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第33話 悪徳貴族

槍を売った俺達は、買い出しは明日に回して宿へと向かう。

後回しにしたのは、オルブス商会から何をどれぐらい引き出せるかある程度把握出来てから物資を買いこむつもりだからだ。


まあどの程度引き出せるかは、そこはジャガリックの交渉能力次第だろう。


「最上級ルームに、一般ルーム3つでございますね。かしこまりました」


宿泊する宿は、この町一番と言われている高級店だ。

はっきり言って無駄遣い以外の何物でもないが、オルブス商会と交渉のためにもこれは必要な事だったりする。


……なにせ、こっちは居場所を相手に伝えていない訳だからな。


カンカンのおつきの人間達は、宿泊場所を教えずに追い払っている。

その時点で宿は決まっていなかったので、伝え様がなかったからな。


じゃあこちらの居場所は分からないんじゃないか?


そこで高級宿屋への宿泊である。


彼らは、此方が領外から来た貴族だと知っている訳だからな。

貴族なら高級店に泊まると判断出来るはずである。

流石に、領一を名乗る商会の人間がその事に思い至らないって事はないだろうから。


因みに部屋割りは、最上級ルームが俺とジャガリック。

ジャガリックは俺のお世話番として、同室する感じだな。


で、一般ルームの一つはカッパーとアリンの女性組で。

残り二部屋は、タゴル達6人が半々に分かれて使う。


「早いな」


チェックして、魔法仕掛けのシャワーを浴びて着替えた所で、宿の人間がオルブス商会の人間が会いたがっていると伝えてきた。

まだ2時間程しかたっていないのに、驚きの速さである。


「一人息子が余程大事なのでしょうな」


搾り取ってやるオーラが目に見えそうな程の、ジャガリックの満面の笑顔。

人質が大事にされていればいる程、その価値は高まるからな。


「初めまして、オルブス商会主のブンブンと申します。スパム男爵様」


許可を出し、部屋にオルブス商会の人間を部屋へと招き入れた。

入ってきた商会主のブンブンが膝をつき、丁寧に挨拶してくる。

息子と違って、こいつはちゃんと礼儀を弁えている様だ。


息子にもちゃんと教えとけよとは思うが、もしそうだったら今回のラッキーチャンスに繋がらなかったので、まあある意味グッジョブと言えるだろう。


父親のブンブンはカンカンを一回り大きくしたような見た目で、分かりやすく言うというとデブである。


「この度は、我が愚息が男爵様に大変失礼を働いてしまった様で……なんとお詫びをすればよいか」


「お詫びは結構です。彼は領に連れ帰り、処刑する予定ですので」


「しょ、しょしょしょしょ処刑ですと!?」


ジャガリックの、息子を処刑するという言葉にブンブンがぎょっと目を見開く。


一般的に、少し位貴族に無礼を働いたからと言って処刑まで行く様な事はまずない。

その権利を貴族は有してはいるが、それをしてしまうと悪徳領主や暴君として領内から人が逃げ出してしまう上に、悪い噂が広まってしまうからだ。


貴族は見栄や名誉を重んじる。

なので余程の理由がなければ、処刑にまで至る事はない。


――が、スパム男爵家(うち)では話が違ってくる。


そもそも王家を追い出された出来損ないの俺に、今更名誉もくそもない。

そして暴君と恐れられ様が、領民は準奴隷なので減る心配もない。

更にこのボルモク領の子爵とも面識はないので、オルブス商会がそこと懇意にしてたとしても顔を立ててやる必要もなかった。


つまり完全なノーダメージだ。


ま、あくまでも表面上の話ではあるけど。

暴君なんてレッテルを張られたら、人口を増やし辛くなってしょうがないからな。

別に領地を大きく発展させる気まではないが、1,000人達成のクエストぐらいはこなしときたいってのが本音である。


なので、処刑ってのはもちろんブラフだ。

まあ相手には知りようも無い事だろうが。


……そもそもこっちはお金を引き出したいのであって、あの子ブタを処刑しても何の旨味もないし。


「ですので、御子息の件だけでしたらお引き取りを」


「おおおおおお!お待ちを!!」


ジャガリックに冷たく追い出されそうになり、ブンブンが慌てて待ったをかける。


「息子は本当は礼儀正しくいい子なのです!今回は若輩の身故、つい失態を犯してしまったに違いありません!若さゆえの過ちと、どうか寛大な処置をお願いたします!」


「本来がどうかなど、こちらにとってはどうでもいい事。こちらが男爵家と名乗った際の無礼だけならともかく、紋章を提示して証明した後の侮辱は若気の至りの域を遥かに超えております。到底許す事は出来ませぬ」


「そ、そこをなんとか!そ、そうだ!お詫びの品をお持ちしたのです!!どうぞお納めください!!」


懇願が通用しないと判断し、ブンブンは持参した貢物を俺達に差し出して来る。

ジャガリックが彼の使用人から小箱を受け取り、中身を改め顔をしかめた。


「随分と、御子息の命は安い様で。それとも……我がスパム男爵家への贈り物はこの程度で十分とでも言いたいのですかな?」


俺の位置からでは中身は見えないが、息子の解放のために貴族に送る物である。

そこそこ良い物が入っていたんだろうとは思うが、だが所詮は死刑宣告される前の品だ。

当然そんな物で、ジャガリックが首を縦に振る訳もない。


「もちろんこれだけでは御座いません!我がオルブス商会は領内一を自負しております!もし息子を許していただけるのなら、スパム男爵様にご満足頂けるだけの贈り物をご用意する事をお約束いたします!」


ジャガリックが、どうしましょう的な感じで俺の方を見た。


「ふむ……内容次第だな。お前の息子を生かすかどうかは」


俺は大きな椅子に座って足を組み、その組んでいる足に肘をついて頬杖をついた姿勢でそう告げる。


なんでそんな行儀の悪い恰好をしてるのかだって?


もちろん、悪徳貴族っぽさをアピールするためだ。

品行方正っぽいのより、明らかに好き放題やってるやつの方が本当に処刑しそうに見えるだろ?


つまりそういう事である。

拙作をお読みいただきありがとうございます。


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