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素行不良で僻地に追いやられた第4王子、自分が転生者だった事を思い出す~神様から貰ったランクアップで楽々領地経営~  作者: まんじ(榊与一)


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第73話 セルフ・バーニング

エクスが所属していたマッチョメンとの面通しはあっさり終わる。


『こんな奴を雇ったら、男爵家の格が下がってしまいますよ』


といった煽りによる、余計な揉め事が起きる事はなく。

実際は――


「エクス。騎士になったんだな、おめでとう」


「ありがとう。死の森は危険な場所だから気を付けてくれ。まあ、君達ならそれぐらい理解してるだろうが」


と言った穏やかな感じだった。

どうやら怨恨が残る様な形で揉めて、追い出されたって訳ではない様だ。


因みにマッチョメンは、ムキムキのむさくるしい男だけで構成されたパーティーである。

ま、その中にムッキムキとは言え、オカマはそぐわないから出て行って貰ったって感じなんだろう。


その後もギルド長やブンブンと町についての話をした後、俺は屋敷に戻ってきた。


「お、終わったのか?」


屋敷の池の前にタゴルがいたので声をかける。


「まあ一応は……」


実はタゴルはこの数日間、ある特殊な訓練を積んでいた。


ギルドによる調査が終わったら、タゴルとエクスの二人は死の森に魔物狩りに行く予定となっている。

ポイント稼ぎと、タゴルの実践訓練を兼ねて。


だが今のままの実力だと、タゴルはエクスの足を引っ張りかねない。

だから少しでも力を付けるため、特殊な訓練を行っていたのだ。


――訓練で求めた物。


――それはアリン抜きでタゴルのスキル、シスターガーディアンの発動だ。


シスターガーディアンは妹を守る際、力を発揮するスキルである。

裏を返せば、妹がいなければ何の意味もないスキルと言えるだろう。


だからアリン抜きでこれを発動するすべはないと、俺は思っていたのだが……


ナタンは言った。

発動条件は外部要因ではなく、内部——精神的な問題だと。

そしてその部分をコントロールすれば、任意で発動する事も可能であると。


例えば、アリンそっくりな女の子を用意するとしよう。

その子が遠くで魔物に襲われてる場面をタゴルが目にした場合、たとえそれが偽物でもシスターガーディアンは発動する。


何故ならこのスキルは、妹を守ろうとするタゴルの意思に反応するためだ。


だからスキルの発動には、実際にアリンが危機に晒されているかどうかは問題ではなく。

もうなんなら、側にいる必要すらもないという訳である。


で、どうやってアリンなしで任意で発動させるのかと言うと……


――それは妄想である。


妹が危ない!

という強い妄想を持ってスキルを発動させるのだ。


で、タゴルはここ数日、そのための訓練を集中的に行っていた。

カッパーの作った池の中で。


精神の強化には、肉体の感覚は邪魔だそうだ――ナタン曰く。

まあ精神強化と妄想強化が一緒かどうかは果てしなく怪しい気もするが、とりあえず、肉体の感覚がない場所での長時間の連続した修練がもっとも精神力を向上させる。


それがカッパーの作った池と何の繋がりがあるのか?


水の特大精霊であるカッパーは、水の性質を自在に操る事が出来た。

なのでその能力を使い、水中で呼吸や栄養を皮膚から吸収出来るようにしつつ、肉体をマヒさせる効果のある水に変えて貰っていたのだ。

彼女の池の中を。


こうする事で肉体の感覚を失いつつ、連続して精神を効率良く鍛える事が出来た。

という訳である。

タゴルの指導の下。


「はー、ダルダるです。もう二度とこういった面倒くさい仕事は私に振らないで下さいね。フォカパッチョ」


因みに他の水場ではなくカッパーの池で行ったのは「離れた場所だと行ったり来たりしないといけないんで面倒くさいです」と言う言葉を受けての物だ。

要は彼女の物臭が理由である。


『タゴルよ。神に訓練の成果をお見せするのだ』


「え?今やるのかよ?」


『当然であろう。神よ、ぜひタゴルの成果をご覧ください』


「まあそうだな。出来たら見せてもらいたい」


ナタンが自信を持って勧めている時点で、確認する必要はない。

が、まあ一応な。

人目があったら出来ないとかだと、実践では使えないし。


「わかったよ……ふぅ……」


タゴルが息を大きく吸い、目を瞑る。

そして息を大きく吐き出すと同時に、カッと大きくその目を見開いた。


「うぉ……」


俺は戦いにおいてド素人で、全く何も分かっていないレベルである。

だがそんな俺にも分かった。

タゴルから放たれる、まるで刺すような殺気が。


「妹は……俺が守る!!」


彼の目は真っ赤に充血しており、その本気度が伝わって来る。

とんでもない妄想力である。


「あらあら、凄い殺気ねぇ」


「これなら問題なく発動していそうですな」


「マイロード。前を失礼します」


ジャガリックが風避けならぬ殺気避けになってくれる。

彼は本当に気の利く男だ。

これが最初にじゃがじゃが言ってたイモと同一人物なのだから、精霊とは本当に不思議な存在である。


カッパーは見た目以外一ミリも変化していないが。


「カンカンぶっ殺すぞぉ!」


タゴルが空に向かって吠えた。


「……」


何故にカンカン?

いったいコイツは何を妄想しているんだ?


『神よ。怒りを(たぎ)らせるには、分かりやすい脅威が必要でした。それも相手が危険であれば危険である程、都合がよくあります。ですので、仮想敵としてカンカンを利用させて頂いております』


「あー、うん。そうなんだ」


まあ確かにタゴルからすれば、今最も身近な悪い虫な訳だからな。

カンカンは。


アリンを虎視眈々と狙うだけではなく、絶賛人間として成長中なのも大きなポイントだろう。


「まあそれはいいんだけど……現実と妄想を混同して、間違ってカンカンを殺したりしないよな?」


いくら生き返らせる事が出来るっつっても、ポイントを無駄に消費する事になってしまう。


でぇじょうぶだ。

ランクアップで生き返るとか、某戦闘民族みたいな思想はお断りだぞ。

いちいちくだらない事で消費したくないし。


『ご安心を。タゴルの努力によって奴の妄想はスキルにまで昇華されております。ですので、現実と妄想を完全に混同する事はないかと』


「スキル化!?」


技を極めた達人の技術が、スキル化すると言う話は俺も聞いた事はある。

タゴルの妄想はその域にまで至っていると言うのか?


俺は鑑定を発動させ、彼のスキルを確認する。


スキル:【セルフ・シスコンバーニング】


「うわ、本当にスキル化してる」


効果は――


自身の意思で妹の危機を脳内で具現化し、シスターガーディアンを発動させる。

となっていた。

後、妄想で現実に弊害が出る場合はブレーキがかかるとも記されている。


なるほど、これなら確かに本物のカンカンに切りかかる様な心配はないだろう。


「うおおおぉぉぉぉ!アリンは俺が守る!!」


まあとりあえず。

新たなる戦力、妄想戦士タゴル(バーサーカー)爆誕である。

拙作をお読みいただきありがとうございます。


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