りんの(まれに)よくある朝の風景
私の朝の目覚めは、柔かな毛並みのもふもふから始まります。
ふわりと浮上していく意識の中、手を伸ばせば触れるはずの柔かな毛並み。
それを想像して思わず口もとが緩んでしまいますのことよ!
そのまま引き寄せて抱きしめて、すりすりするのです! するのです!
夢うつつのふわふわした気持ちのまま、やわからかな毛並みを手探りで探し、抱き寄せようとし、て――。
……あれ。
毛並みがありません。もふもふがありません。
触れる感触は、どこか張りがあって硬いです。もふもふがありません。
むしろ、なんか、でかくないですか?
ぺたぺたと、眼を閉じたまま、確かめるようにさわってみます。
あれ? 昨日はミルティちゃんと寝たはずなのに。あの、小さくって白くって愛らしくって大好きでめろめろきゅーと!な、ミルティちゃんと、布団の中で語らいながら、きゃっきゃうふふと眠りについたはずなのに。
……ゆっくりと、目を開きます。
そして、そのまま一気に半眼になってしまいました。
「――目覚めたか、リン」
なぁんでいらっしゃるんですかね、ご主人様。
しかも、なんで人型で、しどけなく人のベッドの上に、さりげなくいるんですかね。
「……おはようございます、マスター」
隣に横たわり、こちらを立てた肘を枕にして眺めているその人は、ふっと――無駄に、超無駄に――その美形な顔を緩めて、気だるげな色気を振りまいておられますよ。ああ、うっとおしい。
「ああ、おはよう、リン」
――ああ、幸せだったはずの、ミルティちゃんとの目覚めは、どこに。
恨みがましい眼で睨みつける私を、どこか楽しそうに、ご主人様はみていました。
ああ。もう。
せめて、獣型ならまだゆるせるものを。それならばまだ愛でる気にもなるものを!
もふもふ意外を私のベットにあげる趣味はございませんっ。
私の隣はもふもふのものっ。
……とっととでていきやがれでございますよ、コノヤロウっ。
ご主人様がベットからけりだされたかどうかは、神様だけがしっているのですっ。
そんな、よくある(?)朝のワンシーン。