愛するということ
世の中には恋愛成就というものがある。 世の女の子達は愛しい彼の心を奪うべく、様々なおまじないを試す。
私も例外ではない。
高嶺の花とも言える彼に心を奪われた。
だから、奪われたのなら奪い返せば良いのだと考えている。
「恋愛成就?」
「うん、効果は保証する」
母親の言葉とは思えないが、母は俗に言う拝み屋だ。
効果は確かなのだろう。
「考えとく」
何故だろう。
直ぐにでも飛びつきたいおいしい話。
だけど、私の本能が悲鳴を上げている。
頭にあるのはたったひとつのこと。
私は彼が好き。
けれども私は思う。
本当に良いの?
本当に好きなら心を操った紛い物で満足できる筈がない。
本当に好きなら心を操るなんて出来る筈がない。
ああ。
やっと気づいた。
愛するということを理解した。
愛するということは、相手を想うことだ。
自分の身勝手な想いを押し付けないで、自分の幸せより相手の幸せを願うことなのだろう。
だったら心を操るなんて出来ない。
「やっぱいい」
「なんで?」
「母さん、実験体を増やしたいだけでしょ?」
術に頼らない。
好きだから。
だからね、貴方の幸福を願うことにしたよ。
でも、たとえ迷惑だとしても、私が貴方を好きでいることだけは許して欲しい。
時々、貴方を見る事だけは許して欲しい。
たとえ、永遠に片想いだとしても、それは変わらないと信じたい。