44話 新卒営業が見た時藤日葵
時藤日葵vs時藤澪
時藤澪は地面に向かって拳を叩きつける。
ドゴン!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
「なっ? 地割れ?」
さっきの攻撃の比じゃない。地面が大きく割れた。10メートルくらいの地割れが視線の先まで広がる。
バキバキバキバキ
地面だけじゃない。森の木々も倒れてる。
ビルをも壊す力。時藤日葵の言ってた通りだ。
てかこんなのくらったら骨折どころじゃすまないだろ。
俺は上空から2人の戦いを見守る。地形を変えるほどの攻撃。こんなのが何分も続くんだ。梅毒くらいならこれだけで十分だろう。
だけど今回の相手は違う。相手は人間、魔法少女。
「へー、そんなことも出来るんだ」
時藤澪は空を見上げる。
空中に展開された青白い魔法陣。その中心に時藤日葵はいた。
「すごいね、まるで空を飛んでるみたい」
上空20メートル。その場で自身を停止させる。
「落ちてないだけよ」
上空20メートルまで跳躍。そこから高速で魔法陣を展開。時藤日葵にしか出来ない早業だ。
相手を止めるだけじゃない。自身をも止める。咄嗟にやったのかは分からないけど……戦闘センスの高さを感じる。
「降りてきなよ、優しく受け止めてあげる」
「よく言うわ。落ちた瞬間攻撃してくるくせに」
「バレたか。ならこっちからジャンプして攻撃しようかなー。選んでいいよ? 落ちてやられる? 空中でやられる?」
「どっちも嫌」
そう言い左腕を時藤澪に向ける。
「その魔法は私には効かないよ。向けた相手に停止魔法。分かりやすすぎる」
「それはどうかしら。私の魔法だって応用力はあるんだから」
「どういう意味?」
「クロックダウン・アクティブ連鎖」
「だからその魔法陣が展開される前に私の方が早く動けるんだって」
「そうかしら」
「ん? 何してんの? 魔法陣すら展開出来てないじゃん。魔力切れ? まぁいいや。降りてこないならこっちからジャンプして……って、あれ?」
両腕両足が震えている。
「な、なんで私に魔法陣、が?」
時藤澪は驚きを隠せない。俺も地上にいたらそう思っただろう。急に魔法陣が現れ停止させられたと。
時藤日葵の停止魔法にはちょっとした法則性がある。それが魔法陣の展開だ。
時藤日葵は「クロックダウン」と言い魔法陣を素早く展開させる。その時間に1秒は掛からない。体感0.5秒くらいだ。その0.5秒後に対象を停止させることが出来る。
通常の相手ならこれで完結する。停止させられた相手は動きを止められ沈黙を余儀なくされる。だけどこれには弱点もある。
0.5秒。それよりも先に動かれた場合だ。
美甘舞達が初めて襲って来た時もそうだった。戦闘慣れしている相手、素早い相手にはこの魔法は通用しない。
それに腕を相手に向けていないといけないという分かりやすさもある。
初見殺し、とまでは言わないが看破されれば対策はしやすい魔法。人間相手には不利と言える。だけど今は違う。
停止魔法と知られたうえで時藤澪を止めることに成功した。これはすごく意味あることだと思う。
まさか魔法をあんな風に活用するなんて。
「何? この魔法。どういうこと? くっ、動かない」
「別に大した原理じゃないわ。状況が揃えば使える技術の1つ」
「状況、どういう意味?」
「ここが森ってこと。場所が悪かったわね」
「まさか」
時藤澪は周囲を見渡す。
そう
時藤日葵は森の木々を隠れ蓑に魔法陣を展開させたのだ。地上からは分からない。上空でこそ見える種明かし。
「クロックダウン・アクティブ連鎖。この魔法はね、小さな魔法陣を数珠繋ぎにして展開させる魔法なの。小さな魔法陣を何個も展開させるぶん時間は掛かる。けど、やり方次第では無限の幅があると思ってる」
森の木々。時藤澪から死角になる幹の裏側に小さな魔法陣がいくつも展開されている。その木々は数珠のように繋ぎ合わされ、最終地点に到達する。
時藤澪という最終地点に。
「こんな魔法開発してたなんて、すごいな」
「私は魔法少女になってから練習場にばかりいたから。これはね、紬と練習した技なの」
「実践不足って聞いてたけど……練習もバカにならないね」
「魔法陣解除」
時藤日葵は魔法陣を解除。地面に降りると同時に時藤澪の魔法陣も解ける。
「私の勝ちね、澪」
「……」
「澪?」
「まだだよ、日葵。私はまだ負けてない。相手を止めたら勝ち? 誰がそんなルール決めたの?」
「バイナリーオプションを使えば今ので完全に決まってた」
「でも使ってないよね」
「そ、それは……」
「何? 私の心配してくれたの? でも甘くない? 私の防御力は知ってるよね? ビル壊すくらいの攻撃じゃなきゃ私は倒せないよ。知ってるでしょ? 時藤は生き残ることにはうるさいんだから」
「で、でも試すわけにはいかないし」
「そう? 私は試せるよ? 今度は地面じゃなくて日葵に向けようか?」
「あ、あなた……」
「本気で来なよ、日葵。私も本気で行く」
「澪、あなたは間違ってるわ。これは訓練。殺し合いじゃない。私達は仲間で身内でしょ?」
「勘違いをしてるのは日葵の方だよ。これは訓練。でもさ、本気でやらないと意味がない。本気で強くならないと死ぬよ? 最初のあれは何? 魔法少女にならないで私と戦えるなんて思ってたの? これだから本家は。分家をバカにしてるの?」
「そ、そんな……私はそんなつもりじゃ」
「なら本気で来なよ。バイナリーオプション使ってもいいよ? 司様には言わないでおいてあげる」
獅子は我が子を千尋の谷に落とすと言う。
獅子は生まれたばかりの我が子を深い谷に落としそこから這い上がってきた子のみを育てるとされている。
時藤日葵は文字通り谷に落とされた。だけど疑問があった。時藤日葵は言うほど弱くない。魔法技術だって高いし冷静さも併せ持っている。
魔法少女になって1ヵ月ちょっと。そこまで悲観するものなのかと。
だけど、今この場で初めて理解した。
時藤日葵の最大の弱点。それはきっと
「くっ」
心なのだ。
「澪?」
「まだだよ、日葵。私はまだ負けてない。相手を止めたら勝ち? 誰がそんなルール決めたの?」
「バイナリーオプションを使えば今ので完全に決まってた」
「でも使ってないよね」
「そ、それは……」
「何? 私の心配してくれたの? でも甘くない? 私の防御力は知ってるよね? ビル壊すくらいの攻撃じゃなきゃ私は倒せないよ。知ってるでしょ? 時藤は生き残ることにはうるさいんだから」
「で、でも試すわけにはいかないし」
「そう? 私は試せるよ? 今度は地面じゃなくて日葵に向けようか?」
「あ、あなた……」
「本気で来なよ、日葵。私も本気で行く」
「澪、あなたは間違ってるわ。これは訓練。殺し合いじゃない。私達は仲間で身内でしょ?」
「勘違いをしてるのは日葵の方だよ。これは訓練。でもさ、本気でやらないと意味がない。本気で強くならないと死ぬよ? 最初のあれは何? 魔法少女にならないで私と戦えるなんて思ってたの? これだから本家は。分家をバカにしてるの?」
「そ、そんな……私はそんなつもりじゃ」
「なら本気で来なよ。バイナリーオプション使ってもいいよ? 司様には言わないでおいてあげる」
獅子は我が子を千尋の谷に落とすと言う。
獅子は生まれたばかりの我が子を深い谷に落としそこから這い上がってきた子のみを育てるとされている。
時藤日葵は文字通り谷に落とされた。だけど疑問があった。時藤日葵は言うほど弱くない。魔法技術だって高いし冷静さも併せ持っている。
魔法少女になって1ヵ月ちょっと。そこまで悲観するものなのかと。
だけど、今この場で初めて理解した。
時藤日葵の最大の弱点。それはきっと
「くっ」
心なのだ。
「行くよ!!」
時藤澪が一直線に走りこむ。
「っ」
「リリースインパクト!!!」
左に飛び回避。
ブワワワワ
バキバキバキバキ
轟音と豪風。それだけが木々がなぎ倒される。
「澪、待って!」
「待たないね」
シュ
すぐさま左回し蹴りが来る。
「クロックダウン!」
動きを止める。だけど不完全な姿勢で止めたからかすぐに魔法陣が消えてしまう。
「何それ、1秒も止められてないよ? 慌てると精度が落ちるの? それとも感情の問題? それで人類の敵と戦えるの?」
「だから止めて!」
攻撃の応酬。いや、応酬にもなっていない。一方的すぎる。
時藤澪が攻撃をし続ける。それを細かく停止させてぎりぎりの所で回避。少しずつ少しずつ時藤日葵が追い込まれている。
この状況、前にも見た。
2人の魔法少女に襲われ、少しずつ魔法の精度も体力も落ちていく。焦燥を見せるなか打開策も見いだせない。
あの時の状況に
だけどあの時と決定的に違うのは
「どうしたの? 助けは来ないよ? 逃げてるだけで勝てるの?」
ここに恵茉はいないということ。
誰も助けてはくれないということ。
時藤日葵1人で
どうにかしないといけないのだ。
俺はさっき思った。時藤日葵は弱くない。時藤澪と比べても魔法の力に遜色はないと。
だけど今の現状は全然違う。時藤日葵は一方的に逃げているだけ。
一時しのぎの繰り返し。
一時しのぎ。停止魔法の、悪い部分を見ているようだ。
「日葵、もし私が人類の敵だったら町は滅茶苦茶に壊れてるね。ほら見てよ、あんだけあった森の木がほとんどなくなっちゃった」
「澪は人類の敵じゃない。それに私は……わたしは」
「もういいよ。バイナリーオプションも使わない、私ともまともにやり合わない。なんか少しがっかりした」
「な、なら話し合いを」
「バカにしてんの? 人類の敵と会話をする気? そんなんだから千尋の谷に落とされるんだね」
「わ、私は……」
「ああ!! なんかイライラしてきた。戦いもせず逃げてるだけの羽虫を追いかけてる気分。もし私が人類の敵なら日葵のことは無視するね。そんでさ」
「?」
「攻撃対象を変えるね!!」
「な? 澪?」
「悪いね、妖精。予定変更。あんたに攻撃させてもらうよ」
おいおいおいおい、冗談だろ?
時藤澪が俺に向かってジャンプしてきた。
「リリースインパクト!」
「うわ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~」
ダメだ、攻撃される。
………
……
…
思えば、大変な人生。いや、妖生だった。
気が付いたらブラック企業に入社して
上司ガチャに外れ怒られる毎日
初めて取った魔法少女契約は散々。梅子さんが即死
したくなかった子供との魔法少女契約もしてしまう
ようやく既存周りが出来ると思ったら24時間勤務を強いられる
ああ、本当に辛い妖生だった。しかも最期が魔法少女に攻撃されて死ぬ?
人類の敵に殺されるでもなく、過労死でもなく
笑えない冗談だ、ははっ
「走馬灯を蘇らせてる暇なんてないわ」
「は? 時藤日葵?」
瞼を開けたら時藤日葵がいた。彼女は俺を抱きしめた。
「クロックダウン!」
左手で魔法陣を展開。時藤澪の攻撃してきた右手を止める。
だけど
「さっきより早いけど止め切れないよ」
右手を止められた。だけど衝撃波は止められない。
「うわ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~」
俺達は弾かれるように飛ばされた。
………
……
…




