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8 あの人は今

 例えばタイラバ

 タイラバというルアーは、その名の通り鯛を釣る為のルアーだけれど、直径一センチ程度の球状であったり、回転楕円体であったりする鉛やタングステンの塊の後ろに、ラバーと呼ぶゴム紐の束のようなものと、ネクタイというフラットで薄いシリコンゴム製のソフトルアーに鍼をセットしたルアーだ。


 使い方はいたって簡単で、底まで沈めてただ一定の速度で巻くだけ。魚のアタリがあろうと無かろうと、魚が掛かろうとひたすら同じ速度で巻き続ける。


 こんな単純なアクションのルアーであっても、人によって釣果にははっきりとした差が出るのである。

 釣れているルアーを聞き出して、同じ色、同じルアーを使っても、明らかに釣果に差が出る。

 同じ船の二メートルも離れない場所から四十メートルも下を釣っているのだから、場所ではない。


 ラインの太さも同じ、竿も確か同じ。リールは自分の方が最新式の良いものを使っていたりする。

何が違うのか…


 一度自分だけが爆釣した時のイメージを、いつまでも引きずっていたことが原因だったりする。

 あの時これで釣れたのだから、今日はここを変えてみたら…いや、違うようだな、ではこう変えてみたら…などと、その時を起点にして色々変化を試してみる。


 色々試し過ぎて、最後には訳が分からなくなる。

 それでも、全く釣れないわけでも無く、たまに釣れたりするものだから、余計に泥沼にハマって行く。


 パターンフィッシングと言うが、その日ヒットするパターンが確かに釣りには存在する、

 それを推理して理論化して結果を出せるのが、プロ達であるが、ポンコツ釣り師では、外すことの方が多い。持っている引き出しの多さや結果に導いていくロジックが大きく違うからなのだろう。


 終わってみれば、結果として、今日は海や川と真摯に向き合ったか?と言う反省である。

 その日その日で、海や川の状況は変わる。

 水温の変化であったり、水位の変化であったり、水の濁り、潮の流れる速度、魚達の食い気、そう言うものを一つづつ推論立てて反応を確かめたか?


 答えはNOである。

 自分がやった事は、過去の栄光にすがり付き、それに変化を加えてこれでどうだ?と試していっただけの独りよがりの独り相撲である。


 まるで、「あの人は今」で出てくる、売れなくなった芸能人のようでもある。


 やっている事は間違いではなく、今まさに釣りと言う限られた世界の中で、自分は生きようともがいているわけであって、それはいずれ何かの拍子に実を結ぶかも知れない、いや結んで欲しい。

 実のところ、結構結ぶものでひとつ釣り人としてのレベルが上がる。

 こうして釣り人は脱皮を繰り返して達人と呼ばれる高みを目指して行くのだろう。


 大切なことは、川に聞いたか?海に聞いたか?

 川や海と対話したか?


 まだまだ高く聳え立つ高みが堂々と私の目の前には鎮西し、私を見下ろしている。

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