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殉職率の高い魔法少女が壊れる理由  作者: 虹猫
3章 新卒営業ちんちん②
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39話 新卒営業と時藤創

「ごめんください、ちょっといいですか? ごめんくださーい」

返事はない。誰もいないのだろうか。いや、でも魔力はあるし。

「ごめんくださーい」


キュイーン


何だ? 奥の方から甲高い音がする。


「入りますよー」

そこには


キュイーン


胡坐姿あぐらすがたで小さな魔法陣を展開する女性がいた。


20代くらいだろうか。薄青色の肩まで伸びる髪で少しぼさぼさしている。額にはハチマキをしており手元に向かって魔法陣を出している。


キュイーン


この甲高い音は魔法の音だったのか。しかし何をしているんだ?


「あの、すみません」

キュイーン

「あの……」

すごい集中力だ

「すみませーん」

「!!」


ようやく俺の声に気付いてくれる。


「あわ? あわわわわわわ。わー」

ペタン


驚いた拍子で後ろに転んでしまう。


キュイーン!


魔法陣の展開と同時に何かが宙を舞った。

「いけない、アイテムが!」

「任せて下さいな、よっと」


落ちる直前でキャッチする。

「あ、あ、ありがとうございます。私そそっかしくて」

「気にしないでいいよ。驚かせた俺も悪いんだし」


いやはやと頭をぼりぼりとかき申し訳なさそうにしている。この人も時藤の人間なのかな。


「あはははは」

時藤親子とは随分印象が違うな。高圧的な感じがしないのはもちろん衣服もよれよれの甚平じんべいだし。


「君は魔法少女なんだよね? 宮殿からの魔力が気になって来たんだ」

「そ、そうですね。私は時藤創ときとうそうといいます。あなたは?」

「俺の名前はちんちん。時藤司さんに呼ばれてね。だけど今は暇だから散歩してたんだ」


俺はキャッチした物を返す。キャッチした物、それは本だった。


「ありがとうございます。いやはや、助かりました。私集中すると周りが見えなくなってしまうので」

確かにすごい集中力だった。


「でも珍しいですね。レッドフォックス社以外の妖精が来るなんて。司様は用心深い方なのに」

「業務提携がうんちゃらかんちゃら言ってたかな。よく分からなかったけど」

「あはははは、面白い方ですね。妖精なのに分からないって。いやー、でも本が無事で良かった。魔力込めてるから暴発したら大変で」


魔力を込める? この人もしかして……


「君、物に魔法を込めることが出来る魔法少女? タクトから雷出すとか」

「す、すごい、よく知ってますね。私の魔法って秘匿性高いはずなのに」


まぁ実際に使ってるの見たし。時藤日葵がそういう魔法少女がいると言っていた。まさかこんなところで会えるとは。


「ねぇ、ちょっとその本のこと教えてよ。魔法出せるんだよね?」


どういう原理なんだろう。すごく気になる。


「そ、そうですね。まだ完成はしてないですが。で、でもいいのかな? 教えちゃって。あっ、でもいいのか。私の魔法のこと知ってるわけだし」


そう言い彼女は本に向けて魔法陣を展開。

キュイーン


魔法陣が本を包み込む。


「これは下準備。こうやって本に魔法を馴染ませてるんです。一気に魔力を注入しても壊れますし、長い時間やっても壊れます。アイテムによっても差異が生じるので注意が必要です」


すごいな。魔法を生み出せる道具をこうやって作っているのか。


そもそも魔法を出せる道具があることすら世間には知られていない。魔法とは人から生み出され作り出されるもの。その概念が壊された気分だ。


「この本からはどんな魔法が出るんだい? タクトの時は小規模な爆発みたいなのや雷とかだったけど」

「えっとですね、これはバフ、つまりは能力向上の支援魔法を使えるようにしたいなと。司様のご命令なんです」

能力向上魔法か。魔法の底上げも出来るし便利だ。


「どんな魔法でも組み込めるんだよね? 最強の道具になるじゃないか」

「す、すごくないですよ。道具自体は1つしか作れないですし、魔法によってはすぐに壊れてしまうので。本職魔法の模造品、ですから。前回のタクトも壊れてしまいましたし。他にもいろいろ細かい制限も多くて。本家曰く人間の能力の限界、と言うらしいです。聞いたことあります?」


人間の能力の限界。そういえば入社したての頃ぽこちん先輩に教えてもらったような。


魔法能力は望んだものを手にすることが出来る。だけどそれには限度がある。


それが“人間の能力の限界”だ。


例えばこの世すべての、あらゆる人類の敵を抹殺する魔法を習得出来るかと言われれば否、無理である。

世界のことわりや法則。それをも覆す力、神のような力は得ることが出来ない。


炎を出すこと、電気を出すこと、これらは科学の力でも行える。相手の動きを止めること、叩き割ること、呪うこと、これらも妖精の力を借りることで出来る。だけど太陽や月を破壊するような強大過ぎることは不可能。

魔法とは人知を超える力。しかしあくまで超えるだけに過ぎない。人はあくまで人なのでだ。


「わ、私昔から人見知りだし怖がりで。人類の敵なんて見ただけ動けなくなってしまいます。だけど時藤として何もしないわけにはいかず。司様の計らいでこうやってアイテムを制作しているのです」


なるほどな。一口に時藤と言ってもいろんなタイプの人間がいるわけか。人類の敵が怖い。それはそうだよな。命懸けなんだ、怖くないはずがない。


「こ、こうやって工房にこもっていられるのも私には合っているようで。ほ、本当に司様にはよくしてもらっています」

もじもじと手を交差しながら本を嬉しそうに見ている。ここを工房と言っていた。物作りが好きな人なんだな。


「そういえば時藤司とは親戚なんでしょ? なんでそんなかしこまった感じなの?」

「そ、それは当然ですよ。私は分家で司様は本家、しかもご当主様なのですから」


分家? 本家? よく分からないけど家柄の中に偉いとか偉くないとかがあるのかな。親戚同士なのにおかしな感じだ。


「時藤日葵って知ってる? 青色の髪で生意気な子供なんだけどさ。そいつは偉いの?」

「え、偉いも何も司様の娘様じゃないですか。次期当主候補の1人ですよ。魔法の才覚なら凛(りん様)をも超えるとか」


なるほど。だからあいつはあんなにも偉そうで傲慢なのか。でもまぁ今はただの家出少女だけど。てか凛って誰だ?


「あっ、すみません。私この本を仕上げなくてはいけなくて。急ぐように言われてまして」

「あっ、そうなんだ。邪魔しちゃってごめん」

「いえいえ、とんでもございません。では作業に集中させていただきます」


キュイーン


腰の低くて良い人だ。これまで会ってきた時藤の人間はみんな偉そうだったからな。この人が天使に見える。


さて、と。もう少しぶらぶら散歩するかな。俺は宮殿を後にする。


………


……



出来るだけ毎日投稿します。22時更新。


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