表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
殉職率の高い魔法少女が壊れる理由  作者: 虹猫
2章 エリート妖精玉袋
8/47

8話 エリート妖精と魔法少女の日常

エリート妖精玉袋と時藤日葵の物語。


訓練後


つむぎ様達と別れてお屋敷に戻る。シャワーと夕食を済ませたあと日葵ひまり様はいつものように机に向かう。


夜遅くまで訓練していたのに学校の勉強も疎かにしない。さすがは日葵様なのさ。だけど心配でもある。日葵様が魔法少女になり、この生活を初めて早1週間。疲労が貯まっていてもおかしくないのに。


「日葵様、疲れてないですか?」

「平気よ」

「ならいいのですが……」


オイラは日葵様が遊んだりしているのを見ていない。普通の小学生なら学校終わりは友達と遊んでいるはず。だけど日葵様はそれをしない。


それが契約前からのことなのか、それとも時藤ときとう家の方針なのかは分からない。


日葵様は優しいし聞けば教えてくれるとは思う。だけど躊躇ためらってもいる。だってそうだろ?


聞いた所で


日葵様が訓練をやめることはないと。短い付き合いながらに理解しているのだから。


そう、もう賽は投げられた。契約は死ぬまで終わらない。魔法少女は絶大な力を得る代わりに命を懸けて戦わなければならない。


それは今も100年前も変わらない。とりわけ時藤家は魔法の力を私欲に代えてきた一族。


“時は金なり”


時間操作魔法を得る代わりに巨大な富を得て財閥となった一族。それが時藤家。一族の大半が時間操作魔法を習得してきたし今もその傾向にある。


かつての時藤家は必ず1人は未来予知の力を有していたという。その力が人類の敵に有効かどうかは問題ではない。財閥発展のために必要な力だったからだ。


その歴史についてオイラはもちろん妖精達は何も言わない。だって当然さ。無償で人類の敵と戦ってくれというのが無理な話である。


妖精は妖精のために


人類は人類のため


架け橋となる魔法を得て共存す


それが妖精歴なのだから。


「来月になれば戦況も変わってきますかね」

まゆの誕生日のこと?」

「はい、3人になれば戦術やコンビネーションの幅は格段に上がりますし」

「そうね」


日葵様は勉強しながら短く答える。そう、3人になれば今の現状は良くなるはず。


本来魔法少女は協力して戦うべきだ。ひと昔前はそれが当たり前だった。だけどいつからだろう。誰かと協力して戦おうという魔法少女がいなくなったのだ。


理由はいくつかある。1つは魔法相性の問題。普通の人間は自分の願いを魔法にする。戦いを前提に習得する方が珍しい。


何でも願いが叶う魔法の力。単純に敵と戦う能力を得る人間は少ない。それだけ人の欲は深い。


また魔法少女は戦闘訓練もろくに受けず戦うことがほとんど。そんな集団が集まれば当然のようにトラブルは発生する。


口論で済めば良いのだが精神が未熟な子だと味方に魔法を使うこともある。50年前に1度そんなのがテレビ放映されてしまったとか。あとは察しの通りさ。


そもそも魔法少女には成り手の問題もある。他の人間がどんな能力を習得しているか知らないという問題も大きい。何にせよ魔法少女界隈は今も昔も切迫しているのさ。


そう考えると時藤家のやり方は私欲的ではあるが1つの正しいやり方であると言える。財閥発展や協力を前提として魔法の力を得ているのだから。


「でも驚きました。繭様攻撃魔法に興味あるなんて。時藤家と言えば時間操作のイメージありましたし。紬様も言ってましたけど本家の人怒りませんか?」

「攻撃不足は事実問題でもあるから。それに結局契約するのは本人なわけだし」

「紬様も苦労されてますからね。いくら“不死魔法”とは言え痛みは感じるのに」

「だから、よ。繭にとって紬の存在は命そのものだから」


紬様の能力は“不死”。自身の肉体の時間を操作する。死なない魔法である。殉職率が高い魔法少女にとってこの魔法は最強の盾を意味する。


時藤家は戦闘よりも生き残ることに重きを置いている。未来予知も不死も財閥繁栄のため。紬様の魔法は戦闘にこそ不向きだが財閥にとっては有益とされる。今は中学生で子供だが知識を得れば将来的に時藤家の頭脳となるだろう。


………


……



翌日


日葵様はいつも通り学校に登校する。結局昨日寝たのは24時過ぎだった。小学生にしては遅すぎる。ここ最近毎日だから心配にもなる。


「眠たくないですか? 日葵様」

「平気よ。6時間は寝ているし。それにこれからはこの生活が当たり前になるから。慣れておかないとね」


日葵様は表情を変えず学校に向かう。日葵様がそう言うのであればオイラは何も言うことはしない。


「玉袋、消えなさい。誰かこっちに来る」

「はいさ」

オイラは日葵様以外に見えないように消える。



「おはよう、時藤さん。時藤さんもこの道通るんだね」

「おはよう……えっと、ごめんなさい。まだクラス全員の名前覚えていなくて」

「咲茉。三途川咲茉さんずがわえまだよ」

「ごめんなさい。クラス委員長なのに」

「仕方ないよ、まだ4月になったばかりだし」


どうやらクラスメイトの子らしい。日葵様は人徳があるからすぐに人が寄ってくる。クラスメイトと話してる時はどこにでもいる普通の小学生。こういったことが日葵様のガス抜きになってくれれば嬉しいさ。


だけど


“人類の敵出現、人類の敵出現”


“距離、北東800メートル。距離北東800メートル”


“人類の敵出現、人類の敵出現”


“距離、北東800メートル。距離北東800メートル”


支給されたタブレット端末から自動音声が流れる。これは……人類の敵が出現したということ。


評価、ブックマーク、感想お待ちしています

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ