表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
殉職率の高い魔法少女が壊れる理由  作者: 虹猫
3章 新卒営業ちんちん②
29/30

29話 新卒営業と親子喧嘩

史上最強の親子喧嘩?

「実はね、朝に日葵ちゃんのお母さんが帰って来たんだ」


以下恵茉の回想


パシン


「帰ってきていきなりビンタ?」

「聞いたわよ日葵。縁もゆかりもない魔法少女を家に招いてるって。おまけに泊めた? どういうつもり?」

「たまにしか帰ってこないくせに母親面しないで。私には私のやり方があるの。私はもうお母さんの人形じゃない。魔法だって上手に扱える」

「魔法のまの字も知らない子がよく言うわ。日葵の新しいパートナーは私が決める。あなたには友達は必要ないの」


「だから私のことは私で決めるって言ってる!!!! クロックダウン!!!!!」


以上、恵茉からのざっくりとした回想である。


「ということがあって……私どうしたらいいか」


まさか親子喧嘩でこんなことになろうとは。てか普通に人間相手に魔法使ってるし。時藤家はそういう家系なのか?


「こうやって手合わせするのは2週間ぶりかしらね? 最初はあなたが魔法少女になって2日目の時。2回目は紬と繭の告別式の後」


燃え盛る屋敷からゆっくり歩いてくる人間がいる。30代前半くらいだろうか。紺色の髪に黒のロングワンピース姿。首には真珠のネックレスをしている。

魔法少女には変身しておらず手には40センチくらいのタクトを持っている。


あれが時藤日葵の母親なのだろう。目つきは鋭く、タクトを手のひらでペシペシと叩いている。


「クロックダウン!」

時藤母に対し青白い魔法陣が展開。


「遅い」


ボワッ

「なっ?」


時藤日葵の足元が爆発する。

「くっ」


咄嗟に避けるが魔法陣が解けてしまう。


「攻撃されると魔法陣が解ける。まだ修正出来てないのね。それに反応も全部遅い。魔法少女になれば身体能力は向上する。だけどそれは基礎値が低ければ意味はない。言ったはずよね?」

「バカにしないで。空間ごと停止させてやる」


両手を前にし標準を合わせる。大技が来るのか?

「クロックダウ」

「もういいわ。エンチャント・雷」


ビリビリビリビリ

「がっ」


な、何が起きたんだ? 一瞬過ぎて何も見えなかった。時藤母がタクトを振るった。と、思ったら電流が走ったような音がして……時藤日葵が倒れてしまった。


「魔法少女になって1ヵ月。及第点以下。今まで何をしていたの?」

「くっ、この程度」

「負けん気だけは一人前ね。言ったわよね? 魔法は精神論ではなく計算の繰り返しであると。私の教えを破ってバイナリーオプション使ったり。あなたは本当に手が掛かるわ」


戦闘、と呼べるのだろうか。あまりに一方的すぎる。俺はこれまで時藤日葵の戦いを何度か見てきた。魔法速度も速いし正確性もある。身体能力だって高いと感じていた。なのにここまで差があるなんて。


「驚くのも当然さ」

「うおっ、いたのか」

狐型妖精がいつのまにか隣にいた。


「あの方は16代続く名家、時藤家の現当主。時藤司ときとうつかさ様ご本人。普段ならお会いするのも叶わないとんでもない方なのさ」


あれが、名家と言われる時藤家のトップ。時藤日葵の母親。


変身している状態の時藤日葵をいとも簡単に倒してしまった。それも明らかな手加減をして。


これが魔法を極めた人間。

「わ、私はまだ、ま……けて、ない。クロック……」

左手を向けたまま


気絶してしまった。

「日葵ちゃん」

「日葵様!」

恵茉と狐型妖精が慌てて介抱する。


「はぁ……」

短くため息を吐く時藤母。似ている。ため息の吐き方もそうだし目つきや髪もそう。どことなく傲慢そうなその態度も、全部似ている。


にしても


壮絶な親子喧嘩だな。


屋敷1つを燃やしてしまうのだから。


………


……



30分後

「ううっ、くっ」

時藤日葵が目を覚ます。


「大丈夫? 日葵ちゃん」

「ここ、は?」

「お屋敷の隣、家政婦さん達の下宿先。怪我はないみたいだけど、どこか痛いとこある?」

「くっ」


唇を噛みしめている。あれだけ一方的にやられたんだ、悔しいのだろう。


にしても


本当にすごい親子喧嘩だった。というか迷惑極まりない親子喧嘩だ。いくらなんでも住む場所を破壊するなんて常識外すぎる。


「あの人、お母さんは?」

「分からない。玉袋さんに何が伝言はしてたみたいだけど。日葵ちゃん、いつもお母さんとあんな感じなの?」

「大体ね。私が魔法少女になる前から顔合わす度にケンカしてる。たまにしか帰ってこないくせにいつもお説教ばかり。嫌になる」


この親にしてこの子あり、という気もするが今は黙っておこう。修復出来ないくらい関係性が壊れそうだし。


「玉袋、いる?」

「はいさ、いますとも」

「あの人からの伝言聞いてるんでしょ? 教えて」

「えっと……言っていいのかな」

「いいから早く」


「では言われたことをそのままにお伝えします」

「“1つ。友達と縁を切るように”」

「“2つ。屋敷がなくなったから時藤本家で過ごすこと”」

「えっと、そのあの……以上になります」


ゴゴゴゴゴゴゴ


顔を見なくとも分かる。物凄く怒っている。


「恵茉、お願いがあるんだけど」

「な、なに?」

「あなたの家に泊めてくれない? 私、家出する」


家出少女の誕生である。


………


……



出来るだけ毎日投稿します。22時更新。


評価、ブックマーク、感想お待ちしています

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ