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殉職率の高い魔法少女が壊れる理由  作者: 虹猫
3章 新卒営業ちんちん②
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41話 新卒営業と時藤日葵修行編

獅子は我が子を千尋せんじんの谷に落とすと言う。


獅子は生まれたばかりの我が子を深い谷に落としそこから這い上がってきた子のみを育てるとされている。このことから本当に我が子を深い愛情を持って育てるということは、わざと厳しい試練を与えて成長させるということである。by wiki


時藤母に連れて来られたのは千尋せんじんの谷と呼ばれた峡谷。人工的に作られた訓練場ではあるが自然豊かな山奥、谷のあるキャンプ場と言った方がいいかもしれない。


木々も生い茂ってるし川だってある。野生生物はいないだろうけど木の実はあるし魚だっていそうだ。


俺は自然豊かなとこが好きだしそこの点は良かったと思う。


あとの問題は


「何よ?」


この家出少女。もとい今は家なき子である時藤日葵ときとうひまりとの共同生活だ。お嬢様から家出少女。そこから家すらなくなるなんて都落ち過ぎるだろ。


しかもどうして俺がこんな目に。時藤日葵を強くしたいのはいい。しかし俺を巻き込むのは止めて欲しい。迷惑極まりない。


「俺、恵茉えまの担当妖精なんだけどな」

「嫌なのはお互い様。いちいち口にしないで」


くっ、相変わらずの物言い。黙っていれば可愛い小学生なのに。この捻くれた性格が全部をダメにしている。


この修行とやらで少しは性格が矯正されればいいのだが。


「あと24時間か……取り合えずご飯食べたいな。時藤日葵ってキャンプ経験とかあるのか?」

「あるわけないでしょ。ご飯だって炊けないわ」


はぁ、そうだよな。都合良く料理経験豊富とかはならないよな。


「仕方ない、ここは俺ががんばるしかないか。よし、まずは魚を捕るか。行くぞ、時藤日葵」

「ちょっと待って。なんであなた仕切るのよ?」

「俺はこう見えてもキャンプ好きだからな」

ネットでいろいろ動画見たことあるし。


やったことはないけど大丈夫なはずだ。


「取り合えず川に行くぞ。こんな岩しかないとこにいても仕方ないだろ。時間はたくさんあるんだしのんびり焚火しながら調理しよう」

「はぁ……能天気すぎる。あの人がそんなゆっくりした時間を許すと思う?」

「どゆこと?」

「獅子は我が子を千尋せんじんの谷に落とす。その言葉が強者を我が子に求めるものなら……」


ドガン!!!!!! 


「余裕はないって話」


「なっ、なんだ?」


崖の上の方で大きな爆発。衝撃がここまで伝わってくる。

「人類の敵か?」

「もっとやっかいな敵よ」

「は?」


ドガン!!!!!! 

ドガン!!!!!! 


続けざまに爆発が続く。


こ、これはまさか


「人為的な爆発。岩が落ちて来るわ」

「冗談だろ~~~~~~~~~~~死なすことはしないって言ってたじゃないか~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~」


ゴロゴロゴロゴロ


絵に描いた大岩がいくつも転がってくる。当たれば即死だろう。


「おいおい、どうすんの? これ、どうすんの?」

「耳元で叫ばないで。私だって混乱してるのに! クロックダウン・アクティブ連鎖」


5個あった大きな岩が全部止まる。それだけじゃない。一緒に転がっていた小さな岩も止まった。


「いいぞ、時藤日葵。そのまま止めてるんだ」

「偉そうに命令しないで」


時藤日葵の魔法は停止魔法。どこまで細かいことが出来るのか分からないが


よくやった。


両手を岩の方向に向ける時藤日葵。


停止する岩。


ん? でもこれって……


「なぁ、岩をスローモーションみたいにゆっくり降ろすこと出来ないのか?」

「無理よ」

「おいおい何だよそれ。その場しのぎにしかなってないじゃん」

魔法を解けばまた岩が落ちて来るんだ。危機は全然去っていない。


「ポンコツ妖精。今から魔法を解くから。全力で逃げるわよ、いいわね?」

「魔法展開しながら逃げれないの? その方が俺的には安全なんだけど」

「無理よ」


ゴロゴロゴロゴロ


「んなバカな~~~~~~~~~~~~~~~~~~」

俺と時藤日葵は全速力でその場を逃げた。


「ぜぇ、ぜぇ」

くそっ、何で俺がこんな目に。そもそも俺は頭脳派なんだ。こんな全力ダッシュは向いてない。


「小石が頭をかすめたぞ。死ぬかと思った」

「死んでないからいいでしょ」

くそっ、何てことだ。俺の命をこんな小娘が握っているなんて。理不尽すぎるだろ。


渓谷を抜けた先にあるのは小さな川。森もある。取り合えず岩が落ちて来る感じの場所からは離れることが出来た。


だけど油断は出来ない。岩が普通に転がってくるんだ。次は何が来るんだか。


「そもそも何で魔法少女には変身しないんだ? 俺を抱えて走ってくれれば良かったのに」

「変身はしないわ。その方があの人のプライドをへし折れると思ってね」


確かに通常状態でも魔法は使えるけど。


それリスク高くない? 俺の命掛かってるって忘れてない?


「ああ、恵茉の優しさが懐かしい。恵茉なら俺を第一に考えてくれたのに」

「大丈夫よ、あなたの安全は保障するわ」


その自信とプライドはどこから出るんだ?


時刻はそろそろ12時。いい加減お腹も空いてきた。


「そこの川で魚でも獲るか。時藤日葵、魔法で停止させてくれよ」

「魔法をそんなことに使うの?」

「他に使い道ないじゃんか、その魔法」

「まあいいわ。魚はあなたが獲るのよ。クロックダウン」


魚を5匹ゲットした。


「さてと、まずは魚を捌かないとな」

俺は川辺から鋭利な石を見つける。


「そのまま焼けないの?」

「内臓取るんだよ。苦いからな」

「私、魚捌けないわよ? さわったこともない」

「お嬢様育ちにそこまで期待してないから。魚捌ける小学生の方が少ないだろうしな」


大丈夫だ。キャンプ動画は何度も見たんだ。魚くらい捌けるはず。


たぶん


「暇だったら木の実とか食べれそうなの採ってきてくれよ」

「食べられる木の実なんて分からないわ。それになんかさわりたくないし」


くっ、こいつ

思った以上にダメだ。サバイバルに向いてなさすぎる。最近の小学生は虫取りや魚獲りをやらずに育つと言う。外で遊ぶよりもゲームで遊ぶ。インドア育ち。


その典型だ。


「何よ? その顔」

「お前、俺がいなかったらご飯も食べれないぞ?」

「私の魔法で魚獲れたの忘れてない? 岩から護ってもあげたわ。いいからさっさとご飯作って。私もお腹空いた」


おのれー、俺はお前の家の家政婦さんじゃないんだぞ? お腹空いたと言えばご飯が出てくると思うな?


いや、落ち着け。落ち着くんだちんちん。相手は子供、小学生だ。ご飯待ちする小学生なんて当たり前だ。ここは俺が大人になって


「手が止まってる。早く調理して」

「お前な~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~」


こんなやり取りがしばらく続いた。


30分後


何とか内臓を取り除くことが出来た。


しかし次の問題が


火である。


「時藤日葵、ライターは?」

「持ってるわけないでしょ」

「だよな」


「お前さ、停止魔法意外にも魔法使えるよな? ほら雷みたいなの落とすやつ」


初めて会った時、梅子さんの家で見た魔法がある。空から青い雷が落ちて梅毒を倒していた。あの要領で火起こしやってくれれば。

「あれはオプション魔法なの。今は使えないわ。あの人のことだからね。遠目で私達を監視してるだろうし」

「お前ほんと何にも出来ないんだな」

「殺されたいの?」


困った。まさか火が起こせないんなんて。これじゃあご飯が食べれない。


あんまりだ。


「いや、待てよ? 時藤日葵、スマホあるよな? 電波あるか?」

「あるわ。山奥と言っても新宿。時藤家の敷地内だし」

「貸せ! 火起こしの動画を見るんだ」

俺はスマホを奪い取る。


「火起こしで検索……あった、これだ。何々? 道具無しでやるには……枯れ葉と摩擦熱か。仕方ない、時間は掛かるだろうけどやるしかない。時藤日葵、お前も協力して……」


ってあれ? どこだ?


「私トイレに行ってくる。付いてこないでね」

「いやいや、先に火起こしの準備を」

「やっておいて」

「お前自己中過ぎるだろ!!」


1時間半後


羽陽曲折ありなんとか火起こしに成功。魚を焼くことが出来た。

「文明の危機がないって不便ね。こんなにも苦労するなんて」

「お前は何にもしてないけどな。まぁいい、取り合えず食べるか」

「そうね、頂きます」

「!」


おいしい。苦労したかいがあった。こんなにも焼魚が美味しいだなんて思わなかった。


「ううっ、うううううっ」

涙の塩で魚がいい感じに味付けされている。


「どうだ? 時藤日葵、どうだ?」

「……おいしい」

「だろ? そうだろ? これが生きるってことなんだ。分かるか? 分かったな? うううううっ」

「それくらいで泣かないでよ」


子供には分かるまい。この涙が、苦労が。俺は今、猛烈に感動しているのだ。


「ところでトイレはどこでしたんだ? 草むらか?」

「クロックダウン!!」

「おい、何でいきなり魔法使うんだよ? 食べれないじゃないか」

「デリカシーのないこと言うからよ」


………


……



久しぶりの投稿です。


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