違和感
短編です
最初におかしいと思ったのは、出勤したときだった。
昨日このPCは閉じて帰ったはずだけど、出勤したときには開いていた。画面はついていなくて、電源は切れた状態。ただ、ノートパソコンがパカっと、まるで熱した二枚貝のように開いたままになっていた。
おかしいな、ちゃんと閉じたはずだけど。周囲を見回して、誰もいないことを確認する。この時間に出勤してくる奴はほとんどいない。そして昨日、一番最後に帰ったのは俺だ。だから、このPCを閉じるのも、空けるのも基本的に俺が最初で最後になるはずなんだ。
昨日の記憶を辿る。うん、確実に閉めた記憶がある。・・・けど、人間の記憶は不安定だから、もしかしたら俺が閉め忘れただけかもしれん。
俺はそっとPCを閉じた。
夕方、俺は案の定、最後の帰宅者になった。この会社は比較的ホワイトだから、みんな定時になると帰っていく。俺も今日は帰らないといけない。結婚記念日で妻が待ってる。
PCが確実に閉じていることを確認して、今日は俺も定時で帰宅した。
翌日、PCは開いていなかった。ふむ、そうなると昨日のは、俺の記憶違いかな?今日も確実に閉じて帰るとしよう。
みんなが定時になると、PCを閉じて一斉にカバンに荷物を詰め帰って行く。
「あれ、帰らないんですか?」
「あぁ、ちょっと確認することがあって」
「残業代稼ぎますねぇ~。課長に怒られない様に気を付けてくださいね」
「定時に帰らせるのに執念燃やしてるもんな、気を付けるよ」
後輩を軽くいなして、俺は自分のPCを閉じた。
移動してPCを開く。
どれどれ、カメラは・・・と。うん、良好だ。ばっちり。
データを手持ちのSDに映して、内蔵されているデータを消した。
明日も頼むぞ~♪
ニヤつく顔を何とか抑えて、俺は確実にPCを閉じた。ん?少しズレたかもしれない。PCを元の位置に戻して、と。よし。“残業”終了。帰ろう。
家に帰ってSDを自室のPCに繋いだ。データ移行完了、画質も良好!よしよし。
あとで堪能しよう。
妻が夕飯を作ってリビングで待っている。よくできた女だ。俺のPCには触っていないようだし、このままバレることは無いだろう。
翌日、出勤すると、今度はPCが開いていた。
「・・・・」
おかしい、確かに閉めたはずだ・・・。まさか誰かに気づかれた?そう思って、PCを起動する。みんなが来るまでにまだ少し時間がある。動画をチェックしよう。
いつもの画面を開くと、動画には、座椅子の高さ辺りに俺の脚が映っていた。
その動画を早送りすると、昨日俺が帰った後からしばらくして、顔は見えないものの、誰かの脚が映っていた。スーツの感じからして、女性の様だ。誰だろう。画面にはその女性のスカートの中も映っていた。
「・・・ラッキ~」
そう呟いた瞬間、部屋の電気が急についた。
「はい、現行犯」
席の主と、昨日と同じスーツの女性、そして妻が、会社の入り口に立っていた。
「・・・まさか、そんな」
「言わなくてもわかるわね?あとで社長室に来てちょうだいね」
「・・・後のことは弁護士に頼んでるから、詳しくはそこで話しましょう」
——いや、これはっちがっ・・・——
え、あの人が!?




