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第20話 使徒

「が……あああああぁっぁぁぁぁぁ!!」


ランクアップさせた瞬間、タゴルが絶叫とともに地面に転がった。

さらにその体からは、水蒸気が激しく立ち昇る。


――明らかな異常事態。


「おにいちゃん!」


やっべ、大丈夫かこれ?


雄叫びを挙げながら地面を狂った様に転がるタゴル。

肉体から水分が失われていっているためか、皮膚がパサパサになっていくのが傍目からも一目瞭然だった。


その様子を目の当たりにし、その場の感情で軽率な判断を下した事を俺は早々に後悔する。

命がかかっているのだから、もっと堅実に行くべきだったと。


「このままだと脱水で死にかねませんね、この脳筋さんは。仕方ない。助けてあげましょう。アクアケアス!」


カッパーがタゴルに魔法をかける。

すると水の膜のような物が彼の体を覆い、肉体から立ち昇る水蒸気が止まった。


魔法を受けて、苦しみ方がほんの僅かにましになった様には見えるが……


「だ、大丈夫なのか?」


「体の急激な変化に伴う熱で水分が抜け出てたのを止めました。まあ死ぬ事はないでしょう……たぶん」


最後のたぶんが少々気にはなるが、とにかく、カッパーが危険な状態を対処してくれたのはありがたい。

ここでタゴルが死んでたら、本当にシャレにならない状態だった。


「があああああ……俺は……俺は……」


雄叫びをあげ苦しんでいたタゴルが、体をびくびくと痙攣させながらも立ち上がってくる。


すごい根性だ。

俺では絶対まねできそうにない。


「負けねぇ!!!」


そして鼓膜が破けそうな声量で咆哮した。


――その瞬間、俺の中でクエストが生成される。


何のクエストだ?


「お兄ちゃん!」


咆哮を放ったタゴルの体が崩れ落ち、それを咄嗟に妹のアリンが支える。


「安心しろ……お前は俺が絶対守ってやるからよ」


「ばか……自分の身ぐらい自分で守れるわよ」


タゴルはフラフラの状態だったが、普通に妹と会話できてる当たり、休憩さえさせれば大丈夫そうには見える。


……まあその休憩時間がもう二時間もない訳だが。


全快とはいかないまでも、ある程度回復してもらわないと困る事になる。


「なあカッパー。体力とかを回復する魔法はないか?」


「そんな便利な魔法はありません」


「ないかぁ」


「ですがまあ大精霊としての力を使えば、多少は回復させる事は出来なくもないです。でも……すごく疲れるんですよねぇ。ええ、それはもう凄く」


「……何が言いたいんだ?」


「実は私の精霊仲間達にランクアップした事を自慢しましたら、その子達凄く羨ましがってて……で、ポイントに余裕がある時でいいんで、その子達をランクアップさせてあげて欲しいんですよ。その子達もちゃんとお礼をするって言ってるんで。どうかお願いします」


「まあそれぐらいなら……」


精霊のランクアップは高くつくが、カッパーの様な精霊の力を借りれるようになるのなら悪くはない。

まあ今はそんなポイントはないが、余裕が出来たらって話しだからな。


「じゃあ回復させますね」


カッパーの右手から、人間をすっぽり覆えそうなサイズの水の塊が出てきた。

それが素早くタゴルの体にまとわりつく。


「な、なんだ……」


「ちょ、なにこれ!?」


「それはタゴルを回復させるものだから、心配しなくていい」


自ら逃れようとしていたタゴルだが、俺の説明でおとなしくなる。


村人のランクアップは終わったので、次は武器のランクアップだな。

あ、そういやクエストが新しく出て来てたな。

なんで急に増えたのかはわからないけど、まずはそっちを確認してみようか。


永続クエストを確認すると――


『使徒を獲得せよ!』


自らの使徒を獲得せよ。

1/1。

クリア済み。

報酬1万ポイント。


『使徒を増やせ!』


使徒を増やそう。

一人につき5千ポイント。


『使徒との信頼を築け!』


タゴル(信頼度5%)


100%時、報酬10万ポイント。


――三つ増えていた。


しかも一つはすでにクリア済みだ。


「……」


……使徒ってなんだ?


俺の知識では、神様の召し抱える従順で敬虔な下僕が使徒って言葉のイメージである。

だが当然だが、俺は神ではない。

なので使徒など召し抱えられるはずもないのだが……


クエストの概要を見る限り、タゴルが俺の使徒になってるって事だよな?


彼を使徒になれと勧誘した覚えはない。

そんな意味不明な事する訳ないし。

一応領主なので、彼は下僕の範疇と言えなくもないが、それだと村人全員が入っていないとおかしい。


だいたい信頼度5%って……


まったく信頼されていない。

この状態で、使徒なんてものは成立するものなのだろうか?


訳が分からんな……


本当にタゴルが俺の使徒とやらになっているのなら、ステータスに何らかの変化があるかもしれない。

そう思い、彼を鑑定する。


「タゴルにギフトが……」


タゴルの能力を確認すると、先ほど確認した際に見られなかったスキルが生えてきていた。

スキル――つまりギフトは、生まれた時に神から授けられる力だ。

後天的にそれを得るなど聞いた事もない。

もちろん、俺の知識不足で知らないだけという可能性もあるが、あったとしても相当貴重なケースである事は疑いようがないだろう。


因みにタゴルが習得したスキルは【シスター・ガーディアン】なるスキルだ。

名前からしてシスコン臭満載の香ばしい感じのスキルである。


効果はっと……


『妹を守る際、能力全てが上昇する。また、妹が致命の一撃を受ける際、その攻撃を距離に関係なく身代わりに受ける事が可能。エドワード・スパムによって授けられたギフト』


うん、まあ効果は名前通りだ。


妹が絡まないと全く無意味ではあるが、村を守る戦いにはアリンも参加するので、このスキルの存在は大きい。

だからシスコンチックなのでも大歓迎である。


――問題は、スキルにある最後の一文だ。


『エドワード・スパムによって授けられたギフト』


いや俺、タゴルにスキルなんて授けた覚えはないんだが?


そもそも授け方も知らなければ、そんな能力もない。


使徒の件といい。


本当に。


本当に。


何もかも本当に意味不明である。

拙作をお読みいただきありがとうございます。


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最強執事の恩返し~転生先の異世界で魔王を倒し。さらに魔界で大魔王を倒して100年ぶりに異世界に戻ってきたら世話になっていた侯爵家が没落していました。お世話になった家なので復興させたいと思います~
大魔王を倒して100年ぶりに戻ってきた勇者が、没落した侯爵家を執事として再興させるお話になります
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