25話 新卒営業と新しい学校生活
しばらく学後編です
翌日 会社にて
俺はペニス課長に朝一で報告している。
「……というのが昨日の出来事です。いやー、まさか今月2件も契約取れちゃうなんて。自分で言うのもあれですけど上出来かなって。このままだとあっという間にエース社員と呼ばれるかも。あはははは」
出社が嬉しいと感じるのは今日が始めてだ。今までは時間ギリギリまで眠ってスマホゲームしながら現実逃避してた。だけど今日は現実が待ち遠しくて仕方がない。
なぜなら
契約を取ったのだから。大事なことなのでもう1度言おう
契約を取ったのだから!!!
横暴で傲慢なペニス課長もこれで少しは静かに
「お前さ、魔法少女が魔法少女と戦ってどうすんの? ドヤってる場合じゃないからな? 契約取ってもさ、お互いの魔法少女潰してたらマイナスになるって気付かない?」
静かに……ならなそうだった。
「で、でも契約取ってきたし」
「営業が契約取って来んのなんて当たり前だろがボケ!! くだらん報告してる暇あったらアフターケア行って来いや!!! 次殉職させたらお前もぶっ殺すからな!!!!」
「ひっ、ひい!」
俺は慌てて会社を出る。
………
……
…
「はぁ、どうなってるんだよ。契約取っても怒られ、報告しても怒られ。これ、何しても怒られるんじゃ?」
社員のモチベーションアップさせるのが上司なんじゃないのか? あんなのうつ病製造機じゃないか。嫌になってくる。
「何をぶつぶつ言ってるんだ? ちんちん」
このイケメンボイスは
「ぽこちん先輩」
「聞いたぞ、新しい魔法少女契約取れたんだってな。調子いいみたいじゃないか」
「ありがとうございます。子供と契約してしまったのは不本意なんですが……殉職させないようにがんばります」
妖精は契約するだけが仕事じゃない。魔法少女のサポートをするのも仕事だ。初めての既存周り。がんばらなくては。
「あっ、そういえばぽこちん先輩ってテレポート出来ます? 他社の妖精がやってるの見ていいなと思って」
「あー、テレポートか。あれ結構難しいぞ?」
俺もあんな風にビュンってやってみたい。
「テレポートの正式名称は空間移動。瞬間移動が2次元係数なのに対して空間移動は3次元係数と4次元系数の計算が必要になる。お前数学出来る?」
「すみません、テレポートは諦めます」
そんな高度な計算が出来たらこんなブラック企業に勤めてない。
「あーあ、俺には無理か。昨日自分だけでなく魔法少女も一緒にテレポートしてた妖精がいたんですよね。出来たら殉職も避けられると思ったのに」
「ん? 魔法少女も一緒に? もしそんなの出来るならすごい妖精だぞ。何なんだ? その妖精」
「分かりませんよ。気味の悪いやつってのは覚えてます」
怪しい目つきに笑い。人間を襲う魔法少女にそれを手引きする妖精。注意しなければいけなのは人類の敵だけではないということか。
「あっ、ちなみにバリアはどうなんですか?」
「テレポートよりは簡単だよ。物理計算の応用だし」
「あっ、バリアも諦めます」
………
……
…
時刻は12時半。俺は恵茉のいる小学校に向かう。この時間は休み時間のはずだ。本来なら昨日襲って来た魔法少女の件もあるしずっと一緒にいるのが良いのだろう。
だけどそうすると24時間勤務ということになる。残業手当すら出ないのに夜勤手当が出るはずない。恵茉には悪いけど自分のことは自分でがんばってもらうしかないのだ。
JS小学校
教室に入るのが躊躇われる。恵茉は昨日魔法少女になった。旧時代なら魔法少女というのは隠され人知れず悪と戦う存在であった。だけど現代における魔法少女の在り方は違う。
隠さない。むしろ周囲に教えるのだ。その方が都合が良いのだ。だってそうだろ? 小学生にしろ中学生にしろ大人にしろ、日中は学校なり会社に通っていることがほとんどだ。理由もなく休めるはずがない。
魔法少女であると認められれば公休扱いになる。当然恵茉もそうしているだろう。
何にせよ恵茉は昨日魔法少女となった。そうなると周囲からは当然質問攻めにあう。どんな魔法を使えるのか、なんで魔法少女になったのか、人類の敵は怖くないのか、いろいろだ。
俺もいろいろ聞かれるかもしれないしある程度覚悟はしておかないと……
何、大丈夫。相手は子供、小学生。気軽にいけばいい。さぁ、行くぞ! ちんちん!!
「こんにちはー!!」
俺は元気良く挨拶する。そう、何事もはじめが肝心。親しみやすい妖精キャラになればいいだけだ。
「……」
「こんにちはー!!」
返事がない。
いけない、心が折れそうだ。これが最近の子供というやつか?
俺はクラスを見渡す。そうだ、恵茉を探すんだ。恵茉をきっかけに馴染んでいけばいいのだ。妖精はもともとマスコットキャラとして存在していた。
大丈夫、ヌイグルミ的な感じで行こうじゃないか。
「こんにちはー、恵茉いますか?」
「……」
返事がない。ただの屍のようだ。俺が。
くそっ、これだから最近のガキは嫌いなんだ。小学校では挨拶を教えないのか? 道徳の時間はないのか?
いくら嫌われてても無視することないじゃないか。
挨拶を3度も無視されたことはない。ガラス細工で出来てる俺の心は……もうすでに限界に達していた。
「ん? なんだ? あの人だかり。あぁ、恵茉かな?」
窓際の席。そこに10人くらい女の子が集まっている。そこに夢中で俺の挨拶が届かなかったのかな?
俺はその人だかりに向かう。
そこには
「え、えっと……時藤さん、何してるの?」
「何って、三途川さんの髪をとかしてるのよ。この子くせっけでしょ? 髪が少し跳ねてて。朝から気になってたの」
「そ、そうなんだ……」
時藤日葵が、恵茉の髪をとかしていた。
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