第114話 カムバック
『初めまして主君!自分ソウガっていいます!よろしくっす!!』
応接室について早々、例のソウガが誰だか判明する。
『若輩者っすがよろしくお願いしまっす!』
それはカンカンの握っていた黒鉄の槍だった。
「ああ、まあよろしく頼む。カンカンが持ってるって事は……」
「カンカンがソウガに認められたんですよ。凄いでしょ」
一緒にいたアリンが嬉しそうにそう言う。
カンカンにそっち方面の才能がある事は聞いていたので知ってはいたが、まさか槍の魂を目覚めさせるとか、正直びっくりだ。
因みに、よろしく頼むって返した時点でソウガの信頼度が100%になったので、10万ポイントをゲットしている。
うまうま。
「という訳で……私もお兄ちゃんと一緒に、エドワード様の護衛任務に戻りますね。カンカンは流石にもう大丈夫だと思うんで」
聖弓ユミルを持つアリンは、もともとは俺の護衛だ。
が、カンカンが余りにもあれすぎて、今まではその世話を彼女に頼んでいた訳だが……彼がしっかり一人立ちできる状態になった今――村にはだいぶ馴染んでいるし。武器に認められるぐらいなので、もう支えもいらないだろうと思われる――その役目は終えたと言っていいだろう。
が――
「ふむ……」
アリンの背後にいるタゴルに目をやると、猛烈に渋い顔をしていた。
歓迎していないのは一目瞭然だ。
しかし口を挟む様子はない。
元々タゴルは妹が危険な仕事に就く事に反対していた訳だが、嫌そうではあっても、どうやら反対する気まではない様だ。
まあタゴル達と一緒に死の森ツアーとかしない限り、言う程危険でもないからな。
それが分かってるから、反対は我慢したんだろう。
もしくは、俺への信頼度が上がった影響か。
……いやまあ、カンカンから少しでも引き離したいって思ってる説が一番濃厚か。
「そうだな。アリンには護衛の仕事に戻って貰おう」
「頑張ります!」
「あの!」
カンカンが急に声を上げる。
「ん?どうかしたのか?」
「えーっと……出来たら、その……なんと言いますか……お、俺も……そう俺も!エドワード様の護衛にして頂けないでしょうか!」
「俺の護衛か……」
カンカンが何故そんな事を言い出したのかは、まあ分かる。
アリンと少しでも一緒に居たいためだろう。
青春の甘酸っぱい一ページとも言える行動だ。
けどなぁ……
カンカンはオルブス商会に対する人質だ。
まあ今は懇意になってるので人質ってのはあれだが、預かってる御子息に多少とはいえ危険が発生するかもしれない俺の護衛を任せるってのは、正直どうかって話である。
いくらオルブス夫妻が息子の成長を望んでいるとは言え、護衛として成長して欲しいとは考えてないだろうし。
「お願いします!俺、強くなりたいんです!タゴルさんに認められるぐらい!!」
カンカンがそう言って大きく頭を下げる。
その背後では、タゴルが鬼の形相で彼の後頭部を凝視していた。
頭に穴が開きそうな勢いで。
ほんと、愉快な顔芸するな。
タゴルは。
因みに、どれだけ強くなってもタゴルはカンカンを認めないと思う。
何故ならシスコンだから。
まあそんな余計な事を、青春真っ盛りの青年に告げるつもりはないが。
『自分からもお願いするっす!カンカンはまだまだ弱いっすけど、才能だけはあるっす!どうかチャンスを与えてあげて欲しいっす!!』
『我が神よ。才能面では、彼はタゴル以上です。護衛として鍛える価値はあるかと』
『私からもお願いいたします』
エゴ武器全員からのおすすめ。
対して反対派は、鬼の形相のタゴル一人。
三対一。
ポイントで言うなら30万ポイント対0ポイント(まだ貰えてない)。
なら、答えは決まったも同然だよな?
「わかった。その代わり、カンカンの両親に報告してオッケーが出たらだ」
まあ多分、反対はしない様な気がするが、一応許可は取っておかないとな。
後でもめるのも嫌だし。
「あ、ありがとうございます!!」
歓喜するカンカン。
苦虫を噛み潰した様な顔になるタゴル。
正に対照的な様子だ。
ただ少し驚いたのが、タゴルからの信頼度が下がっていない点だ。
以前なら大暴落まったなしだったのに、やはりこれはデレたと言わざるえない。
まあ男のデレなど嬉しくもなんともないが。
ああでも待てよ。
親が反対する事を期待してるから、まだ下がってないだけって可能性もあるな。
油断は禁物だ。
拙作をお読みいただきありがとうございます。
『面白い。悪くない』と思われましたら、是非ともブックマークと評価の方をよろしくお願いします。
評価は少し下にスクロールした先にある星マークからになります。




