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殉職率の高い魔法少女が壊れる理由  作者: 虹猫
2章 エリート妖精玉袋
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7話 エリート営業と時藤日葵

エリート営業”玉袋”と”時藤日葵”の物語。過去編になります。

オイラの名前は玉袋。入社3年目のエリート妖精さ。


一流大学を卒業し一流企業に就職。一流の妖精には一流の仕事が待っている。これは社会の常識と言っても良いのさ。


給料もそれなりにいいので満足している。


オイラの仕事は営業職。といっても学校に通い詰めて一から営業なんて古臭いことはしない。大手企業ともなると専属契約の家柄があるからだ。代表的なのは時藤家さ。


時藤家は妖精歴初期の頃からの付き合いがある。一族のほとんどはうちの会社と契約している。こちらも時藤家の人間がどういう力を望んでいるかも把握しているしお互いにとってやりやすいのだ。


エリート妖精であるオイラも多分に漏れず時藤家の人間と契約することとなった。時藤家の人間は賢いし可愛い子が多い。オイラにとっては願ったり叶ったりさ。


これは


オイラが日葵様と契約してから現在に至るまでの話。


………


……



JS小学校


ここはオイラの主、時藤日葵ときとうひまり様の通う小学校。オイラは役目柄日葵様に付いていることが多い。人類の敵はいつどこで襲ってくるかも分からない。妖精が近くにいる方が最適なのさ。


まぁ離れていても念波で会話出来るしオイラクラスになるとテレポートも出来るのだが。


「日葵様、日葵様~。今日の給食は何ですかねー。またパン分けて下さいよ」

「また? 昨日もあげたのに」

日葵様はちょっと困った顔をする。だけどすぐに

「しょうがないわね、玉袋は」

笑顔でそう言ってくれる。


腰まで伸びる青髪。容姿端麗な超美少女がオイラの主、時藤日葵様だ。クラス委員長で頭も良く友達も多い。エリート中のエリートとはこの方のこと。


小学生にして早くも頭角を現しているのだからやはり時藤家はすごい。教育レベルが違いすぎるのだ。


「あっ、分かってると思うけどみんなに見られないようにしてね。妖精を嫌がる子もいるから」


「分かってますよ。日葵様にしか見えない透視モードにしてますから」


「ならいいけど」


妖精は魔法少女と契約するためにいる。悪いのは人類の敵であり妖精でないのは理解されてはいるが。それでも妖精を嫌がる子も多い。


地域によっては魔法少女の活躍がテレビ放映される。それは良くも悪くも現実的で決して輝かしい勝利だけではない。負傷や殉職もある。


ひと昔前はそういった悲しい出来事は世間から伏せられてきた。しかし魔法少女法の改正でそれは詐称扱いになり包み隠さないこととなったのだ。


日葵様は現在の魔法少女の人気や在り方も理解している。オイラに透視モードを支持するのは優しさ以外に他ならない。


「時藤さんおはよう。ねぇねぇ魔法少女になったって本当?」

「すごいよね、さすが時藤さん。私は怖くて無理」

「カッコいいな」


クラスの女の子達が日葵様を囲う。さすがは人気者。


「魔法少女契約したのは1週間前だけどね。まだまだ慣れないことばかり」


「それでもすごいよ」

「ありがとね、人類の敵と戦ってくれて」


「うん、私がんばるから」


昨今、魔法少女は枯渇している。無限に出てくる人類の敵。いつ終わるかも分からない戦い。


みんな理解している。人類の敵は怖い。だけど自分が戦うのはもっと怖い。当然さ。それが人間の心理。ある意味身勝手とも言えるけど。


だけど日葵様は何も言わない。ここのクラスメイトの何倍も大人で賢いからだ。オイラはそんな日葵様が大好きなのさ。


………


……



昼食後、日葵様と屋上に来る。


「はい、玉袋。パン」

「やったね」


オイラは給食のパンを頂く。ここの学校のコッペパンは最高においしいんだ。


「今日はいい風ね」


屋上に流れる優しい風。日葵様の綺麗な青髪がなびく。真っすぐでいて凛としていて、すごく優しい瞳。何をしても絵になる人だ。


「近くに敵はいる?」


「いえ、いません」

「そう、ならいいわ」


魔法少女契約して1週間。人類の敵とは2度戦った。日葵様の魔法なら“負けることはない”だろう。


だけど勝つことも難しい。なので


「今日もつむぎとは放課後会うから」

「分かってます」


魔法少女同士の連携は必須なのさ。


………


……



放課後


時藤家が所有する訓練場に足を運ぶ。日葵様は才能ある方とは言えまだ契約して1週間。魔法には慣れてないので訓練が必要。


ここは東京ドーム4個分の敷地で仮想人類の敵との戦闘シュミレーションを行える。水風船が飛んで来たり大きな粘土の的が現れたり。本当にいろいろあるのさ。


「紬は……まだ来てないのかな」

「残念、もう来てる」


タンポポのような黄色い髪。それをサイドテールの三つ編にした女の子。この方は時藤紬ときとうつむぎ様。日葵様の従妹にあたる人物さ。中学1年生で日葵様とは2つ年上になる。


「早いのね紬。中学生ってもっと遅くまで勉強してると思ってたけど」


「小学校と大差ないって。変わったのは制服着てるくらい。中2とか中3とかになったら授業のコマが増えるんだって。嫌になっちゃうな」


紬様はこの春中学生になった。今は4月の上旬だし慣れないことも多いと思うのにこうやって訓練に来ている。素晴らしい方さ。


「勉強嫌ってる割に頭いいからなー、お姉ちゃんは。さすがだよね」


「いたんだ、まゆ

「ちゃお、日葵。それに玉袋」


「ちゃおです。繭様」


この方は時藤繭ときとうまゆ様。紬様の妹で日葵様と同じ小学5年生。姉の紬様と同じ黄色い髪でそれをショートボブにしている。タンポポの髪飾りがとても似合っているのさ。


「今日は見学ですか?」

「うん、私も来月誕生日だしね。魔法少女契約するからにはいろいろ見ておかないと」


「別に10歳に合わせることないんだよ? 私だって契約したの12歳の時だし」


「いいの。お姉ちゃんにだけ苦労させられないし。それにさ……日葵には負けられないじゃん」

「魔法少女に勝ち負けなんてないけどね」


「いいの、こういうのは気分が大切なんだから。見てなさいよ、日葵よりすごい魔法少女になるんだから」


「2人ともケンカしないの。連携取るための訓練場だって忘れてない?」


「大丈夫だよ、お姉ちゃん。私が最強の力を手に入れるんだから」


日葵様と繭様は同い年、誕生日も近いということで昔から張り合うことが多かったとか。と言っても繭様が一方的に絡んでるだけ、というのが実際らしい。


だけど日葵様は日葵様でそんなやり取りを楽しんでいるように見える。


友人とは違う親類との関わり。妖精のオイラにはない概念なので少し羨ましく思えるのさ。


「さて、と。今日はどんな訓練にしようかな。何かやりたいことある? 日葵」


「雨風船、かな。前は上手くいかなかったし」


「よし、今度は成功させようね」


そう言って2人は準備に取り掛かる。


雨風船。文字通り雨のように水風船が落ちてくる特訓。人類の敵の攻撃は1つではない。背後からもあれば地面からもある。空から毒が降ってくることもある。あらゆることを想定しなければ生き残れないのだ。


「ではカウントダウン。3,2,1、スタート」

紬様の合図で大型ピッチングマシーンが天井を向く。直後


ビュシュシュシュシュ


水風船が弾かれた。1秒間に5,6個くらいのペース。それがどんどん射出されていく。


2人は訓練場の中央から動かない。これは回避訓練ではない。攻撃訓練。2人の魔法技術が試されるのさ。


風船に向けて手のひらを向ける日葵様

「クロックダウン」

直後青い魔法陣が展開される。


ビシュシュシュシュ


シュ


天井から降り注ぐ水風船が完全に“停止”する。


そう、これが時藤日葵様の魔法。“停止魔法”


意識した対象の物理法則を無視し、止めることが出来るのだ。


数百近くあった水風船が空中に止まる。1つ1つの水風船を止めているのではない。空間を決めてそこの時間の流れを止めている。


「止めたよ紬。だけど急いで。空間停止魔法は大雑把な分長くは止められない」


「分かってる。そのまま維持ね」


そう言って紬様はオモチャの銃を構える。


バンッ


ビシュ


バンッ


ビシュ



銃弾が当たり水風船が割れる。割れると言ってもゴムの部分のみ。中の水が流れることも落ちることもない。停止された空間から水が落ちるということは許されない。この場において魔法は重力法則を凌駕する。


「あと何秒?」

「たぶん……もう無理」


「え?」


ビシャビシャビシャ


「あっ」

数百の水風船が全部床に落ちてしまう。


「ダメダメじゃん、日葵」

隣で見学していた繭様が飽きられながらに言う。


「失敗か……」

「いやいや、前回は空間停止すら成功しなかったんですから。すごい進歩ですよ」


日葵様は割れた風船をじっと見ている。目に見えて落ち込んでいる様子はないがきっと気にしているに違いない。


「ねぇお姉ちゃん。日葵の停止魔法ってそんなに扱い難しいの?」

「時間操作系列の魔法ではトップクラスに難しいと言われてるかな。敵を止めたら勝ちだしね。過去の先人達も似たような力を得ているくらいだし」


「でも使いこなせなきゃ意味ないじゃん。日葵は見栄っ張りというかさ……私はもっと別なのにしよっ」


「繭様はどういう魔法がいいとかあるのですか?」


「うーん、どうだろ。時藤は必ず時間操作系の魔法習得しなきゃいけないとかじゃないよね?」


「問題はないけど……本家からはいい顔されないかな」

「別に関係ないし」


繭様は小さな手帳を取り出しオイラ達に見せる。


「じゃじゃーん。実はいろいろ考えてたり」


色鉛筆で魔法少女描かれている。たぶん繭様だ。

そこからは氷やら雷やらいろんな魔法が飛び出している。


「繭、攻撃魔法にするの?」

「だってお姉ちゃんも日葵も守備よりじゃん。オプションに頼るのも嫌だし攻撃出来る子がいた方がいいでしょ?」


「まぁ繭がいいならそれでいいけど」

「あと1ヵ月あるしゆっくり考えるよ」


「紬。もう少し訓練に付き合って?」

「もちろん」


その後訓練はしばらく続いた。


………


……



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