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ゆずき  作者: 護守 紫
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約束なんていつかは忘れてしまうと言うけれど、あの時の私にとって、どんな約束でも君が諦めてくれるならなんでもよかった。






「君が誰かを愛すなら、それは俺に対する裏切りだ。

いつでも君のところへ戻って、君を俺の近くに閉じ込めてあげる。」


私が誰かを愛すなんて、「氷姫」とあだ名されていた私はないと思っていたのが事実。


私なりの幼心にも、彼が狂っているというのは何と無くわかった。


だからこうなるなんて思ってなかったんだ。
















〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜







「俺のものになれよ。」

「嫌よ。」


彼、怜からの告白は、言ってしまえばいつ来るかの状態であった。


好意を向けられていたのはわかっていたし、人気のある彼が私に対してやっかみを持つ女子を脅して直接被害を抑えていてくれたのも知っていた。


それを知ってもなお、なびかなかった。

人に恋をする事に、なんの幻想もいだけない。


そんな私は決まって一人なわけで。


彼がどうして私に関わるようになったかなんてどうでもよかった。




「なんで。嫌われてはないって思ってたんだけど。」

「好きでもないってことよ。」


この時だ。

あの台詞を言われたのは。

正直、ぞっとしたのは覚えてる。


「氷姫さんよ、約束は守れよ。」


この男に私はここまで執着されていたのかと。

こいつが誰かに告白したなんて聞いたことがない。

毛色の違う玩具に惹かれたのか。

飽きたら捨てるが常用句の男。



こんな思い出の大学を卒業し、地元企業に就職した。

そこでも私は相変わらずですねと言われる日々。

定年までここに残って、お局さんになるだろうと囁かれていたくらいだ。


「朝塚さん。」

「草原さんどうしたの?」


彼女は、草原真琴。

この会社で唯一、心を開ける友人だ。


「お昼。いきましょ?」


そう言われて時計を見ると、もう十二時を軽く周り十五分。

凝った眉間を揉みほぐし、伸びをする。


「ごめんね、またせちゃったのかな。」

「今一番忙しい時期ですからね。」


そう言って外へ出る。

社員食堂という手もあるが、なんとなく居づらいのが事実。


私は普通にしているつもりでも、周りが緊張してしまうらしい。

お手洗いで個室に入っている時に聞いた。


「ゆずちゃん、こんなに可愛いのにね。みんな節穴〜。」

「そんなこと言ってくれるのは、まこっちゃんくらいよ。」


軽い世間話をしつつ、近くのファミレスに入り、和膳を頼む。


「でも、もうちょっとおしゃれしなきゃだよ。そしたらモテるって。」

「性格が悪いもの。」

「ツンデレよう!」




私たちが仲がいいのも、お互いの家庭事情が少し似ていることに由来する。


新人研修の際、階段で話し声がすると覗いたら電話越しに泣きながら怒鳴る誠の姿。

電話を切って早足で出て行こうとする時に私たちはぶつかってしまった。


拍子に涙腺が緩み、私に抱きついてオンオン泣いてしまったのだ。


後で話を聞くと、父親がキャバクラで貢ぎ、金を貸せと言って来たらしい。

お陰で母親は蒸発。

真琴が十五歳。

暴力団に金を借りた時には、祖父母に助けられなければ真琴は売り飛ばされる所だった。


それでも懲りない父は、死ぬまで借金を続けていたという。

最後はあっけなく、急性アルコール中毒だった。

保険金や賠償金で三分の一は返せたが、今だに返済を待ってもらってる状況だ。




「そういえば、実家どうなの?」


聞きずらそうにも聞いて来る所が、彼女の好きな所。


「駄目っぽい。」


私の家は、真琴と似ても似つかぬ状況。


最も、ことの元凶は私の場合は母なのだが。


母は浪費ぐせがあった。

そう祖父の代から立ち上げた会社を含む財産全てを娯楽につぎ込んだ。

挙げ句の果てに、最近ぽっくりと死んだ。


しかし傾いた会社に資金提供する大企業もなく、リストラに重ね最後の頼みの綱の新商品も盗まれた。

父が借金まみれになって行く様は現在進行形だ。


そんな父も、疲労で倒れ。

経営は困難。

近々潰れるだろう。



私は父が嫌いだった。

幼い頃も仕事一本。

おはようも行って来ますも何もない。

そんな家に育ったからには、愛情が生まれないのも当然だ。


たった一回。

父との思い出は、初めての百点のテストを見せに行った時に邪魔だと殴られた時だけ。


資金提供も、OLの給料なんて高が知れていると言って来た。

何と無くは、わかってたけど。


「んもう。お互い大変ね。」

「そんなことないわ、実害があるのはまこっちゃんだもの。

何かあったら言いなさいね?」

「お昼おごってもらうだけでも、結構かなり助かっております。」


そう言って笑った。


でも私はすぐに思い知ることになる。

親との縁は、簡単には切ることはできないのだと。











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