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第16話 三途の川

「これは領主様。如何なされましたか?」


「村長、悪いけど村の皆を集めてくれ。大至急で。村の存続にかかわる重要な話があるんだ」


「そ、存続ですか……」


「ああ。急いでしなきゃならない重要な話だ」


「わかりました」


村長が家を飛び出し、家々に声をかけて回る。

その間、俺は軒先に腰を下ろして一休みだ。

今日一日、一往復半で15キロも歩いたせいで流石に足が辛い。


体力と筋力のランクを多少上げたとは言え、デブは変わってないからな……


「この程度で疲れるなんて痩せるべきですよ。豚野郎フォカパッチョ


「分かってるよ。後、フォカパッチョは止めろ」


「精霊は嘘が付けません。大精霊なら猶更です」


嘘が付けない事と、豚野郎と罵る事は必ずしもイコールではないんだが?

まあいいか。

言ってもやめそうにないし、頑張って痩せるとしよう。


「全員揃いました」


程なくして村の中央に村人達が集まったので説明を始める。


「皆に重要な話がある。私の能力で分かった事だが、あと三時間程でこの村は魔物に襲われる」


「魔物ですか?ですが領主様、この村は100年以上魔物に襲われる事が無かったのですが……」


「今まで大丈夫だったのに、急に襲われるなんて信じられるかよ」


「そうだよな」


「何かの間違いじゃ……」


村長の言葉に、村人達も口々に同意する。

まあ確かに、100年以上も問題なかった訳だからな。

今になって急に魔物に襲われるとか言われても、はいそうですかと信じられはしないだろう。


「君達が森で倒したバラックボアだ。どうやらこの村まで死体を持ち帰った事で、仲間に臭いを辿られた様だ」


――村人達が生きるためにした足掻きが裏目に出た結果、村は魔物に襲われる。


それを伝えるのは少々心苦しいものがあった。

だがあえてそれをはっきり伝えたのは、自分達のせいでそうなった事を認識させた方が、激痛を伴うランクアップを受け入れさせやすいと思ったからだ。

少なくとも、森に向かった面子に関しては。


まあ最悪強制するつもりではあるが、自発的に受け入れてくれた方が良いからな。


強制した場合、村人の信頼を得るってクエストの達成が困難になるのは目に見えていた。


「それは……本当なのでしょうか?」


「魔物を見れば直ぐにばれる様な嘘は吐かないさ」


襲って来るのは、狩って持ち帰った魔物と同種だ。

別の魔物ならともかく、見れば一目でわかるだろう。


「嘘だろ……」


「俺達が森に入ったせいで……」


「またあんなのと戦えってのかよ……」


村人が騒めく。


「お前ら落ち着け!」


そんな中、体の大きな青年が動揺する村人達を一喝する。


「一度は狩れたんだ。また狩ればいいだけだ。最悪死んでも領主が……様が生き返らせてくれる」


俺に敵意を持っている人物の一人なのだろう。

無理くり敬称を入れたがバレバレである。

まあそんな事はどうでもいいか。


「残念だがアレはそうポンポンできる物じゃない。次に死んだら蘇生させるまでに相当な時間がかかってしまう。それこそ年単位で。だからなるべく死んでほしくはない。何年も死んだままとかいやだろ?」


「そりゃ、まあ……」


「ガキどもの面倒も見てやらねぇと駄目だし……」


年単位は大げさかもしれないが、死なれれば死なれる程無駄なポイントを消費する事になるからな。

なので自爆みたいな物は自重して貰わないと困る。


「けどよ、領主様。確かに何年も死にっぱなしはいやだけど、あれを死人なしで狩れっのは……」


「そうだな。しかも襲撃してくるのは8匹だ。だからそのままだと、死人を出さない所かほぼ全滅間違いなしだろう」


「はははは……八匹!?」


「そんなのどうしようもねぇじゃねぇか!」


「終わった……」


「そんな……」


1匹である事を想定していた村人達は、その数が8匹と聞いて動揺する。

特に、死の森で戦ってその強さを実感している人達の顔は真っ青だ。


まあ普通に考えたら、絶対勝ち目はない訳だからな。

そりゃ血の気も引く。


「安心してくれ。ちゃんと対策は用意してある。でなきゃ……俺とっくに逃げ出してるさ」


俺はわざと軽口を入れる。

村人たちの不安を取り除くために。


危険になるであろうこの場に俺が来ている事こそ、対策に自身がある証拠ってね。


「確かに……」


「どうにもならないんだったら、俺達なんか見捨てられてるよな……」


「静かに。それで領主様。一体どのようにして魔物を撃退されるおつもりなのでしょうか?」


村長が村人を代表して聞いて来る。


「俺の持つ能力には、人の身体能力を強くする効果がある。しかも瞬間的な物じゃなくて、永続的に」


「何とその様なお力が!」


「ああ。その力を使って皆の力を引き上げ、魔物を退ける」


「おお、それなら何とかなるんじゃないか?」


「死んだ人間生き返らせたり力を強くしたりとか、領主様ってすげぇ……」


俺の言葉に、村人達が湧きたつ。

希望を示されたのだから当然だ。


まあ何にも無しで強くなれる訳じゃなく、とんでもないデメリットもついて来る訳だが……まあそれでも死ぬよりマシだろう。


そう思ってその事を説明しようとしたら――


「でも、死んだ方がマシなくらい痛いですよ。私、能力の引き上げで三途の川をほぼほぼ渡り切る直前まで行きましたから」


何故か不自然なぐらい凄く通るカッパーの一言に、沸き立っていた村人達の動きが止まる。


――カッパーに先を越されてしまう。


「本当に、死ぬより辛いですよ。頑張って耐えてくださいね」


いや、馬鹿みたいに辛かったのは君が精霊だったからであって人間はそんなにきつくないから。

無駄に不安を煽る様な事を言うのは止めてくれ。

話が進め辛くなる。

拙作をお読みいただきありがとうございます。


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