りんのよくある朝の風景
私の朝の目覚めは、柔かな毛並みのもふもふから始まります。
ふわりと浮上していく意識の中、手を伸ばせば触れる柔かな毛並み。
それを想像して思わず口もとが緩んでしまいますのことよ!
そのまま引き寄せて抱きしめて、すりすりするのです! するのです!
夢うつつのふわふわした気持ちのまま、やわからかな毛並みを手探りで探します。
ああ、ふわりと。
柔かに触れる、この、暖かくってふかふかで、もふもふな感触。
私の愛しいミルティちゃんの毛並みです。間違いありませんっ。
そっとなでて触れれば、小さくにゃあ、と鳴く声がして、引き寄せようとするのに気づいてか、すりと体をよせてくれます。
あああっ、私のミルティちゃん。
この世界に来て、一番に私を見詰めてくれた(注:一番はマスターです)、愛しい存在。
この子さえいれば私は、もう、一生幸せにいきていけますっ。
触れるふかふかな暖かな存在に、くふくふと幸せな気持ちになりながら、ゆっくりと瞼をあけます。
視界にうつる、小さな、柔かな、暖かな存在。
かわいいかわいい、こねこのミルティちゃん。
ふわりと思わず浮かぶ笑みのままに、そっと鼻先にキスしちゃいますよっ。
「おはよう、ミルティちゃん」
にゃあ、と応えてくれる声が堪らないっ。
「あああっ、もう、もうもう、ミルティちゃん、貴方はなんてかわいいのーーーっっ!!」
抱き潰さないように気を付けながらも、むぎゅううううと胸元に抱きしめます。
「……おはよう、リン。昨夜もミルティと寝たのか?」
「おはようございます、マスター。ええ、もちろんですともっ、私とミルティちゃんの愛は、誰にも引き離せないのですっ」
朝のラブラブタイムを終えて、仕方なく支度を終えた私は、ミルティちゃんを抱っこしたまま、ご主人様の所にいくのですっ。
何故か毎朝呼ばれてるのですよ。朝ご飯くらいひとりで召し上がればいいというのにっ。
ご主人さまは、むぎゅっと胸元にミルティを抱く私を、複雑そうにみています。
なんですか、なにかもんくありますか。 あげませんよっ、私の可愛いミルティちゃんはっ。
尚のことぎゅっと胸元によせると、深々とため息をつかれました。
「……そうか。ミルティ、しかしほどほどにしておけよ」
ふん、とそっぽを向くミルティ。なんともつれない仕草が、身もだえするほど可愛いっっ。
「……」
「ああん、ミルティちゃん、ぷりてぃ。さ、朝ご飯にしましょうね~」
そんな、よくある、朝の風景。