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1話

「おー、なんだお前らもいたのか」


のんきな声でおっさんが話しかけてくる。

大体なんでお前までいるんだよ。


「なんか落とし穴みたいなのに落ちちゃってさー

ここどこ?地底王国?」

「先輩ー。無事だったんですね!いやー死んじゃってたらどうしようかって思いましたよ」


しゅうやと店長がへらへら笑いながら自分のところに集まる。普通こういう事態になったらもっと慌てるものじゃないか?普通にこの状況を受け入れてる自分も自分だけど。


「死んでたまるか!

というか、二人とももう少し驚きません?」

「最初は驚きましたけど、店長も先輩もいるし、まぁいいかなって!」

「この年になるとちょっとしたことじゃ驚けなくなるんだよねー」


もしここが本当に異世界だった場合、いや、異世界ではなかったにしろ急にコンビニから知らない場所に移動していたというのに、それなのにこの危機感の無さ。

ぶっちゃけ不安通り越して怖い。


「なんで!?知らない土地だよ!?魔法陣だよ!?もっとこうウワー!とかナンジャコリャー!とか!」

「アアアアア!!!何処だここは!!」

「そうそうこんな感じに···、って、あれ?」


突然聞こえた叫び声に振り返ると顔色を真っ青に変えた俊がいた。

いつものクールぶってる様子からは想像出来ないほど取り乱している。どうやら自分はまともだと思っていたが、俺も相当変だったようで俊に詰め寄られる。


「お前らここがどこか分かってんだろ!

だから落ち着いてんだろ!ここはどこなんだよ!」

「おい!落ち着けよ俊!」


胸ぐらをつかまれゆすられていると、店長が俊を引き剥がしてくれ、倒れかけた俺をしゅうやが支えてくれた。


「先輩大丈夫っすか?!」

「あ、あぁ。大丈夫だ」


しゅうやに礼をいって俊の方を見ると、未だ興奮しているようで店長に羽交い締めにされながらまだ暴れている。


「俊、聞いてくれ。俺も、多分店長もしゅうやもここがどこだかは分かってないと思う」

「嘘つけよ!じゃあなんでそんなに冷静なんだよ!!」

「それは、俺。見たことあるんだ」

「何を」


そう、絞り出すように言うと俊だけでなく、しゅうやも店長も真面目な顔をしてこちらを見る。

俺は一呼吸を置いて告げた。

正直に、事実を。


「ネット小説とかで、こういう状況を」


途端に静まり返る。


「先輩」

「優夜···」


店長もしゅうやも痛ましいものを見るような目でこちらを見ている。

分かってる。お前らが言いたいことは。


「優夜、アニメと現実を一緒にしちゃダメだ


分かってるんだよ!それに違う!!


「アニメじゃねえ!小説だ!!」

「え?そこ?おいちゃんちょっと戸惑いが隠せない。最近の若者怖い」

「先輩は意識高い系オタクですからねー」

「ははっ…」


アニメはアニメ小説は小説、漫画は漫画だ。

間違えないで欲しい。そう思って店長にこれら3つの違いを熱く説明していると疲れたような乾いた笑いが聞こえてきた。

おとなしくなった俊が地面に座り込んでいる。


「なんだよ…本当に何も知らないのかよ。そうだよな、能天気野郎どもが知ってるわけないよな…」


おい、ちょっとまて、能天気野郎どもってソレ、俺も入ってるんじゃないだろうな。


「ここがどこか。それはわたくしがお教えしましょう。」


不満を伝えようと口を開きかけたとき、今まで開く気配すらなかった重い扉が開かれ、漏れてきた光とともに凛とした声がこの石造りの部屋に響いた。

そこに現れたのは白いドレスを着た、とても綺麗な女性だった

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