表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
猫の世界にとりっぷ!  作者: 喜多彌耶子
りんのおねだり
21/55

2-2


「では、以上でよろしいですね」


扉の向こうから聞こえるのは、どこか冷たい感じのする声。


「ああ、よろしく頼む」


返す声は、マスターの声。ちくしょう、どっちも無駄に美声だな。無駄だ無駄ー!!



しかし、お話は終わったようです。チャンスです、チャンスですよ、りん! いまだ! と勢いこんで、ばたーんと大きな音とともに扉を開きました。


ふっふっふ、抜かりはありませんよ! ブルネイちゃんとソマちゃん(侍女仲間)を懐柔し撫で繰り回しこねまわし、このフィンガーテクニックでめろめろにして聞きだした情報に、間違いはありませんっ!


「!!」

「っ、リン!」


音に驚いたのか、目を見開くうさぎの国からのお客さま。……ふ、ふふふふ、かわいいお耳と尻尾がみえてましてよ。

きらり、と私はターゲット補足。まさかくると思ってなかったからか驚きでマスターが硬直している隙に突撃ですっ。


「ああっ、うさぎ、うさぎさんっ。長いお耳ー! あ、ふかふかのまぁるいしっぽーっ。うわー、しっぽふかふかー、超ふかふかーっ、やっぱりここはにゃんことはちがうわっ、素敵、素敵もふもふよ! 超最高、ビバ、もふもふ! もふもふに幸いあれーっ!!」


途中からなに言ってるのか自分でも解らなくなりましたが、本気でアドレナリンどばどばです。尻尾のあまりのふかふかさにうっとりとしながら撫でくっていれば、硬直がとけたらしいマスターが、慌ててこちらに駆け寄ってきました。


「リン!」


「ああっ、あああああっもふもふがっ、もふもふがぁぁぁ、ひどい、私のもふもふーっ」


「落ち着けリン、あれはお前のもふもふではないだろう。もふりたいのならば我をもふればよい。他の雄を撫でるなど、どういうつもりなのだ」


「だって、マスターの尻尾まるくないー!」


「なに!? まるくすればいいのか?! きればいいのか!」


「……申し訳ありませんが、ラヴィッシュ様も落ち着かれたほうがよろしいかと」


静かに差し込まれた声に、私を抱きすくめていたマスターが、はたと我に返ったようです。


「あ、ああ、これはルイ殿、大変失礼した。この詫びはまたいずれ」


「いえ……お気になさらず」


しみじみと告げるルイさんなるうさぎさんの声は聞こえていますが、私は引っ込んでしまった尻尾の方が大事です!


「リン、リン、何故そんなに尻尾に執着する、落ち着け」


じたばたとまだあがいている私に、マスターは深い溜息を漏らしました。


「だって、ホラ、元の世界にいたときにですね、私、あの尻尾にそっくりな、まぁるいもふもふの、キーフォルダー、ええと、装身具の一種なんですけど、もってたんです! 超お気に入りの手触りで、超大事にしてたんですよ! もう、あの、ルイさんの尻尾! あれの手触りにそっくり。え、まてよ、あの尻尾ってもしかして、本物のうさぎの尻尾だったのかしら。どうなんだろう。ねぇ、どう思います、マスター?」


唖然とするマスター。

どこか、びびびっと、一瞬視界の端でルイさんが震えた気がします。

思案するように黙りこんだ私に、今の内に、と思ったのか、ルイさんとマスターが別れの挨拶を済ませたようです。


はっと我に返ったときには、丁寧な礼をしてルイさんが退室するところでした。

あ、ああああっ、私のもふもふがぁぁぁっ!(注:違います)


退室する寸前、ぼそりと「しかし、落人の方々にもいろんな方がいるようですね」と、ルイさんが呟いたような気がするのですが、気のせいでしょうか。



その後、おしおきだとマスターが私に毛づくろいをさせてくれなくなりました。あまりに哀しいので、ミルティちゃんや、侍女仲間のブルネイちゃんやソマちゃんたちと戯れました。ツンデレっ子とふるふるっ子らぶ!影でマスターがしょんぼりしてたらしいですが、私が気づくわけがないってー話ですよっ。

さらに、気にしないといってたルイさんからは、こっそりと何らかの報復をうけたとかうけないとか――それもすべて私のあずかり知らぬ所。


今日も私は、ただ、もふもふを求めて、にゃんこを愛でながら、侍女ライフを満喫するのでしたっ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ