5話 新卒営業と魔法少女候補?
公園にて
「ボケがっ、もう2度と会社に来るな。ボケ!! カス!! チンカス!!」
ペニス課長は猛烈に怒り会社に帰ってしまった。
はぁ……まさかこんなことになるなんて。出禁が増えたなこりゃ。
「ご、ごめんね。こんなことになるなんて」
「別にいいさ。怒られるのはいつものことだしね」
「普通にお礼言いたいだけだったのにな」
「あの子クラスでもあんな感じなの?」
「う、うん。最初はあんな感じじゃなかったんだ。急になんだ、あんな風になっちゃったの。私に関わらないでって。話すのも許さないって。クラスみんなに言うようになったの」
「なんでまた」
思春期? 反抗期? というやつか?
「分かんないよ。魔法少女にしか分からないことってたくさんあるよね? 契約のこともだし、なった後のこともだし。それに時藤さんは家柄もあるし。クラスのみんなは仕方ないって言うけど……私はずっともやもやしてて。みんなのために敵と戦ってるのに。大変なことも経験してるはずなのに」
「君は、魔法少女になりたいの?」
「……」
視線を下げる。
「分かんない。ただ私は、時藤さんのことを聞きたいと思っただけなんだ。でもね、お婆ちゃんの復讐なんて考えたことないよ。お婆ちゃんが死んだのはすごく悲しい……だけど復讐なんて望んでないのは分かってるつもり」
「そっか」
この子は
すごい大人だ。まだ小学生なのに、子供なのに、すごく大人の考えを持ってる。
世の中は混乱の中にある。敵はいろんな場所に現れるし、多くの人間が理不尽に死んでいく。
魔法少女は足りてない。全てを助けることが出来ていないのが現状だ。
今もこうして人類は少しずつ減っている。友達、家族が当たり前のように死んでしまう。
割り切れない人間が多い中、この子は受け入れているんだ。梅子さんの理不尽な最期を。
あんなに、悲惨な最期だったのに。
「妖精ってさ、感情が欠けてる生物って知ってるかい?」
「え?」
「罪悪感。特にそれが欠けてると言われてる。人間を魔法少女にして戦わせようっていうんだ。それがあったら心を病んでしまうからね。梅子さんを死なせたのは俺だ。だけどね、思った以上に悲しくないんだ。おかしな話だろ? きっと俺は君の悲しみのほとんどを理解していない。表向きは悲しんだり怒ったりするだろうけどね」
「そ、そんなこと……」
「君は魔法少女にはならない方がいい。新人でポンコツの俺が言っても説得力はないだろうけどね。さてと、今日は会社に帰っても怒られるだけだしゲーセンでも行こうかな。君も暗くなる前に帰りな」
今日はなんだかいろいろ疲れた。ゲーセンにでも行って癒されたい。
「……いよ」
「え?」
「そんなことないよ。他の妖精さんは分からないけど、ちんちんさんは違うと思う。だって……お婆ちゃんのこと悲しんでなかったらそんなこと言わないもん。葬式に行くなんて言うはずない」
「悲しんでるふりさ」
「そんなことない!!」
「君は、ほんとに良い子なんだな」
「君じゃない。咲茉」
「名前は覚えるつもりないんだ。契約するつもりもないからね。葬式には行くよ。じゃあね」
………
……
…