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さて、と、改めて話しだした美形さん曰く。
まあ、世界は説明して貰った通り、私の知識で言うねこ科の種族の暮す世界である、ということ。
稀に、人間族の落人が、落ちてくること。
たいていにおいて彼らは、この世界で保護され、何らかの仕事をえるまでは、上位種――虎族とか獅子族とかいるらしいよ、に保護されること。
んでもって、私は、この虎さん――名前はラヴィッシュさんというらしい、に保護される、ということ。
その上で、この世界での仕事を探し、いきていく道をみつけること。
今まで落ちてきた人達は、元の世界の知識を生かした仕事をしたり商売をしたり、なかには農業や教育に携わる人もいる、とか。
元いた世界の知識、っていったって、ねぇ。
普通の女子高生に、んなものはありません。
あるのはせいぜい、私にとってはねこ大好きな趣味位。
あ、あと、ねこを見分けるの得意。似たような子だってみわけてみせるわっ。
……そういえば、と、ふと気になったことをきいてみることにする。
「ラヴィッシュさん、ラヴィッシュさん」
「なんだ」
「なんでラヴィッシュさんところには子猫ちゃんが一杯いるのですか?」
「子猫……ああ、ちいさきもののことか。あれは我が一族が保護し世話している子供たちだ」
「――子供?」
「ああ、親をなくしたりはぐれた子供を、預かり世話をしている。ここは屋敷であり保護院でもあるのだ」
……つまり、孤児院、のようなもの、なのかしら?
ここでわたし、きらり、と閃きました。閃きましたのことよ!
「ラヴィッシュさん!」
「……っ、な、なんだ」
勢いにおされたように、僅かに身を引きながら、彼は応えます。
「たとえば、お仕事って、このお屋敷で働かせて貰うことって可能ですかっ?!」
そうすれば、仕事も見つかって、あふれんばかりの子猫ちゃんにもかこまれることができて、一石二鳥ってやつじゃないですかっ。
きらきら輝く目で、ラヴィッシュさんを見詰めます。
「っ、あ、ああ。そ、そうだな。ちいさきものの世話をする侍女でなら、やとえなくもないが――」
「っ、ッ是非! 是非雇ってくださいっ!!」
「っ、しかし……」
「……お願いしますっ。どうか、おねがいしますっっ」
子猫まみれの職場で働けるかもしれない機会なんて、そうそうないと思うのです!
この機会のがしてなるものか、と、必死に、じっとラヴィッシュさんを見詰めながら懇願します。
うう、子猫まみれ……想像するだけで、あまりの幸せに目が潤んできます。
「っ、わかった、わかったから、そんな目で見るんじゃない」
どんな目ですか。必死すぎましたか。そうですか、すみません。
しかし、わかったといいましたね? いいましたよね?
「っ、ありがとうございますっ」
「……まったく。この娘は――」
呆れたような諦めたようなため息なんて、聞こえません!
こうして、私は、ねこまみれの異世界で、侍女という仕事を得たのでした。