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「マスター、質問ですっ!」
何故か恒例となりつつお茶タイム。ななさん筆頭に落人連合(?)の持ち込んだ地球のお菓子レシピは、最近動物の世界で流行中みたいですよっ? 今日は美味しいフィナンシェです。似た様なお菓子はあったらしいですがっ、このバターの風味としっとり感は、なかったみたいですよーっ? とりあえず、犬の国の方角に向かって合掌っ、ありがたやありがたやっ。
「どうした、リン」
優雅にお茶を淹れながら、さらりと銀髪を揺らすマスター。
おっといけない、傍から見れば超怪しい人と化した私を、マスターが訝しげに見てるではないですかっ。いやん、失敗っ。まぁ、スルーしますけどね。しかし、マスターのいれてくれるお茶はとっても最高ですっ。深みとコクと、色合いが素晴らしいっ。いや、えっと、いってみたけど、私がいれるのよりおいしいな、ってくらいしか違い解りませんっ。ごめんなさいっ。そんでもって、相変わらずマスターがお茶をいれて侍女が座ってる構図は……うん、もう色々きにしないっ。気にしたらまけなのですっ。
さて、質問でした。そうそう、これをききたかったのですっ!
「マスター、ひよこの国はないのですかっ?」
ずずいっと乗り出して聞けば、おなじだけ身を引くマスター。あら、なんでしょう、逃げるなんてっ。近づくのが迷惑だとでも? それともあれですか、私はさりげなく臭いとか?! え、そんな、だったらどうしよう? むう、と、眉根を寄せれば、こほんと、気を取り直したように、マスターは咳払いひとつ。
「ひよこ、か。鳥の国であればちいさきものである雛は居るだろうが……ひよこというと鶏の子だな」
「ええ、そうです、鶏の子のひよこちゃんですっ。黄色くってぴよぴよってしてて、ふっわふわの産毛の、プリティでコンパクトでもうもう、ついきゅってしたくなるほど愛らしい、あのひよこですっ。わたし、もふもふスキーにしてもふもふ信者としては、こう、ちいさなきいろいふわふわひよこに、ぴよぴよぴよぴよとさえずられながら囲まれまくり、つつかれまくる、というのにも憧れるのですっ。ああ、もふもふ、ちまちまっ、ああん、想像するだけで、もう、もう、もう――っ」
両手で自分を抱きしめてふるふる震えてしまいます。ああん、たまんない!
「わかった、わかったから落ち着くのだ。」
すでに大分慣れてしまったのか、どこかおざなりに私を宥めるマスター。ちっ、あのうろたえっぷりが楽しかったと言うのに、ちょっと面白くありません。といいつつも、私はひとりひよこハーレムを想像して身悶えているのですがっ。
「――しかし、なぁ。鶏は、人化しないぞ」
「え?」
思わずそのままの体勢で、ぽかん、と問い返してしまいます。