大きな図書館だ……
10月9日 午前11時03分
大都市『ペトリーナ』・ウェスペル地区
大図書館『リベル』にて。
「うわぁ…、おっきい図書館だぁ……」
目の前に広がるのは、本が収納された大量の本棚たち。しかも三階建ての図書館。
見えないだけで、沢山あるんだろうな……
本棚の多さに圧倒され、唖然と氏てしまっている私の耳に、中年の女性の声が聞こえてきた。
「あら!アトレちゃんじゃないの!!久しぶりね!!」
そう言って私の方へと近寄ってくる中年の女性。
近所のおばさんみたいな人だな……。コミュ力化け物か!!
「あ、あの……人違いじゃないですか?私、アトレっていう人ではないので……」
私の言葉を聞いた中年の女性は、「何言ってるの!」と言葉を紡ぐ。
「貴女はアトレちゃんでしょ?」
人違いだと思うんだけどな……。だって、容姿が同じなだけだし。
独り言を心の中で呟く私を無視して、中年の女性は更に、言葉を紡ぎ始める。
「聞いたわよ。貴女、誘拐にあったんだってね。ケガはない?大丈夫だった?」
「あ、はい……。大丈夫です……」
この人、完全に近所のおばさんじゃん!!話すのが楽しくて気が済むまで話してる、近所のおばさんじゃん!!
中年の女性は更に、言葉を紡ぎ続けた。
「ケガ無くて良かったわ……。今日はここには、何しに来たのかしら。もしかして、いつも通りに『勉強』しにかしら?」
「あ、そうじゃなくて……。実は、本を読みたいなぁと……」
私の質問の回答を聞いた女性は、顔を明るくさせる。
「あらあら、良いじゃない!ゆっくりしていきなさい。何かあれば、司書の私に何でも聞きなさい」
「あ、ありがとうございます……」
言い残してその場を後にする中年の女性ではなくて、司書の女性。
まぁ…司書さんの手は、あまり借りないと思うんだけど……
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10月9日 午前11時03分
大都市『ペトリーナ』・ウェスペル地区
大図書館『リベル』・一階にて。
三階建てのため、まずは一階からお目当てである『元の世界に帰れる方法が載った本』を探すことにした。
隅から隅へと探すのは至難のワザだな…、どこからにしようか……。
考え事をしながら、目に写った本棚から本を取ろうとする。突然、誰に声を掛けられた。
「おい、お前」
声がした方を振り返るとそこには、白髪の薄い緋色の瞳をした青年が立っていた。
なんか……怖い顔でこちらを見ている。
「えーと……なんですか?」
怖じけながら言葉を振り絞る。青年はこちらに来たかと思うと、私の首ら辺に隠れていた金色の妖精を指差した。
「どうしてお前が……こいつを持っている。金色の妖精は、シェルのモノだ。返せ」
アイツの……モノ……?え、どういうこと?
「えーと……彼女はシェルさんの妖精さんですよ?それに、彼から許可貰ってますし……」
「黙れ、言い訳をするな。今すぐ、妖精を返せ」
青年の顔は、『オモチャを取られて怒っている子供』のようだった。




