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素行不良で僻地に追いやられた第4王子、自分が転生者だった事を思い出す~神様から貰ったランクアップで楽々領地経営~  作者: まんじ(榊与一)


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第51話 食料

「1,000……と」


日課にしている弓の訓練。

魔力矢打ち1,000発。

それを終える。


『随分と良くなってきましたよ、アリン』


「へへ」


武器として見た場合、弓には欠点が二つあった。

それは接近戦に弱い点と、矢の数しか手数がない所である。


その欠点を補う訓練を、私は聖弓ユミルの指導の下おこなっていた。


近接戦対策は、弓体術っていう弓を盾や棒に見立てた戦闘術を。

そして矢切れ対策には魔力を矢にして飛ばす訓練を。


この二つをきっちり収めれば、きっと私はもっと強くなれるはずである。


因みに、魔力の矢の精製には結構な魔力が必要になるので、魔力はエドワード様にランクアップして増やして貰っている。


え?

強くなってどうするのか?


もちろん、エドワード様の護衛をするためよ。

今は半分カンカンの世話係みたいな感じになっちゃってるけど、私もれっきとした護衛な訳だからね。

村を救ってくれたるエドワード様への恩返しのために強くならないと。


あと、ジャガリックさんからもできる限り強くなって欲しいって言われてるし。


「さて、じゃあカンカンの様子でも見に行こう」


訓練を終えた私は、カンカンの元へ向かう。


彼は今、村で飼っている家畜の世話係をやっている。

掃除や食事、飲み水の交換なんかは結構重労働なんだけど、エドワード様に強くしてもらったおかげもあってか、カンカンは文句ひとつ言わず仕事を頑張っていた。


「頑張ってるね」


汗だくになって働いているカンカンに声をかける。


「あ、アリン。訓練は終わったの?」


「うん、手伝うよ」


「ありがとう」


カンカンの仕事を手伝い、一区切りついた所で二人で柵に寄りかかって座る。


「ふー、もう仕事には慣れた?」


「うん。最初はきつかったけど、慣れちゃえばこっちのもんさ」


カンカンが泥のついた顔で笑う。

その顔から、もう以前の彼とは違うのがはっきりと伝わって来る。


……絶食期間もあって、だいぶんスリムにもなったしね。


「あ、腕に痣が出来てるよ!大丈夫?」


「ああ、これ?訓練のときにちょっとね……まあ全然平気だよ、これくらい」


カンカンは仕事が終わった後、村の大人に頼んで槍の訓練を受けていた。


「そういや気になってたんだけど……どうしてカンカンは槍の使い方なんて覚えようと思ったの?」


「えーっと、それは……」


カンカンが私を真っすぐ見る。

そしてふいと視線をそらしてから言葉を続けた。


「夢を叶えて……その上で生き延びるため……かな」


「夢を叶えて生き延びるため?」


正直、カンカンが何を言っているのかが分からなかった。

夢はたぶんオルブス商会を継ぐ事なんだろうけど、商会主になるのに槍の使い方なんて覚える必要はないはず。

カンカンのお父さんとか、戦える感じに全く見えなかったし。


生き延びるって事だけ考えるなら、村での生活なんだろうけど……


村で生活するだけなら、命の心配はない。

以前はまあ確かに結構あったけど、今はエドワード様がいるからね。

少なくとも飢えや病気、寒さで簡単に死ぬ心配はないくなっている。


それに、最悪死んでも生き返らせて貰えるし……


まあ蘇生の話は禁止されてるから、死んでも生き返られるってのはカンカンは知らないんだけども。


まあでも、そもそもそれ以前の話か。

生き延びる事と、槍には全く関連性がない気がするし。

うーん、謎だ。


「うん、僕が生き延びるには絶対強くなる必要がるんだ。少なくとも、アリンのお兄さんよりも強く……」


「お兄ちゃんよりも?」


お兄ちゃんは滅茶苦茶強い。

しかも今は鉈のナタンさんから戦い方を習ってて、凄い速度で強くなっていってるってジャガリックさんが褒めてる程だ。


だから正直、カンカンがお兄ちゃんより強くなるのは……


いやまあ、傷つけるだけになると思うからそういう事は言わないけども。


「そ、そう。頑張ってね」


「ははは。アリンは顔に出るから分かりやすいね」


口にはしなくとも、どうやら顔に出てしまっていた様だ。


「ちゅちゅー」


カンカンと話していると、村で飼っているチューペットが一匹寄ってきた。


チューペットは膝ぐらいまである大型の齧歯類——ネズミ――で、基本なんでも食べて多産で成長が速く、肉にミルクと、貧しい村の食を支えてくれる存在だ。

日照りの水不足で全滅しているけど、男爵様がオルブス商会に頼んでまた仕入れてくれている。


因みに肉はバラックボアと同じレベルで、ミルクは癖のある風味があるから若干好みが分かれる感じかな。


「はは、どうした」


カンカンが優し気な笑顔で、寄ってきたチューペットの頭を撫でる。


微笑ましい光景って言いたい所なんだけど、正直、あまり親しく接するのは好ましくないかな。

だって、いつかは殺して食べなくっちゃいけない相手だから。

その辺りの線引きをきちんしてないと、後々きっとカンカンは辛い思いをする事になるだろう。


私も子供のころ、そうだったし……


頭の中ではわかってはいても、実際に別れがやってくると本当に辛いんだよねぇ。


「カンカン……」


「ん?どうかしら?」


「ええっと……いやまあ何と言うか……」


楽しげに撫でてるカンカンに『その子は食べ物だからそういう目で見なさい』とは、なかなか言えないわ。


「ううん、何でもない」


村長に言って別の仕事に変えてもらった方がいいかなぁ。

いやでも、つらい現実から目を背けるのって成長の妨げになっちゃうだろうし……今の前に進もうと頑張ってるカンカンには、敢えてこのままの方がいいのかな。


うーん……よし!

とりあえず、一旦エドワード様に相談してみようっと。

拙作をお読みいただきありがとうございます。


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