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猫の世界にとりっぷ!  作者: 喜多彌耶子
猫と虎と獅子さんと
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着替えたいよー、着替えたいんだよー、と、周囲に優雅に座りこちらを眺める婀娜なお姉さま方にじっと目でうったえかけてみます。おねがいしますーっ。さすがに女性同士でも、恥ずかしいのですよっ。しかも、ぽいーんのまえでつるーんですからっ、いや、つるーんではないんだったっ。そこまでじゃないもん。ええと、そうだ、ぷちっ? って感じ? ってか、いやぁぁぁぁ、違う、違うの、そんな擬音いやぁぁぁぁ、と、あうあうしてれば。


「本当に、見てて飽きない子ねぇ」


そういって、頭を撫でられてしまいました。あう。子ですか。はい、子どもですごめんなさい。

クスクス笑うお姉さま方に囲まれて、こう、嫌な感じなわけではないんですが、なんだろうこの、いたたまれない感といいますか、妙にこっぱずかしくってですね、ううー、っと唸っておりましたらば。


突然。

なんの前ふりもなく。


そっと、リーダー格のお姉さまが、ささやきました。


「ねえ、あなた。本当は――気づいてるのではなくて?」


どき、と。


心臓が、跳ねます。


ちょ、ちょっとびっくりしました。だって、お姉さま、耳元でささやくんですもん。ちょうせくしー。腰くだけちゃいますよ私っ。思わず赤くなっちゃいそうですっ。きゃーっっ!! なんちゃって。


っていうか。うん、その、ええと。


そういうもんだいでは、ないですよね。


そーっと視線を、横にずらしてみます。なんだか、まっすぐ見られない感じです。なんといいますか、家族でテレビドラマみてたら、突然濡れ場になっちゃったときの、あの、気まずい感じ。いたたまれないっていうか! うん、なんか違うのは、わかってるんですけどねっ?


まぁ、その。


えーっと、ですね。

知ってます? 情報化社会って、凄いんですよ。いんたーねっとって、すごいんですよ。ITって、いんふぉめーしょん・てくのろじーの略なんですね、私いんたーねっとの略だとおもってましたっ! すごいですよね、わーるどわいどうぇぶ! 手軽に気軽に、いろんな情報にアクセスできちゃうんです。携帯からでもパソコンからでも、あれこれみれちゃうんです。っていうか、それがすごいとか、思わないレベルで、ふっつーに使ってました、私。こっちきて、すんごいことだったんだなー、なんて、なんとなーく、おもったり、するわけですけも。けども。 


で、ですね。

もちろん、オトナなヤツってのは、年齢制限ありますから、イイコはみちゃいけませんっ。ってなってますし、もちろん、イイコなので(基本的に)そういういけませんな所に自分から潜りこむような真似は、基本的には、してません。ええ、とうぜん、してません、してません、けどっ。


――ふっつーのだと思って読んでたら急にあはんウフンになっってあせった! ってことも、稀に、いや、結構、あるんです。


うう、ちゃんとR指定しておいてくださいよぅ、ってなもんですよっ。

適当にめぐってたどり着いたサイトさまなんかだったら、たまーにひょっこり色々あれこれイ~ヤンな感じなのものとか紛れ込んでるので、わーい、びっくりっ! てなことも、ままあります。

まま、あってしまうのです。


ついでにいうと、検索で調べて飛んだら、ふっつーのサイトの振りしてえっちー!! だった、ってこともありますし。まぁその、ふっつーに、ブンガク作品だからと読んでたら、ふっつーよりえっちー!! だった、ってことも、あるわけで。


で。


何がいいたいかという、と。


意外と、ふつーで地味な振りしてる私みたいなじょしこーせーでも、最近、ふっつーに、超みみどしま、だったりするわけで。

友達と、そんな会話をする方でもなかった私でも、知識はあれこれそれこれ、あるわけで。あれこれそれこれ。です。うん。


べんきょーがちょーできたわけではないけれど、それなりに、それなりだった高校生の頭は、断片的な情報でそれなりの答えを導き出してしまうわけで。



うん。


たぶん、私、わかってるんだろーなー、と、思います。


思います、けれど。


でも。


でもですよ?



「でも。わかんないのも、ほんと、です」


少しだけ、うつむいて。ぽつん、と、出たのは、そんな、言葉でした。


だって、恋なんて、したこともないんです。彼氏なんてなにそれおいしいの? ですよっ。憧れの人、っていうのがいなかったわけじゃないですし、本に出てくるあっこいー登場人物に憧れたりとか、そんなのは確かに、多少ならありますけど。でも、それって、恋とは違う気がするし、じゃあ、恋ってなに? 好きってなに? の、世界なんですよっ! それなのに、それなのにですよ? いま、私に求められてるのって、おばかな勘違いでなければ、それのずーっとずーっと先の、まだあと最低で5年だか10年だか先にかんがえるよーなこと、なんじゃないですかっ? むしろ、それを選択しない選択肢だって存在しうる状況な、わけですよ? なのに。なのに、なのに。


わかんないですよ、ほんとに。ほんとの、ほんとに、わかんないんです。


――だって、私は、ここでひとりなんですもん。


もふもふっとした幸せに包まれてれば、それだけを考えてれば、充分なんですもんっ。


できれば、それだけで一生、きゃーきゃーいっていけていければ、いいって、本気でおもってるんですもんっ。


だから、だから。


――だから。



「ああ、そうなのね。あなた――わかってしまうのが、怖いのね」


そっと告げられて。


抱きしめられたことに気づいたのは、その柔らかな温もりに包まれて、頬に一滴、涙がこぼれた、後のこと、でした。






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