32話 新卒営業と美甘舞
転校してきたのは先日襲って来た魔法少女の1人。美甘舞であった。
緑色の髪、おかっぱ頭に大きな赤いリボン。丸みのある童顔にジドっとした目。
忘れるはずがない。この前公園で襲って来た魔法少女だ。
「なんでこの子がJS小学校に?」
「転校してきたの。ピンクパールに会いたかったから」
両手を広げ恵茉に抱き着こうとする。だけど
ガシッ
襟首を掴まれ止められる。
「恵茉に触らないで」
「何するの? ブルーサファイア」
「その変な呼び方止めて。あなたみたいな危険な子、恵茉に触らせられるはずがない」
「何でブルーサファイアの許可が必要なの? ピンクパールは嫌がってないのに」
「いいえ、嫌がってるわ」
「嫌がってない」
「ちょ、ちょっと2人とも……」
一体全体どうしてこうなったのか。この子は、いや、この子達は恵茉や時藤日葵を殺そうとした張本人だ。そんな子が急に会いに来るなんて意味が分からない。
「大丈夫だよ、学校では悪い子ことはしない。ピンクパールに嫌われたくないから」
この子は恵茉に興味があるのか? 転校までしてくるなんてすごい行動力だ。というかどうやって学校を調べた?
「河童型妖精はいないの?」
「包茎のこと? 包茎なら知らない。いろいろ忙しいからね。普段はほとんど合わないし」
「私達を殺そうとしておいてよく転校して来れるわね」
「あれは包茎の命令。私は綺麗な髪が欲しいだけだから」
何て言うんだろう。のんびり、とは違うな。すごくマイペースな子に思える。時藤日葵の質問に焦るでもなく詫びるでもなく、人形のように答えている。
「河童型妖精の差し金か……。注意して恵茉、この子私達の情報を盗む気よ」
まぁそう考えるのが妥当だろう。
「違うよ? 包茎は私がここに転校してくるの知らないし」
ん? どういうことだ? この子の独断で転校して来たってことか?
「嘘言わないで」
「嘘じゃないよ。私嘘つかない」
思考が追い付かないが
何にせよ
恵茉のクラスに新しい魔法少女が転校してきた。魔法少女は本来協力して戦うもの。この子が恵茉達にとって良い仲間となってくれればいいのだが。
「ねぇ、2人にお願いがあるんだ。髪の毛、頂戴?」
幸先は不安である。
………
……
…
昼休み
恵茉、それに時藤日葵と美甘舞の3人は机を向かい合わせにし給食を食べている。
美甘舞が魔法少女であることはすぐに知れ渡った。
類は友を呼ぶ。魔法少女は魔法少女を呼ぶ、とでも言うのか。事実このクラスだけで魔法少女が3人。枯渇した現代では珍しい光景と言える。
友人が魔法少女になった。その友人を助けるために魔法少女になる。魔法少女あるあるだ。だけどこれはまた少し違うと言うか。
「JS小学校って給食なんだ。前の学校はお弁当だったのに。私人参とか玉ねぎ嫌いなの。ピンクパール代わりに食べて?」
「え? 野菜はちゃんと食べた方がいいよ」
「大丈夫。私にはこれがあるから」
そう言って取り出したのはポテトチップスだ。
「学校にお菓子持ってきたの? しかも昼食がお菓子って……どういうつもり?」
「別に普通だから。前の学校は好きな物食べて良かったの」
「給食あるんだから給食食べなさいよ」
「ブルーサファイアは細かいこと言うんだね」
美甘舞は構わず袋を開けお菓子を食べ始める。
「えっと妖精、ちんちんだっけ。私の給食食べていいよ。人参あげる。行くよー、はい」
人参が宙を舞う。
俺は慌てて口でキャッチ。危ない危ない、食べ物は粗末には出来ないからな。
「ちょっと、食べ物で遊ばないで。行儀が悪すぎる」
「うちではこれが普通だけど」
「どういう躾されてるの?」
確かに時藤家ではこんな光景はありえないだろうな。時藤母が見たらビンタしそうだ。
「美甘さんはお菓子好きなんだね」
「うん、お菓子大好き。私の体はお菓子で出来てるんだ、3食お菓子だから」
どこまでが嘘で本当なのか。分かりにくい子だ。
「あっ、だったら放課後駄菓子屋さん行こうよ。新しく出来たんだって」
「駄菓子屋さんって?」
「うーんと。お菓子しか売ってないお店のこと。昔はよくあったんだって。お婆ちゃんが言ってた」
駄菓子屋さんか。確かに懐かしいな。田舎だと未だに残ってるらしいけど都会だとほとんど見かけない。
そういうのもあってか最近はそういうレトロなものがリニューアルされるとか。
「すごいね、そこ。お菓子食べ放題だ」
いや、食べ放題ではない。
「じゃあ決まりだね。日葵ちゃんも行くよね?」
「そうね。恵茉と美甘さんを2人きりにしておけないから」
放課後に駄菓子屋か。何だかいいな、こういうの。小学生らしいというか微笑ましい感じがして。
そうだよな、魔法少女とはいえまだまだ子供なんだ。子供は遊ぶのが仕事。血なまぐさい戦いは似合わない。
………
……
…
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