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6 ホテル

 釣り遠征に出かけて一番思い出深いのは、やはりホテルだろうか?

 釣りでは基本、一般の旅行のような夕食や朝食をメインというのはない。

 なぜなら、遅くまで釣って、まだ従業員も起きていない早朝に出発するからだ。

 だったら、雨露さえ凌げれば良いという結論に達する。なので、予約いらず一番安直な車中泊が多くなる。しかし、実際のところ一人ならまだしも、数人での車中泊は辛い。これならば、防波堤で寝袋に入って寝たほうが幸せだとさえ思う。


 島根半島に三人で来ていた、宿泊はステーションワゴンタイプのRV車。

 運転席と助手席に一人づつ、後部座席に横になって一人。こういう状況で仮眠をとる。

 ところで、どこでも横にさえなれれば眠れるというのが、私の特技だ。渡船で渡った転げて落ちそうな磯で何度昼寝をしたか。ほとんど、岩壁登攀中、ハーケンでハンモックを固定して眠る登山家に近いものがある。


 この日、三人は眠ろうとした。しかし、磯ブーツを脱いだ車内で横になると、なぜか味噌の匂いがする。

「なんで、味噌の匂いがするんだ!」

「蚊だ、蚊が入ってる!」

 などと、他の二人のやかましいこと、修学旅行じゃあるまいし蚊一匹で何を騒いでんだか、あまりにもやかましいので、俺は外で寝ると、防波堤で寝袋に入ってやっと眠れた。幸せに眠っていると、車で眠っていた一人が起こしにくる。

「雨が降ってきた、車の中で寝ろ」

「うるさい、雨くらいなんだ!」

 と私はごねてみたが、車に誘導され、再び就寝。こうして他の二人に比べゆっくり寝た私は、朝マヅメ一発、特別な釣果を授かったのは言うまでもない。釣りはある意味サバイバルだ、このくらい野太くないと釣れるものも釣れない。


 アオリイカを釣りに沖縄に釣友と二人で行ったとき。二月というシーズンオフのホテルは、格安にもかかわらず広い広いツインルーム。解放感に満ちた私は、ベッドで寝転ぶ釣友に助走付きのフライイングボディアタックをお見舞いしてあげた。このホテルも夜八時帰宅、朝五時出動。


 和歌山のオーシャンビューの高級ホテル。結局、夜十時に戻って風呂だけ入り、朝五時にチェックアウト。我々の釣行には、高級ホテルは不要という決まりが出来た釣行であった。

 民宿は悪くないのだが、オーナーとの会話が結構面倒だったりする。まぁいろんな情報も得られるのでメリットも多いのだが。

 テントは結構良いのだが、荷物が嵩張る。竿、クーラー、タックルボックスを持った上にテントと寝袋。これはやってみると、かなり面倒なのだ。


 幸せ過ぎるのは、キャンピングカー。

 横になってゆっくり眠れ、夜も好きなだけ飲んでいられる。

 しかし、幸せ過ぎて堕落する。釣りが二の次になってしまったりする。


 一番いいのはロッジで自炊タイプの宿泊施設。釣った魚を調理出来て、布団で眠れ、シャワーも出来る。こういう施設が釣り場に歩いて行ける場所にあれば言うことがない。

 そういうロッジを島根半島で見つけていた。ここには、何度宿泊しただろうか?


 この島根の別荘とまで呼んだ、この施設は港を見下ろす小高い山の上にあった。駐車場は港の側にありそこから歩いてロッジに上がる。荷物は、モノレールで持ち上げる。

 エギングが出来る湾にロッジから竿を持って歩いて行けるので重宝していた。

 ある日、予約を入れて島根に乗り込み釣りをしていたら、ロッジから連絡があった。水道のポンプが故障して使えなくなりましたので、代わりのロッジを紹介しますとのこと。


 「そっかぁ、残念だなぁ~」

 と紹介してもらったロッジに変更して移動。オーナーはジャガイモみたいな顔をした、五十~六十歳くらいの親父だった。

 備え付けの食器やフライパンが足りなくて持ってきてもらうように連絡する。

 持ってきたのは、金髪美女だった。年齢はアラサーってところかな?金髪美女の年齢は分かりにくい。


「えっ?!どこの国の人?」

「ワタシ?ワタシはロシア人よ」

 流暢な日本語で返ってくる。

「なんで?日本にいるの?」

「ははは、ワタシがここの社長だからデス!」

「えっ、ジャガイモみたいなおっさんじゃないの?」

「アレは私の主人デス!」


 なななな、なんと、ジャガイモ親父はこのロシア美人の旦那だった。

 なんとも島根のこんな片田舎でグローバルな国際結婚。

 愛は容姿も年の差も国さえ超えてしまったのだな。

 偉大だぁ~。


 ジャガイモに聞いてみる。

「えへへへ、女房というより介護人ですね」

 とジャガイモ親父は、短い鼻の下を伸ばして笑った。

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