表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

13/158

第12話 ドロップキック

「ふうむ……」


村での食事を終え、俺は糞暑い中屋敷へと向かって一人歩く。


村長は誰かに送らせますとか言ったが、それは断ってある。

ここら辺は死の森の影響か魔物は一切出ないので、危険などないからな。

山賊みたいなのも、貧しすぎていないし。


「ふぅ、しかしあっちいな」


照りつける太陽の日差しはきつく。

このままの天気が続く様なら、井戸や池の水をちょくちょく補充させる必要が出て来る。


「食料の事もあるし、ポイントを集めんとなぁ……」


ログインボーナス(?)は1日10ポイント。

デイリークエストはは100から300ポイント程――今日は10キロ歩くで、現在消化中。

で、永続クエストは10,000ポイント以上って感じである。


それ以外にも魔物を狩ればポイントは手に入る様だが、まあこれは最後の最後の最後の、そのまた最後の手段だ。


魔物を狩れば食料も手に入る?


まあそうだな。

けど問題は、戦闘訓練を受けていない今の俺の能力程度じゃ、真面に魔物は狩れないだろう点だ。


それを可能にするためには、俺自身のランクアップが必要不可欠。

だがあの痛みを進んでは受けたくない。

というのが俺の本音である。


いーや、ほんときついからな。

あれ。

しかもランク上げてったら、更にきつくなると来てる。

マジ勘弁だよ。


だいたい、魔物と戦うのは領主の仕事ではない。

なので魔物を狩るのは最後の最後、本当に困った場合の保険的な物とする。


「となると永続系を熟す必要がある訳だが……」


今あるのは3つ。


一つは【王家に舞い戻れ】だ。

ポイントはなんと驚異の100万ポイント。

これさえ熟せれば一気にポイント問題が解決する。


ま、どう考えても無理な訳だが……


つい先日王家から除名され、もうほぼ死刑に近い形で僻地に男爵として飛ばされた俺にどうやって王家に戻れと?

絵に描いた餅とはまさにこの事である。


二つ目は【領地民1,000人以上】。

今100人ちょっとだから、これをちょちょいと10倍にすればなんと10万ポイントも手に入る。


うん、無理。

こんな貧しい僻地に、誰が好き好んで移り住むってんだ。

これもまた絵に描いた餅。


んで、最後の三つめが【村人の信頼を勝ち取れ!】である。


まあ一番達成しやすいというか、現実的に熟せそうなのはこれだけなんだが……


俺は畑や水問題を解決し。

更に、死の森への遠征で亡くなった村人を救っている。

普通に考えたら『流石領主様!』状態の筈。


――が、このクエストの表示は違う。


村人118人中、俺に感謝し信頼を得ているのは86人だけ。

なので32人は俺の事を信頼していない状態なのだ。

それどころか内10人程は俺の事を敵視、もしくは憎しみを抱いてる状態と出ている――誰がかまでは見れない。


いやなんでだよ!


と言いたい所だが……


「まあでも確かにそうだよなぁ……」


俺のやった事は、滅びかかった村の救済だ。

だが少し考えて盛れば分かるが、何故この村はこんな状況になったのかって話である。


もちろん日照りのせいではあるんだが。

通常、こういう状態なら国からの救済が行われる。

だが、村にはそれが行われていない。


つまり、国に見捨てられた結果、村は極限まで追い込まれのだ。


そして俺は体制側の人間として、男爵として、この領地を治める立場にある。

言ってしまえば、俺は彼らを追い込んだが側の人間という事だ。


そら、何とかしてくれたからって感謝なんてする分けないよな。

本来すべき事を、ギリギリ遅れてやっただけなんだから。

もし俺が村人なら、ふざけんなってブチギレてもおかしくないレベルだ。


更に言うなら、村の始まりは罪人の流刑としての開拓だ。

そしてその子孫である村人はさまざまな制限の元、ほぼ奴隷といっていい様な扱いを受けている。


犯罪を犯した本人達なら自業自得とも言えるが、開拓自体は100年近く前の事。

つまり、あの村にはもう犯罪者として送られた者はいないのだ。

にも拘らず、その血を引いているってだけで冷遇されている。


彼らからすれば、体制側の人間にいい感情を抱く要素など皆無と言っていいだろう。


「そう考えると……俺に感謝して信頼してる86人って、とんでもなくお人好しだよな。もしくは……」


奴隷根性が沁み込んでいるか、だ。

なんとなく、こっちの方が可能性が高い気がする。


「そう考えると不憫極まりないな、ほんと」


村人達の置かれている環境に同情を禁じ得ない。


「三つめも簡単にはいかんよなぁ。なんか簡単なクエストでも追加されないもんだろうか……ん?」


屋敷に辿り着き、門をくぐると一人の少女と目が合う。

透き通るような緑髪に、同じ色の瞳。

そして緑のボディスーツの様な格好をした、美しい顔立ちの少女だ。


「誰だ?」


俺が首を捻ると、少女が此方へと走って来る。


距離にして2メートルぐらいの所だろうか?

不意に少女の体が浮く。


「んあ?」


「死ね!フォカパッチョ!!」


そしてその両足の裏が、俺の顔面に直撃した。

たぶんドロップキック。


「ほげぇ!」


衝撃に吹き飛ばされた俺は――


『ああ、こいつあの河童か』


――そんな事を考えながら意識を失う。

拙作をお読みいただきありがとうございます。


『面白い。悪くない』と思われましたら、是非ともブックマークと評価の方をよろしくお願いします。


評価は少し下にスクロールした先にある星マークからになります。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
自作宣伝
最強執事の恩返し~転生先の異世界で魔王を倒し。さらに魔界で大魔王を倒して100年ぶりに異世界に戻ってきたら世話になっていた侯爵家が没落していました。お世話になった家なので復興させたいと思います~
大魔王を倒して100年ぶりに戻ってきた勇者が、没落した侯爵家を執事として再興させるお話になります
スキル【幸運】無双~そのシーフ、ユニークスキルを信じて微妙ステータス幸運に一点張りする~
『現代ファンタジー』ユニークスキル【幸運】を覚醒したダンジョン探索者が、幸運頼りに頂上へと昇りつめる物語
― 新着の感想 ―
暴力系ヒロイン
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ