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第15話 緊急イベント

「よし!成功!」


カッパーに魔法を教えてもらう事1時間程。

俺は水の基礎魔法を習得する。


習得したのはクリエイトウォーター。

少量の水を生み出す魔法で、喉が渇いた時に喉をうるおせる程度のレベルだ。

水不足は解消したも同然なので、今更こんな魔法を覚えた所で大した意味はないと言えるだろう。


だが問題ない。

重要なのは役に立つ魔法が使えるようになったかどうかではなく、魔法を覚える事なのだから。


そう、その目的は永続クエストの達成である。

これで5,000ポイントゲットだ。


「こんなに早く覚えるなんて、やはり私の教え方が良かったみたいですね」


カッパーが胸を張る。

俺はその主張は否定しない。

実際、彼女の指導があったからこそ短時間で習得出来たのだ。


最初『水の魔法は水中で学んだ方が感覚を掴みやすいから水に浸かれ』と言われた時は何言ってんだこいつ?なんて思った物だが、本当に水に浸かると水魔法習得が捗ってびっくりさせられる。

流石は水の精霊と言わざる得ない。


「カッパーのお陰だよ。ありがとう」


「私、大精霊ですから」


さて、これでポイントに少し余裕が出来た。

万一、誰か一人ぐらい死んでも復活させたやれ……ん?


その時、クエストが追加される。


そしてそれは緊急クエストと表示されていた。


緊急クエストってなんだ?

神様から聞いてないんだが?


疑問に思いながら確認し――


「――っ!?」


――俺はギョッと目を剥く。


何故なら表示されたクエスト名が、『魔物に襲撃される村を救え』だったからだ。


……いや何事だよ。


領地の村は死の森から比較的近い場所にある。

だが森の魔物は基本的に外には出て来ない。

そのため側にあるにもかかわらず、この100年以上村は魔物に襲われた事が無かった。


なのに村が襲撃される?


何かの冗談としか思えないクエスト名だ。

だが神から授かった能力が嘘を伝えて来るとは思えない。

なら、間違いなく村は襲われるのだろう。

魔物によって。


クエストには詳細があったので、それを確認する。


「魔物が敵討ちって……」


本来バラックボアは単独生活をする魔物だ。

だが死の森での生活に適応した結果、同族で結束する様になり、その影響で殺された仲間の仇を討つまでになっていた。


そして今回村人がそのバラックボアを狩ってしまい。

しかもその死体を持ち帰ったため、仲間の死に気付いたボア達がその痕跡を追って村を襲撃する、と。


「なにもしなきゃ全滅確実じゃねぇか……」


――襲撃して来るバラックボアの数は全部で8体。


死の森に遠征した19人は村の中で力のある男ばかりで、そいつらが全員でかかって一体をやっと狩れた――しかもその際4人死んでる――事を考えると、その戦力差は絶望的と言えるだろう。


村には100人以上人がいるけど、大半は女子供老人だから数で何とかってのも期待できないし……


「さっきから何を一人でブツブツ言ってるんですか?」


「実は村が魔物に襲われるみたいなんだ」


「村ですか?」


「ああ、この領地唯一の村だ」


「それはまた……どうされるんです?」


「どうした物か……で、困ってるんだ。カッパーって、バラックボア8匹ぐらい倒したりは出来ないか?」


大精霊を名乗ってるくらいなので、ワンちゃんどうにかならないかものかと尋ねてみるが――


「あ、無理ですね。私は大精霊ですが、なり立てで攻撃用の魔法とかは使えませんから」


――駄目だった。


「はぁ……無理か……」


其のままでは全滅待ったなしなので、村人を退避させるのが常道だろう。

襲撃のタイミングはクエストによって分かっているので、逃がす事は難しくない。


が、それをやるとほぼ積む。


バラックボアは執念深い性格をしており、臭いの当たる辺りに長期間留まってしまうからだ。

なので短くても1から2か月で、最悪半年ほど村近辺に居座る事となる――緊急クエストの詳細に載っている。


その間、村人はどうやって生活するのか?

他の生活拠点や、保護施設なんて物は当然ない。


まあ仮にその間は何とか生き延びられたとしよう。

その後にも当然大きな問題があった。


畑の収穫時期は完全に逃す事になる。

なので戻ってからの立て直しは絶望的だ。


……食う物がない村人達の大半、いやそれどころか、殆どが貯えのない冬を越えられず命を落とす事になるだろうな。


なので村を守るには、魔物を撃退するしかないのだ。


「ランクアップさせるしかないか……」


他所から戦力を持って来るのは不可能だ。

こんな捨てられたに等しい領地に、救いの手を伸ばしてくれる貴族はいないだろう。

なら自分達の手で守るしかない。


だが当然、今の俺や村人には魔物を撃退する力はない。


そうなると、必然的に浮かび上がってくるのがランクアップによる強化だ。

村人達を強化して、魔物と戦えるようになってもらうしかないだろう。


あんまりやりたくはない手だけど、背に腹は代えられないよな……


ランクアップには激痛が付き纏う。

呪いによって拒否権のない村人にそれを施すのは死ぬ程気が進まないが、それでも死んでしまうよりかはマシだろう。

この際、村人達には頑張って耐えて貰おう。


え?

自分はランクアップしないのか?


もちろん自分にも施すよ。

領主なんだから、村人達に全てを押し付けたりはしないさ。


けど一気に上げたら、下手したら痛みでショック死しかねない。

まあ仮に死なない様になってたとしても、カッパーみたいに暫く動けなくなる可能性がある。


……気付いたら村が滅びてましたとか洒落にならないからな。


なので俺一人だけ爆上げして無双ってのは選択肢からはずし、村人にも戦力として戦って貰うのだ。


「今から村に行くんだけど、カッパーも手伝ってくれないか?」


襲撃は4時間後と表示されている。

ランクアップで行動不能になる時間も考えると、村にはさっさと行かないと。


「魔物の撃退をですか?さっきも言いましたけど、私攻撃とか出来ませんよ」


「回復魔法は使えるだろ。出来ればそれで手伝って欲しいんだ」


瞬間的な回復が出来ないのは残念だが、回復魔法を使える奴がいるか居ないかで全然変わって来る可能性がある。

なので出来れば彼女の力を借りたい所だ。


「まあそうですね……見捨てるのもあれですし、お手伝い致しましょう。ですが、危なくなったら私は逃げさせて貰いますよ。私達精霊は基本死んだりはしませんけど、魔物に襲われて大きなダメージを受けたりしたら力が落ちてしまいますから」


どうやら精霊は不死の様だ。

ただダメージを受けすぎると、力が落ちてしまう様だな。

ゲーム的に言うなら、デスペナルティって奴である。


「ああそれで十分だ。協力してくれ」


俺はカッパーと共に、急いで村へと向かう。

拙作をお読みいただきありがとうございます。


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最強執事の恩返し~転生先の異世界で魔王を倒し。さらに魔界で大魔王を倒して100年ぶりに異世界に戻ってきたら世話になっていた侯爵家が没落していました。お世話になった家なので復興させたいと思います~
大魔王を倒して100年ぶりに戻ってきた勇者が、没落した侯爵家を執事として再興させるお話になります
スキル【幸運】無双~そのシーフ、ユニークスキルを信じて微妙ステータス幸運に一点張りする~
『現代ファンタジー』ユニークスキル【幸運】を覚醒したダンジョン探索者が、幸運頼りに頂上へと昇りつめる物語
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