表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

62/68

第62話「Rocket《ロケット》」


 結局みんなで相談して、『グリルドサーモンクロワッサン』で落ち着きそうだ。

 みんななかなかセンス良い。


 わいわいと、『ズッキーニじゃなくてアスパラでも合いそう』なんて言葉に単価的にアスパラだと厳しくってだとか、『いくらで売るつもり?』なんて言葉にちょっと高いけど大体これくらい、なんて返していたら凛子ちゃんに手招きされた。


 バックヤードまで呼ばれて行くと、小声の凛子ちゃんに言われちまった。


「ところで店長? カオル先輩とどうなんすか? なんか二人やけに良い感じに見えるんすけど?」

「いや、まぁ、慌てなくても、とは思ってるけど……」


「ダメっす! 慌てなきゃ!」

「そ、そんなこと言ったって――」


 二人できゃいきゃい言ってたら、カオルさんたち三人が何事か話してたのが耳に届いた。


「ところでなんで『ロケット』なんすか?」


「それが店長さん教えてくれないんですよ」

「野々も聞いてたよね。あたしも面接の時に聞いたけど教えてくれなかったのよ」


 ロケットベーカリーの由来について。

 喜多を見習って密かに考えておいたカバーストーリーをお披露目する時が遂に来たか。


 カウンターの天板に手をついて、おほんと(しわぶ)きひとつを挟んで言った。


「その、私は小さい頃、パン屋かロケット乗りになりたかったんだ」


 私のウソ話しにみんなが、へぇー、と驚きの声。

 ふっ、考えといて良かったな、と思ったその時。


 ゆっくりと、からーんころーんとドアベルが鳴り、みんながそちらへ視線をやると……

「喜多お兄さん!」


 野々花さんが言った通り、現れたのは喜多。思ったより早く戻れたんだな。


「ばっか野郎。嘘つくなよゲンちゃん」


 つかつかとカウンターに歩み寄った喜多が、電話の隣りのペン立てから一本のペン――昔流行(はや)ったあのペンを取り出し鋭く言った。


「正解はこれだろうが!」


 ぐっ――こいつ、私が名付けたロケットベーカリーの由来に勘付いていたのか……


「くっ――くそっ」


 墓場まで持って行こうと思っていたのに暴かれた真実。


「その通りだ……私は()()()()()()から、この店の名を、付けた」


 そうさ、昔オマエが欲しがった鉛筆、そこから名付けたんだよ。

 ドサリと、崩れ落ちる様に四つん這いになった私に呆れる声が届くものだと思ったがそんな事はなかった。


 みんな暖かく笑ってくれたんだ。

 そんな中、カオルさんが腰を落として屈み、私の耳元で優しく言った。


「そのネーミング、可愛くってあたしは好きですよ」


 ……カオルさんがそう言ってくれるならなんでも良いか。私を見詰めて優しく微笑むカオルさん。「可愛い。心から好きだ」



 ――あ?


 あ……、あーっ! しまった!

 い、今まで秘めていた……こ――心の声がうっかり……


 ……いや、それでも初めて恋した私の告白にしては――上出来な方――か。



 (あふ)れちまった私の心の声の内容が伝わったらしいカオルさん。

 ぼんっ、と顔を真っ赤に染めたカオルさんが少し躊躇いながらも、いつもの『にへら』で微笑んでくれた。


 なんと言ってもカオルさんが嬉しそうに笑ってくれたんだ。それだけで最高じゃないか。



ロケットベーカリーの由来、当たりました?


実は特に意味なくここのサブタイトルを『Rocket』にしたいが為だけの英語サブタイだったんですσ^_^;


そして次回!

本編完結!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ