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殉職率の高い魔法少女が壊れる理由  作者: 虹猫
3章 新卒営業ちんちん②
23/48

23話 新卒営業の想いの果てに

目の前の誰かを救いたい。それは誰もが思う当然の気持ち。

それは恵茉なのか、日葵なのか

それとも……

数分前


「ちんちんさん、お願いがあるの」

「ダメだ」


この状況で、目の前で時藤日葵が襲われピンチになっている。この子が何を言うかなんて想像がつく。

「どうして?」

「魔法少女は命の危険が伴う。人類の敵が現れれば戦わなければいけないし殉職も多い。君はまだ小学生だ。子供がやる職業じゃない」

「で、でも時藤さんだって小学生で、それに私を庇ってこんなことに」

「それでもダメだ。君はどう見ても戦うタイプじゃない。それに相手は人類の敵だけじゃない。魔法少女だって敵になる。梅子さんの孫をみすみす殺すような真似は出来ない」

「ううっ」


俯き、唇を噛み締めている。


俺は子供が大好きだ。純粋で明るくて何者にも染まってなくて。そこには無限の可能性があって夢も希望もある。それが子供だ。


だけど子供はいろいろ発達途中で、正しい判断が出来ないことも多い。危なっかしい存在でもあるんだ。


「一時期の感情で魔法少女になるなんて止めた方がいい」

「で、でも……このままじゃ時藤さんが死んじゃう。それに、その後はきっと私だって狙われる」

「そ、そうかもしれないけど……」


だけど、それでも


「お願い、ちんちんさん。私を魔法少女にして? 私、もうね……目の前で誰かが死んじゃうのは嫌だよ。お婆ちゃんみたいな人をもう出したくないの」


肉親が死んで魔法少女になる。そんな子は多い。だけどそういう子は大抵現実を知って絶望してしまう。


魔法少女あるあるだ。


この子にその道を辿らせてしまうのか? いや、そんなの絶対ダメだ。


だけどどうすればいい? 時藤日葵が髪を切られた。呪いの藁人形がある。今にも飛び掛かってきそうな斧を構える魔法少女。薄気味悪い河童型妖精。


最悪だ。最悪すぎてどうすればいいのか全然分からない。逃げる? 無理だ。この状況で逃げれるはずがない。


なら戦わせるのか? この子を。梅子さんの孫を。10歳の子供を。


俺は、俺は……


「大丈夫だよ」


何かに


優しく包まれた。


暖かくて、気持ちが良くて、甘い香りもして


すごく落ち着く温かさ。この感じ、昔どこかで……


「大丈夫。私は大丈夫。ちんちんさんが思ってるような未来にはさせないから。ありがとう、ちんちんさん。ずっと心配してくれて。でもね、私は大丈夫だから」


人間って、こんなにも温かいんだ。毎日出社して、怒られて、契約に追われて、ゲーセン行って、寝て、また出社して


楽しいことなんて何もなかった。営業職は俺には向いてなくて、早く辞めたいって毎日思ってた。だけど辞めることが出来なくて、嫌々ながらに仕事して、さぼって、手抜きして。そんな毎日だった。


誰かに抱きしめられたり、温かい言葉を掛けられるなんてなかった。


「……」


いや、違うな。あった、温かい言葉。それにご飯。梅子さんだ。梅子さんはとても優しくて、ご飯もおいしくて。とても良い人間だった。


妖精は感情が欠けている生物だと言われる。


梅子さんが死んだのは悲しいことだけど、それは仕方ないことだって、それが今の妖精歴なんだって、自分に言い聞かせた。


魔法少女の営業は悪魔の営業とも言われる。

契約即ち死者のへ門。事実梅子さんは魔法少女になった瞬間死んでしまった。


この子は梅子さんの大切な肉親。


俺は、俺は……


「恵茉……君はどんな魔法少女になりたい? どんな魔法を使いたい?」


「初めてだね、名前呼んでくれたの。あのね、私は……」


………


……



出来るだけ毎日投稿します。22時更新。


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