表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/158

第8話 照れ臭い

「こちらで御座います」


村の中止部分にある唯一の井戸へと俺は案内された。


「領主様……ほ、本当に水を出して頂けるんでしょうか?」


途中、爺さん――村長だった――が家々に声をかけ、井戸の周りに集まった村人達が期待と不安の混じった声でおずおずと尋ねて来る。

彼らは総じてボロボロの肌に、生気のない目をしており、その唇はひび割れていた、


「こ、これ。領主様に失礼ではないか」


「も、申し訳ありません」


村長に注意され、尋ねた村人がその場で膝を突いて頭を下げる。

日本で言う所の土下座だ。


今までの管理者が余程酷かったんだろうな……


その態度から、これまでの管理者が彼らをどう扱っていたのかが察せられる。

ずっと迫害され続きたせいで、領主の行動が信じられない程、彼らは上の人間に不信感を抱いている様だ。


「気にしなくていいさ。安心してくれ。この村に滅びられたら俺も困るし、ちゃんと水は出すさ」


井戸を鑑定するとFのマイナスと表示される。

まあ水が底をついているんだから当りまでだよな。

水のない井戸なんて、只の深い穴でしかないんだから。


20ポイントでAまで出来るな……


水を増やすだけだからか、かなりリーズナブルだ。

この後も色々とランクアップさせないといけないので、少な目で済むなら有難い。

水をケチる訳にはいかないから。


「よし、じゃあ――」


ランクアップをサクッと済ませ、井戸から水を汲み上げる。


「お、おお……」


「水だわ」


「本当に水が……」


その光景に、周囲の村人たちが感嘆の声を上げる。


「さあ、遠慮なく飲んでくれ。いくらでも補充可能だから遠慮する事はない」


「お、桶を持ってきます」


「私も」


汲んだ水をその場で飲む者。

慌てて桶を取りに帰る者。

村人達が水に飢えていた事が良く分かる。


「ありがとうございます領主様」


「ありがとうございます」


村人の心からの感謝の言葉に、照れを隠しつつ俺は笑顔で頷く。

大勢から感謝されるとか、今までの人生に無かったからな。

照れ臭くてしょうがない。


さて、生活用水不足は一応解消した。

だがそれだけでこの村の問題がなくなる訳ではない。

水はあっても食料がないからだ。


……次は食料を何とかしないとな。


森に行った村人達が何か食べられる物を手に入れているかもしれないが、大して期待はできない。

持ち運べる量なんてたかが知れてるからな。

なので他の手が必要となる。


パッと思いつくのは畑の立て直しだ。


畑の作物はほぼ全て枯れている状態――村長談――なので、今更その状態の畑に水をやってもまともな収穫は望めないだろう。


だがランクアップなら。

そう、ランクアップなら畑を復活させられる可能性はあった。


死んだ作物を復活なんて普通のスキルでならあり得ない事だけど、これは神から与えられたスキルな訳だしな。

なのでランクアップでの復活は十分期待できる。


出来なかったらその時はまた別の手を考える必要があるが……


パッと頭に浮かんだのは、村人達をランクアップで強くして死の森で狩りをする事だ。

ただ魔物と余裕で戦えるぐらい強くしようとすると、とんでもない痛みを伴う事になるだろうし、出来ればそれは最後の手段にしたい所である


え?

お前が強くなって無双しろ?


はっはっは。

御冗談を。


……どんなだけくそ痛いと思ってんだよ。


今後は余程の事がない限り、自分をランクアップさせるつもりはない。

拙作をお読みいただきありがとうございます。


『面白い。悪くない』と思われましたら、是非ともブックマークと評価の方をよろしくお願いします。


評価は少し下にスクロールした先にある星マークからになります。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
自作宣伝
天才ですが何か?~異世界に召喚された俺、クラスが勇者じゃないからハズレとして放逐されてしまう~だがやがて彼らは知る事になるだろう。逃がした魚が天に昇る龍であった事に
異世界に召喚されたがハズレクラスだったため異世界に放棄された主人公。本来なら言葉すらも通じない世界に放り出されれば絶望しかない。だが彼は天才だった。これは持ち前の超学習能力で勇者を越える存在へと昇りつめる天才の物語
スキル【幸運】無双~そのシーフ、ユニークスキルを信じて微妙ステータス幸運に一点張りする~
『現代ファンタジー』ユニークスキル【幸運】を覚醒したダンジョン探索者が、幸運頼りに頂上へと昇りつめる物語
ブラック企業務だった前世に懲りて転生先で俺はスローライフを望む~でも何故か隣の家で生まれた幼馴染の勇者が転生チートを見抜いてしまう。え?一緒に魔王を倒そう?マジ勘弁してくれ~
転生先でスローライフしようとしたらお隣さんは勇者で、しかも鑑定でチートクラスを見抜かれてしまう。魔王を一緒に討伐!?冗談じゃねぇ!俺は一市民としてやっていくから放っておいてくれ!!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ