誰かが入ってる。暗くてよくわからなかったが、声を出したため、一瞬で誰が来たか分かってしまった。


「おい息子よ、起きてるか」


「ねぇさんなら涙を飲んでレストちゃんを預けるところだが……親父、オメーは駄目だ眠ってろ」


ウッドルであった。


でもリンデンはわかっていた、こいつはリンデンが起きていることを確認した。つまりこいつに用があるのは自分ということを。


「レストたんに用はない、今回用事があるのはお前だリンデン」


(……こいつから話題持ってくる時っていいことねぇんだよな)


リンデンは昔を思い返す。お使いだの、離婚だの。面倒事ばかり起こす父のなのだということを


「で? なんだよ親父早めにしてくれよ眠いんだから」


嘘である。ただレストとのふたりきりの時間を奪われたくないだけなリンデンであった。


「お前は、本当に地球に向かうのか?」


「それは前も言っただろ。この世界を救うには、それしかないんだ」


リンデンは冷たい声で言い返す。決意は揺るがない。


「何も1人で行くこたないだろ。1人でなんて無茶だあの人間に殺されるぞ」


「おう喧嘩売ってんのか?」


何度もいうがリンデンにはこの世界に友達は1としていない、家族ぐらいとしか会話をしない。そんな彼に誰かと一緒に地球に行けなんて、そんなことは不可能だ。

しかもそのことを言っているのはリンデンの父。ぼっちなのは知ってるだろうと、リンデンは怒った。


「そうか、そこまで言うなら、もう何も言わん、勝手に死んでこいバカ息子が」


「悪いけど、お前の思い通りに進ませてたまるかよクソ親父」


暗くて何も見えない空間で交わされる罵倒が交じる親子の会話、本当に何も見えない暗闇で2人は思った。


「「あぁこいつ、今俺と同じような顔してる」」


2人はにやりと悪い顔で微笑んだ。


「お前が自分で言い出して、自分で勝手にやることだ、誰も責任は取れない、だから、絶対にやり遂げてこいよ」


「当たり前だろクソ親父、この世界を変える、救う方法を俺たちだけが知ってるんだ、絶対に成功させてやるよ! この俺がな」


その言葉を聞いて満足したのか、ウッドルは何も言わずにリンデンの部屋をあとにした。


そしてまた二人の空間が戻ってきた。


「……いい夜だ」


リンデンは目を瞑り、ようやく眠りにつこうとした。明日からは本格的に作戦開始である。問題は1つだけ。あのいじめられている女。そいつをどうにかしなければならない。


そんなことを思いながら隣にいるレストを見る。すると彼女の可愛らしさに悩みはすべて吹っ飛んでしまった。


結局またリンデンは、眠れない時間を過ごしてしまう。


それと同時にリンデンは林田真希としての生活が始まろうとしていた。



これで別世界にてはおしまいです、次回からは視点を林田視点に変えて、物語を進めていきます。

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