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「みたいですっ!」
はいっとよい子の挙手。きらりん、と目がひかっちゃいますのことよっ。
「我らは付いてゆけぬので、そうだな、他の国の者に頼むことになるが、よいか?」
「かまいませんけど……」
おや珍しい。いつもならついて行くの一点張りなのに。それに「我ら」?
「ブルネイちゃんとかソマちゃんとかも、だめですか?」
首を傾げて問いかければ、じっと見詰めた後、深い深い溜息とともにマスターはおっしゃいましたっ。
「……彼のものは小さいだろう。そして、右往左往と動いているだろう?」
そっと視線を逸らしながら呟くように告げるマスター。ああ、もしかして。
「本能に勝てなくて、手が出そうになるとか?」
「そういうわけでもないが」
視線をあわせぬま視線を彷徨わせるマスター。おやー? おやおやー? 思わずにんまりしちゃいますよっ。
ずずいっと近寄って、じっと見上げて。
「どういうわけなのです?」
ぐっ、と、詰まったような様子のマスター。うろうろと彷徨う目を追いかけるようにうろちょろする私。うん、怪しい構図だ。考えないで置こう。
「そ、それはだな。こう――いや、そこまでないのだが、なにかの弾みにだな、ひょいっと手がでることがあってな」
説明によると。
マスターがそうなる、というわけでなく、と、ある日、牧場を訪れた猫科のとある方が、ひょっこひょっこと動くひよこの群れ(?)を見ているうちに、うずうずをおさえきれず、その中にダイビングしたのだそうな。
で、その、捕獲というか、狩りはしなかったものの――そこまで理性は失ってなかった様子で――さんざんっぱら、小さなひよこでじゃれまくって、ひよこたちは目を回してしまった、と。
それ以来、牧場は猫科立ち入り禁止なのだそうな。
「そんなばかな」
思わず真顔で呟けば、マスターはゆるりと首をふって。
「そんな馬鹿がいるのだよ」
しみじみとおっしゃったのでした。
「では、ひよこ牧場(?)に、今度いってよいのですねっ?」
きらりん、と瞳を輝かせながら両手の指を組み合わせてお願いポーズ、じっと上目遣いで必殺おねだり光線っ! ……うんごめん、いってて自分でキモかった、を、発動させますれば。
うっすら目許に朱をのぼらせたマスターは、仕方なさそうに、ひとつ頷きました。
「事前に許可をもとめよ。色々と調整があるからな。――いろいろと」
ニヤリとした笑みとともに告げられましたが、しりませんよ、言質はとりましたからっ。
ひゃっほい! と両手を上げて喜んで、あまりに嬉しいのでそのままマスターに飛びつきました。
「ありがとうございますっ、マスターが割りとあっさりおねだり聞いてくださったの初めてですねっ!」
頭の中は黄色いひよこハーレム。ぴいよぴいよ、もっふもふ。つんつくつん、ってな状態ですよ! ひゃっほい、まっててね、つつかれにすぐにいくから!(注:大量につつかれるとかなり痛いです)
嬉しくってにっこにことそのまま見詰めれば、ぐっと詰まったマスター、こほんと咳払いとともに、こちらに顔を寄せてきました。え、近いですよマスター。暑苦しいです。
離れようとすると、そのまま引き寄せられて――。