15話 エリート妖精のピンチ
悪意に満ちた魔法少女契約が存在する。
悪意しかない魔法少女契約が存在する。
「これが、魔法少女」
繭様が自分の体を見渡す。髪も目も服装も。赤で統一されている。
「うけけけけ、さすが時藤家。なかなかの魔力やねー。さてさて繭様。その魔法の力で何をします? うちの見立てだとその寝ている女の子の治癒をするんでしょ? 早速やってみましょうよ。ね?」
「言われなくても分かってる」
紬様の肩に手を当てる。
「治癒、開始」
ブワッ!!
赤い魔力が紬様を包み込む。すごい、これが繭様の魔法の力。とんでもない魔力だ。
「うけけけけっ、これはすごい。これなら成功間違いなしや。ささっ、繭様。その赤い光を自分に取り込むのです。そうイメージするのです。そうすれば治癒は完了します」
「分かった」
ブワッブワッ
赤い光がさらに発光する。その光が少しずつ少しずつ繭様に入っていく。
「うけーーーーーーーーーー成功やーーーーーーーー」
河童型妖精が嬉しそうに叫ぶ。何なんだ? この妖精。どうしてこうも嬉しそうなんだ。いや、実際紬様が治癒されるわけだしオイラだって嬉しいのだけれど。
「うけけけけーーーーーーーー」
こいつの笑いを見てると嫌な予感しかしない。
ブワッブワッブワッブワッ
シュー
赤い光が完全に取り込まれた。それと同時に張られていたバリアも解ける。
「紬様」
「お姉ちゃん」
オイラ達は紬様の顔を覗き込む。
「すぅ、すぅ……」
静かな寝息を立てている。良かった、成功さ。
梅毒の症状。全身の赤い湿疹もなくなっている。
「やりましたね、繭様。でも、あれ? 紬様の魔力もなくなったような。これって一体……繭様何か分かります?」
「はぁ、はぁ」
「繭様?」
そこで見たのは
「ううっ、うううううっ」
全身が湿疹に覆われ息を荒げる繭様だった。
「繭様?」
「うううううっ」
苦しそうに蹲る。どうして? どうして繭様に梅毒の症状が?
いや、原因は1つしかない。1つしかありえない。オイラはその原因であろうものを睨みつける。
「うけけけけ」
「やっぱり犯人はお前か」
「うけけけけ。嫌やなー、犯人だなんて。まるでうちが悪いみたいやん。契約内容を確認しないその子が悪いのにさー」
「お前―」
オイラは河童型妖精を捕まるため飛び掛かる。だけど
「おっとっと」
上空に逃げられてしまう。
「さてと。うちの仕事は終わったしあとは見物とシャレこもうかな。うけけけけ」
ビシュン
テレポートで逃げられてしまった。何なんだあいつ? ありえない。信じられない。あんなのがいるなんて初めて知った。それに今の状況、なんて会社に報告すれば。
いや、そうじゃない。今は繭様を何とかしないと。
「繭様、大丈夫ですか?」
「うううっ、な、何で? なんで体が痛くて熱いの? こ、これって梅毒じゃ。な、なんで玉袋?」
「わ、分かりません、が。たぶん繭様が使ったのは呪術魔法の類かと」
「呪術?」
「対象を呪ったり嵌めたりするのが得意な魔法です。おそらく、紬様の病気を吸い取ってしまったのだと」
そう考えれば紬様の魔力も吸い取ってしまったことの合点がいく。対象から生命力を奪い尽くす魔法。呪術魔法の1つにそういうのがある。人を呪わば穴二つ。使い方を間違えれば対象者でなく術者本人も被害が及ぶ最凶魔法である。
「そ、そんなの詐欺じゃん。全然治癒じゃない」
「だ、だからオイラは契約しちゃいけないって」
「あぁ、もううるさい! そんなの分かるわけないじゃん」
最悪だ。外には敵。隣には毒に侵される繭様。どうしてこうも最悪なことが続くのか。
ドゴン!!
「なっ? また梅毒?」
天井が壊れそこから梅毒が入って来た。
「お姉ちゃん!」
繭様は咄嗟に紬様を抱える。だけどすぐに
「ううっ、ぐっ」
身体を埋めてしまう。魔法少女に変身してるから身体能力は5倍になっている。紬様を抱えるのなんてわけないはず。なのにそれが出来ない。きっとこれは毒のせい。
「痛い、熱い、痛い。ううっ」
発汗がすごい。いけない、このままじゃ死んでしまう。
(日葵様、急いで来て下さい。こっちに梅毒が現れて)
(今向かってる!!!!)
フシュー、フシュー、ブシュシュシュシュ、ブシュシュシュシュ
得も言われぬ音と共に梅毒がゆっくりと繭様達に近づく。梅毒の攻撃は大きく2つ。1つは毒攻撃。対象を毒に感染させ死に至らしめる。もう1つは物理攻撃。梅毒は大型冷蔵庫くらいの大きさがある。重さは100キロ超。体当たりや押しつぶし、噛みつきなどいろんなことをしてくる。
知能がない害悪生物。どんな攻撃をしてくるかなんて予想がつかない。繭様は紬様を大事に抱えながら梅毒を睨みつける。
「こんなやつ、こんなやつ……」
険しい表所で左手を梅毒に向ける。
だけど……
「っ」
すぐに左手を下げてしまう。
紬様には敵を攻撃する手段がないのだ。紬様が習得した魔法は呪術魔法。対象から毒や魔力を吸い取る魔法。梅毒に使えば毒まで吸い取ってしまうだろう。
だけどそれだけじゃない
「はぁ、はぁ……ううっ、ぐっ」
梅毒の毒があまりにも大きい。立っているのも難しそうに見える。
「繭様、がんばって下さい。すぐに日葵様が来ますから」
「誰が、あんなのに、頼るもんか。お姉ちゃんは、お姉ちゃんだけは私が守るんだから」
ブシャン!!
梅毒の肉体が繭様達に向かう。体当たりだ。大きな体なのに瞬発力がすごい。瞬きしている間に5メートルの距離が一気に縮む。
「きゃっ!」
ドン!!!
紬様を庇いながら繭様が盾になる。
ドカン!!!!!!!!!1
2人は大きく壁に叩きつけられる。壁には大きなひび。攻撃の強大さが伝わる。
「繭様、大丈夫ですか?」
「ううっ、うっ。お姉ちゃん? お姉ちゃんは平気?」
紬様を見ると
「くっ、うっ」
頭から出血をしている。いけない、どこかぶつけている。紬様には魔力がない。不死ではないのに。
早く、早く来てください。日葵様。
………
……
…
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