第155話 参上
デスナイト達の方は、タゴル達がカバーしてくれているお陰で多少の余裕が出来た。
とは言え、2体相手に手間取っていた彼らが、精霊達を守りながら3体を倒し切れるとは思えない。
だから奴を抜いて、皆の元に向かわなければならないという状況に変わりはなかった
しかし――
「くそ……」
付け込む隙が無い。
その妨害を崩す事も。
スピードでは此方が勝っている。
パワーもデスナイトを召喚した影響か、たぶん今はほぼ互角程度だと思う。
だが、けた違いなのだ。
そう、奴の防御力が。
此方の攻撃が当たっても、全く怯みもしない。
それどころか、奴はそれを生かして俺にカウンターを仕掛けてくる始末。
そのせいでこちらだけダメージが蓄積されていく。
それでも、何とかしないと……
「はぁっ!」
ボーンドラゴンに蹴りを入れる。
だがやはり小動もしない。
「がぁっ!」
奴が尻尾で反撃してきたが、俺はそれ後ろに飛んで躱す。
「——っ!?」
――そして着地に失敗した。
攻撃が当たった訳ではない。
足が、着地時の体重を支えられなかったのだ。
疲労によって。
「体力が……」
体が重い。
俺ですらこうなのだから、フェンリル側の負担はもっとだろう。
このままじゃ……
「ギャオオオオオオ!」
その姿をあざ笑うかのように、ボーンドラゴンが吠えた。
勝てない。
抜けない。
このままでは殺される。
そんなネガティブな思考から、こんな事を考えてしまう。
――今ならまだ、俺だけなら逃げられるんじゃないか。
そんな事を。
「最悪だな……」
そんな事を考えてしまう自分に嫌気がさす。
どこまで本当に最低だ。
最低過ぎて、腹が立ってきた。
「ふざっけんな!俺は大事な奴らを見捨てて生き延びるなんて……そんな無様な生き方をするために転生した訳じゃねぇ!俺は逃げねぇ!!」
俺はカッコよく生きれるタイプの人間じゃねぇ。
多少チートがあったって、漫画の主人公みたいに生きれる性格をしていない。
なんだったら、小物のモブがお似合いの性根をしてる。
けど、せっかく転生して二度目の人生を得たんだ。
死んで、生き返って。
その先でまで、そんな生き方して堪るかよ。
例えここで死ぬ事になっても、死に際くらい格好つけてやる!
「フェンリル!俺を輩出しろ!」
だが、それはあくまで俺の覚悟だ。
フェンリルまで巻き込めない。
「お前は逃げろ!その時間ぐらい、稼いでやるから」
フェンリルだけなら逃げ延びれるかもしれない。
だからこいつだけでも逃がして見せる。
この命に代えても。
「ぷぎゃぎゃぎゃぎゃ!(大丈夫だよ!パパ!だって――)」
フェンリルが上を見上げる。
その視線の先には――
「ヘタレの癖に良く言いました!」
――強烈な青い光が。
「あれは……まさか?」
「スーパー!アクア!キーック!!」
青い光が、上空から高速で降って来る。
その光はボーンドラゴンの背骨に激突し、奴の体を地面へと叩きつけた。
「あ、ああ……」
青い光の姿。
それは。
その青い光の正体は――
「真打登場!世界よ!水のプチ精霊王である私の前に平伏せよ!」
「カッパー!」
「ぷぎゃ!(ママ!)」
――死んだはずのカッパーだった。
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