4
「お前の願いならなんでも 「んにゃー」 っ!?」
「あああっ、ミルティちゃん、どうしたの、こんなところにっ!」
マスターが無駄美声でなにかをいいかけたとき、するりと執務室の扉の隙間からミルティちゃんが、私の愛しい、マイラブミルティちゃんが! 現れました。まぁ、小さきものであるミルティちゃんがこのエリアまでくるなんてっ! なんてこと! おせわがかりはどうしたのかしらっ、危ないことはなかったかしらっ、とびらあけっぱなしだったのかしらっ、でもでも、それよりなによりっ。
私はマスターをぺいっっと振り払うと、そのままミルティちゃんに駆け寄りますっ。
「ひとりできたのーっ? いいこねぇっ、すごいわっ、ミルティちゃんっ」
ぎゅむーっと抱きしめて、耳の後ろをなでなでですっ。
「ぅなーん」
ごろごろと喉を鳴らして満足そうなミルティちゃんを抱っこしたまま、頭に頬をすりすりしちゃいます。ああっ、毎日ブラッシングしたり、ときどき丁寧に、ミルティちゃんの負担にならないように一緒にお風呂したりしてるだけあって、柔らかくってふんわりで、ほのかにいい香りーっ。おひさまのにおいーっ。
くんかくんかと堪能していると、背後から切なげな無駄美声が聞こえてきます。
「……リン」
「あ、マスター、大変失礼いたしましたっ、お仕事中に長くお邪魔してしまいましてっ。ひよこの件、ありがとうございますっ、後日また詳しくはっ、それではこれから私は、小さきものやミルティちゃんとの愛の時間、じゃなかった、お世話に戻ります。お邪魔いたしましたっ」
ミルティちゃんを抱きしめたまま、ゆっくりと片手で淑女の礼ですよ。いっちにー、さん、のリズムが大切ですっ。
そのまま、くるりと振り返り、執務室をあとにした私の脳内は、現在小さきものとミルティちゃんでいっぱいです! あとちょびっとひよこちゃんです!
「ねぇきいてくれる、ミルティちゃんっ、ひよこさんハーレムに遊びにいけそうなのーっ、ピヨピヨハーレムよっ、ああ、猫科禁止じゃなかったらミルティちゃんと一緒にいけるのに、ねぇー。ああ、黄色い大量ピヨにかこまれて眠るミルティちゃん、ぴよぴよにつつかれるミルティちゃんっ、あああん、なんてすてきなのっ、みてみたかったわぁぁ。ああ、残念すぎて哀しいっ、慰めてーっ」
きゅっと苦しくないようだきしめましたが――あれ、ミルティちゃんかたまってませんか? ピヨハーレムにいけないのが残念なのでしょうか? そんなミルティちゃんを抱きしめつつ、お世話のお部屋に戻った私は、ツンデレブルネイちゃんに、仕事をサボった(わけじゃないんだけどね、不在だった)ことを、ツンツンツンデレ、ってな感じで叱られて、思わずうっとりしたら余計にしかられてしまったのでしたっ。
あーでもっ、ひよこ、早くあいにいきたいなぁっ!!
その頃、執務室では。
「……何故だ、何故なのだ……っ!」
壁に額をぶつけながら、その秀麗な顔を曇らせながら嘆く、マスターの姿があったとかなかったとか。
そんなことは、相変わらず私の知ったことではなかったりするのですよっ。