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第7話 水を求めて

「なるほど……」


一日早くって意味の理由を聞かされ、俺は納得する。


爺さんが説明した通り、この村は飲み水すら真面にない状態だ。

そのため、どこかから水を手に入れる必要があった。


――そんな村人達が目をつけたのが、ボロンゴ両南部に広大に広がる死の森と呼ばれる魔物達の住処である。


死の森は魔物達がひしめく森で、この村のすぐ南にあった。

そんな場所で生活していたら危険じゃないのかと思うかもしれないが、魔物は森から出て来る事はないため、村での生活が脅かされる様な心配はないので全く問題ない。


――だが一歩踏み入れば、そこは生きて出て来る事が難しい魔境だ。


そして村の若い男達は、そんな場所に水や食料を求め分け入ってしまった。

生き残るために。


こういうのを死中に活を求めるというだろうか?

まあちょっと違うか。


兎に角、この日照りの中でも青々と葉を茂らせる死の森の樹木を見た村人達は、きっと水源があると判断して乗り込んだのだ。

そしてそれが昨日の話である。


確かに、俺が来るのが後一日早かったらそんな危険な真似はしなくても良かったよな……


だからって、昨日作業もせずこの村に向かうなんて選択肢俺にははなかったからな。

ただただタイミングが悪かったとしか言いようがない。


「それで爺さんは、ここで帰りを待ってたって訳か」


皆の生還を信じて。


「はい。そうなります。死の森に勝手に入ってしまい、申し訳ありませんでした」


「ふむ……」


爺さん死の森に勝手に入った事を俺に謝って来た。

恐らくだが、前任者が禁じていたのだろう。

森への出入りを。


まあ入ったら高確率で死ぬ場所に行く事を禁じるのは、当然っちゃ当然か。


爺さんが最初口籠ったのも、勝手に死の森に入った事を咎められると思ったからに違いない。


「それは気にしなくていい。村の生き死にがかかってた訳だからな」


危険な森に入る決断を下さざる得ない状況で、それを禁じたらもう死ねと言ってる様なもんだからな。

流石にそれで相手を責めるのは酷という物だ。


「ありがとうございます……」


「森に行ったのは何人なのか聞かせてくれ」


「は、はい。森に向かったのは19人で御座います」


「19人……」


爺さんから19人と聞かされ、俺は渋い顔をする。

俺の腕輪には、村人の位置を特定する機能があった――村から逃走させないため。

それは念じるだけで動くタイプで、今確認してみたら……


村の外にある住人の反応は15人分しかなかった。


死人には反応しないので、4人は死んでいる事になる。

腕輪が故障しているとかでもない限り。

まあその可能性は低いだろうが。


「どうか……されたのですか……」


俺の表情を見た爺さんが、恐る恐る聞いて来る。

腕輪の機能も知ってるだろうし、まあそりゃ察するよな。


果てしなく言いにくいんだが、黙っていたって直ぐに分かる事である。

俺は重い気分で口を開いた。


「どうやら4人亡くなってるみたいだ」


「そう……ですか……」


爺さんが俺の言葉に俯き、歯を食いしばる。

危険な森に行く以上、覚悟をしてはいたんだろうが、それでも辛い物は辛い物だ。


「ただ……残りの15人はもう森から出てこっちに向かってるみたいだから、それ以上の犠牲はないと思う」


15人の反応は、既に森から出ている位置だった。

なのでもうこれ以上、犠牲が出る事はないだろう。

まあこれを朗報って言うには若干あれだが。


それに生きてはいても、大怪我を負っていたりする可能性もあるしな。


「爺さん、落ち込んでいるところ悪いけど……村の中を、いや、井戸なんかの水源に俺を案内してくれないか?」


15人に関しては帰還中だ。

彼らに関しては、俺に今すぐ出来る事はない。

なら、領主として今できる事をしていこうと思う。


とり急いで行うのは、まあ給水だ。


喉が渇いてるのは爺さんだけじゃないだろうからな。

拙作をお読みいただきありがとうございます。


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最強執事の恩返し~転生先の異世界で魔王を倒し。さらに魔界で大魔王を倒して100年ぶりに異世界に戻ってきたら世話になっていた侯爵家が没落していました。お世話になった家なので復興させたいと思います~
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