35話 新卒営業と子供のケンカ
三途川家
「あらあら~、今日はもう1人お友達がいるのね? リボンが似合ってる可愛い子ね」
どういうわけか美甘舞が付いてきた。
「何で美甘さんがいるの?」
「ブルーサファイアだっているじゃん」
「私は恵茉の家に泊まらせてもらってる。あなたは自分の家に帰りなさい」
「嫌、私もここに泊まる」
……は?
何て言った? この子? 泊まる?
おいおい、恵茉の家はホテルじゃないんだぞ。そんな簡単に泊まれるなんて
「あら~、嬉しいわ。食材多めに買ってこないとね。よろしくね、舞ちゃん」
うふふと買い物準備をする恵茉母。
そうだ、この人はこんな感じだった。
「私、恵茉のママ好き♡」
隣で時藤日葵の小さなため息が聞こえた。
時刻を確認すると16時半。報告書も書かされるだろうし会社に戻るとしよう。
「俺は会社に戻るから。恵茉、何かあったらテレパシーで呼んでくれ」
「うん、また明日ね」
どういうわけか恵茉の家に2人の魔法少女が泊まることになった。時藤日葵は家出中だとして、あの子、美甘舞は家に帰らなくていいのだろうか。
というか名前以外全く正体が分からないんだよな。初対面で襲ってきたと思ったら今度は転校してきて駄菓子屋で買い物。
意味が分からん。
まぁいいか。時藤日葵もいるからある程度は安全だろうし。
残業したくないしさっさと会社に戻ろう。
………
……
…
30分後
「ごめん、いろいろあって戻って来た」
「どうしたの? ちんちんさん」
「実はさ」
以下ちんちんの大雑把な回想
「はぁ? 襲って来た魔法少女が転校して来て一緒に泊まってる?」
「超展開でビックリですよね。だけど大丈夫。時藤日葵もいるから安全かと。待ってて下さい、これから報告書作りますから」
「バカかてめぇは!!! 報告書なんてどうでもいいだろ。敵だったやつとお泊りだと? しかも時藤様も一緒だと? 今すぐ三途川恵茉のとこに戻れ。今すぐだ。三途川恵茉はともかく時藤様に何かあったら一大事だぞ。今すぐ戻れ、今すぐだ!!!」
「えー、せっかく会社戻ってきたのに。それに残業手当とか夜勤手当だって出ないじゃないですか」
「チンコ切られてぇのか!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「ひっ、ひ~~~」
回想終わり
「パワハラ上司を持つと辛いよ。これだからブラック企業は嫌なんだ」
「た、大変なんだねちんちんさんも」
俺じゃなければ鬱病になってたところだ。今の若者は褒めて伸ばす。これが基本なのにそれを全く理解していない。そんなんだから退職代行が増え続けるのに。
「ところで今は何をしてるんだ? ボードゲーム?」
「そう、人生ゲームやってるんだ」
これまた懐かしいゲームをやっているな。子供が3人揃ってボードゲームか。お泊り会に相応しいじゃないか。
にしても……
この先どうしよう。ここにいれば衣食住は約束される。恵茉母のご飯はきっとおいしいだろう。ゲームもある。問題ないと言えば問題ない。
しかし
24時間一緒というのはやはり気疲れしてしまう。こう見えて俺は繊細なんだ。枕だって変わると眠れないのに。
いや、もっとポジティブに考えるべきか? アパート解約すれば家賃代が浮く。そう考えればゲーセンでもっと遊べる。
ありと言えばあり、か? しかし、うーん。
「恵茉~お風呂沸いたわよ~」
1階から恵茉母の声がする。三途川家はご飯の前にお風呂らしい。
「恵茉、先に入っていいわよ。昨日は私が先だったし」
「うん、そうしようかな」
恵茉はお風呂の用意をし部屋を出る。
と思ったが
がしっ、と腕を掴まれる。
「え、えっと……美甘さん?」
「私も一緒に入る。髪の毛洗ってあげるよ、ピンクパール」
はぁはぁと息遣いがあらい。というか目が怖い。
「え、えっと、何で髪の毛?」
「私ね、髪の毛大好きなの。可愛い女の子の綺麗な髪。すべすべて滑らかで食べたいくらい好きなの。ねぇ、どんなシャンプー使ってるの? コンディショナーは? 知りたいの。だから一緒にお風呂に入りたいの」
この子
こんな長々としゃべれるんだ。髪の毛に固執してるとは思ったけどここまでとは。
変態だな。
「ねぇ、いいでしょ? 一緒にお風呂いいでしょ?」
ぐいぐいと詰めよる。
ああ、これはダメだな。恵茉はこういう押しに弱いし。美甘舞の思い通りになりそうだ。
「いいわけないでしょ」
そうはならなかった。
恵茉の手首を掴む美甘舞。その美甘舞の手首を今度は時藤日葵が掴んでる。
なんだこの図、この3人。さっきまで仲良く人生ゲームやってたんじゃないのか? 人生ゲームで何があった?
「何で美甘さんが恵茉と一緒にお風呂入るのよ。許さないわ」
「何でブルーサファイアの許可がいるの?」
「ちょ、ちょっと2人とも止めてよ」
「髪だけじゃない。背中もちゃんと洗うから大丈夫」
「そういうことを言ってるんじゃないの。私が恵茉と入るわ。あなたは残ってなさい」
「嫌っ、私が恵茉と入る。ブルーサファイアは人生ゲームの片づけやってればいい」
「何ですって?」
あぁ、なんだろう。面倒くさい子供のケンカになってきた。帰りたい。
「そもそもあなたは」
「ブルーサファイアが」
「2人ともケンカは止めて!!!! 嫌いになっちゃうよ?」
恵茉が
怒った。
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