4話 新卒営業と魔法少女のケンカ
時藤家
入って第一歩目
「この度は誠に申し訳ございませんでした」
「すみませんでした」
俺達は謝った。
事前に言われていたからだ。まず謝れと。大きな声で謝れと
「……」
女の人が冷ややかな目線で俺達を見ている。
「家政婦さんに謝るんですか?」
「黙ってろ」
「ご案内致します」
(いいか。誰かに会ったらまず全力で謝れ。取り合えず謝れ。いいな)
(会社で威張ってるペニス課長とは思えないですね)
(だから余計なこと言うな)
「案内する必要ないわ」
青い髪の女の子が階段から降りてくる。昨日梅子さんの家で助けてくれた魔法少女だ。
「こ、これはこれは陽葵様。わざわざ来て頂けるなんて」
「別に、少し気になってね」
「いやー、この度はうちの新人の不始末不手際の件、なんと申し上げたら言いか」
(おい、取り合えず土下座だ。分かったな)
(分かってますって)
全身全霊の土下座を見よっ!
「どうもすみませんでした。って、あれ?」
ペニス課長土下座してないし。
「ねぇ、あなたどういうつもり? 三途川さん」
「え?」
青髪の子が睨みつけながら言い放つ。その言葉の直後
ボンッ
狐型の妖精が現れた。
「いやー、これはこれは驚いた。まさか陽葵様のクラスメイトにこんな逸材がいるなんて。オイラ気付かなかったよ。何でだろ?」
「あれ? 妖精さんが増えた。狐さんだ」
「これは私の妖精で玉袋。そんなことは言いの。あなた、何しに来たの?」
「何って……お礼を言いに」
「帰って」
「え?」
「おいおい、それはないんじゃ」
(おい、黙ってろちんちん)
「お礼言いに来た子にそんな態度はないんじゃないの?」
(だから黙ってろって。時藤様には時藤様の考えがあんの)
「そゆこと。あんたらは黙ってればいいのよ」
何だろう。この狐型の妖精。すごく生意気な感じだ。同業者ってみんなこんな感じなのだろうか。
「ねぇねぇ陽葵様。この子と魔法少女契約してもいい? いいよね? ポテンシャル感じるんだけど」
「あっ、待てこら。なんでお前が出てくるんだよ。この子は俺達の顧客だぞ」
「そんなの関係ないもんね。契約は早いもん勝ちでしょ」
「あんだと?」
狐型妖精とペニス課長が言い争っている。これが他社競合というのだろうか。思ったのと違うと言うか。子供のケンカみたいと言うか。
「玉袋、消えなさい」
「そんなー」
狐型妖精が消える。
「うるさいのは嫌いなの。そこの妖精達もこれ以上しゃべるようなら」
「はい、承知いたしました」
なんか偉そうというか高飛車な子だな。
「三途川さん、あなたに……だけじゃないけれどクラス全員に言ったこと覚えてる? 私に関わらないでって。忘れちゃった?」
「そ、それはそうだけど。昨日助けてもらったお礼もしたくて」
「いらないわ」
「で、でも」
「あなた、私を甘く見てない?」
「ど、どういう意味?」
「お礼なんて建前。本当は。魔法少女になりたいからここに来たんじゃないの?」
え? そうなの?
「多いのよ、そういう子。家族を殺された恨みで契約する子がね。都合いいものね、同じクラスに魔法少女がいるんだから。いろんな情報を聞き出せる」
「わ、私は……」
「同じこと言うの嫌いなの。帰って」
そう言って彼女は背を向ける。俺は我慢の限界に達した。
「なんだよ、その態度。お礼言いたいのは当たり前だし、魔法少女のこと聞きたいのも当然だろ? 少しくらい話聞いてくれてもいいじゃんか」
「……あなた、新人?」
「も、申し訳ありません日葵様。このバカには私の方からきつく指導しておきますので」
「嫌な目ね。生意気な目。クズの目」
「どうせ俺は契約まともに取れないクズさ。仕事もさぼりまくりだしな。でもなっ、あんたの数倍は人情ってもんがあるつもりだ」
「よ、妖精さん。もういいから。ね? 私が悪いんだしさ」
「君は何にも悪くないよ。歪んでるのはこの子の方さ」
「も、申し訳ありませんでした~~~~~~~~」
俺はペニス課長に担がれ、家を後にした。
………
……
…