表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

36/158

第35話 理不尽だ

「あら、綺麗」


「おお、これが欲しかったんだ」


村に着いて早速物資を運び込む。

買い出しの大半は冬を越すための保存用の食料や塩などの香辛料、それに布や金属なんかの服を縫製したり農具を手作りするための素材類だ。


貧しい村なので、身の回りのものは基本手作りだからな。


金が入ったんだから贅沢させろ?

金があるからってあるだけ使ってたらきりないだろ?


別に村事態の収支が爆上がりした訳じゃないんだから、質素倹約は続けて行って貰わないと困る。


因みに家畜類は一切乗っていない。

流石に、町に行っていきなり買い揃えられるような物じゃないからな。

なので家畜はオルブス商会に頼んで、後々村に搬入して貰う手筈となっていた。


「お、俺……これからどうなってしまうんだ……」


村人総出で運び出したので、6台あった馬車はあっという間にカラになる。

空になった荷馬車の一台を覗くと、その隅で膝を抱えて丸まっているカンカンの姿があった。


「ふむ……とりあえず取って食う訳じゃないから、震えてないで出て来い」


怯えているカンカンに声をかける。

単に普通に働かせるだけで、別に彼に酷い事などするつもりはない。


まあやりたい放題やってたぼんぼんにとっては、肉体労働は苦痛以外の何物でもないのだろうが、そんな事は流石に俺の知った事ではないからな。


「うういやだぁ……家に帰りたい……」


が、カンカンはブルブル震えてべそをかくばかりで、荷馬車から出てこようとしない。

見事な現実逃避っぷりである。


これが死刑囚とかなら俺も少しは同情していたのだろうが、コイツのやってる事は要は『働きたくないでござる!』だからな。

同情する訳もない。


なので馬車から引きずり降ろさせてもらう。

いつまでもこいつが乗ったままだと、片付けられないし。


「タゴル。彼を引きずり出してくれ」


ちょうど傍にいたタゴルに頼んだら、彼はあからさまに不機嫌そうな顔をする。

信頼度は絶賛低空飛行続行中だ。

果たして彼がデレる日はやってくるのだろうか?


「おい、降りろ」


「ひぃぃぃぃ……」


タゴルが荷馬車に上がり、片手で軽々と、80キロぐらいはありそうなカンカンの首根っこを掴んで持ち上げた。

とんでもない怪力だ。

流石筋力Aランクである。


「ちょっとお兄ちゃん!そんな乱暴に扱ったら可哀そうでしょ!」


「俺はこういう根性なしが一番嫌いなんだよ」


タゴルは根性第一主義の様だ。

まあ以前のこの村は、根性出していかなきゃ生きていけない様な環境だったから、そうなるのも頷けはするが。


「ふぎゃ!?」


タゴルに放り捨てられたカンカンが、顔面から地面に着地する。


「ぐっ……うぅ………」


「ああもう!大丈夫?」



その場ですすり泣きだすカンカンにアリンが駆け寄り、タゴルを強く睨みつける。


仏頂面で妹以外の他人に厳しい兄に。

いつも笑顔で誰にでも優しく接する妹。


ほんっと、兄妹なのに性格が両極端である。


「ううぅぅぅぅ」


「ほらほら泣かないで、男の子でしょ」


「……」


アリンに睨みつけられたタゴルが、彼女の視線が外れた瞬間、何故か俺を睨みつけて来た。


まさか俺のせいで妹に怒られたとでも言いたいのだろうか?


信頼度を確認すると、見事に3%にまで下がっていた。

完全に初期値割れである。


「世の中理不尽だらけだ……」


カンカン照りの空を見上げ、俺はやるせなさにそう呟いた。

拙作をお読みいただきありがとうございます。


『面白い。悪くない』と思われましたら、是非ともブックマークと評価の方をよろしくお願いします。


評価は少し下にスクロールした先にある星マークからになります。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
自作宣伝
最強執事の恩返し~転生先の異世界で魔王を倒し。さらに魔界で大魔王を倒して100年ぶりに異世界に戻ってきたら世話になっていた侯爵家が没落していました。お世話になった家なので復興させたいと思います~
大魔王を倒して100年ぶりに戻ってきた勇者が、没落した侯爵家を執事として再興させるお話になります
スキル【幸運】無双~そのシーフ、ユニークスキルを信じて微妙ステータス幸運に一点張りする~
『現代ファンタジー』ユニークスキル【幸運】を覚醒したダンジョン探索者が、幸運頼りに頂上へと昇りつめる物語
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ