↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR

『言葉のコロシアム』

掲載日:2026/10/23

市民ホールの舞台には、異様な熱気と、冷や汗混じりの沈黙が渦巻いていた。

年に一度の「全日本駄洒落選手権」。スポットライトを浴びる赤絨毯の中央、マイクを握る審判長の声がピンと張り詰める。


「決勝戦! 残るは二名! 先行、浪速の言葉職人・シドウ!」


舞台袖から歩み出たシドウは、ラケットを構える素振りをし、客席を指差して吠えた。


「テニスプレーヤーの手ぇに、スプレーやーっ!」


ドッと笑いが弾け、採点板の数字が跳ね上がる。

間髪を入れず、後攻のベテラン・池ロンが鳥籠を抱えるジェスチャーで凄む。


「かなりヤバい客が、カナリヤ売却!」


「おおーっ!」

どよめく客席。点差はわずか。

焦ったシドウが早口で畳み掛ける。


「対人恐怖症のタイ人、今日負傷!」

「いいヅラ買ったこと、言いづらかった……!」


頭を抱え、切なげにカツラを押さえるシドウの迫真の演技に、審査員席の老人が膝を打って吹き出す。

だが、池ロンも退かない。メガネを押し上げ、冷徹な低音を響かせた。


「計五回、会った相手に、敬語かい?」


「うまいっ!」

客席から掛け声が飛ぶ。五・七・五のリズム感に、会場の空気が池ロンへ傾きかける。


舞台袖で見守る司会者が生唾を飲み込んだ。

「す、凄まじい応酬です! 一歩も譲らない! さあシドウ、次はどう出る!?」


シドウの額から大粒の汗がポロリと落ち、舞台の板敷きを濡らした。喉がカラカラに渇いている。残る手持ちの札は……これしかない。覚悟を決め、マイクを引き寄せた。


「ジャイ子が言った。……じゃ、いこっか!」


愛らしい裏声と満面の笑み。その瞬間、会場の緊張の糸がプツンと切れ、客席全体が大きな笑い声に包まれた。張り詰めていた空気が一気に弛緩し、温かな拍手が降り注ぐ。


審判長が両手を挙げた。

「勝負あり! 優勝は、シドウ選手――!」


万雷の拍手の中、シドウは深々と頭を下げた。横に立った池ロンが、苦笑いを浮かべながら手を差し伸べてくる。


「完敗だよ、シドウさん。『じゃ、いこっか』の間の取り方、痺れたね」


「いやぁ、あんたのカナリヤも鳥肌モノやったで」


がっちりと握り合う二人の手。

言葉を愛し、言葉に魂を削り合った男たちの頭上に、きらきらと紙吹雪が舞い散っていた。


◇◇◇


歴代の傑作駄洒落の響きとリズムを生かし、熱狂的なバトル小説に仕立ててみました。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
ジャイアン。死んじゃ、イヤン!
ワッハッハ! こんな面白い駄洒落を言ったのダレじゃ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。