籠城の召喚士たち
僕達四人は町の郊外へと移動していく。ミスギが歩きながら、僕の方に顔を向ける。
「私達は郊外でしばらく隠れていればいい。そうすれば、勝手に人数が減っていくはずだよ。それに……」
「人数が減らずにゲームが続行していれば、クロスギとアカヅキの方から私達の所にやってくるはずなのだよ。奴等はダークトライアド。目的の為に必ず動くのだよ」
サチが割り込むように、僕とミスギの会話に入って来る。僕達が話しているのが気に食わない、そんな膨れ面をしている。
「さすが、サチさんですね。頭が良い方なので話が早くて助かります」
ミスギが苦笑いをしながら、サチに頭を下げる。サチはまたプイとミスギから顔を背ける。
ホント、この二人仲が悪いな。何でだろ?
僕は不思議に思いながら、他の三人と共に街道を歩いている。幸いゾンビや他のゲーム参加者とは遭遇していない。警戒を緩めないように、僕は周りをキョロキョロと見回しながら先を進んで行く。
町の中央の時計台から、かなり離れた建物密集地帯に差し掛かる。僕達四人は建物と建物の間の広い道を歩いている。
すると、小高い丘の上にドンとそびえ立つ大きな屋敷が僕達の視界に入って来る。お金持ちの貴族や領主の所有物だと僕は感じた。その屋敷を包囲するようにゾンビ達がこれでもかと集まっている。
「ユウト、あれを見て。多分、あの屋敷にゲーム参加者が立てこもっている」
サチもゾンビが集まっている屋敷を指差す。幸いゾンビ達は僕達には気付いていない。ゾンビ達に見つからないように木々や岩に隠れ、遠くから屋敷の様子をうかがう。
屋敷は三階建てになっている。三階には広いバルコニーが設置されている。その三階のバルコニーをじっと見ていると、室内から人が表へと出て来る。
「うっとうしいゾンビどもだ。焼き払ってやる」
そう叫んで出て来たのは、マントを羽織っている魔法使い風の男だ。その男は、かつて僕とサチが戦った事のある"ロジックの召喚士"ガクヤであった。
屋敷の玄関のドアを破ろうとしているゾンビ達をガクヤは睨んでいる。そして、右手を伸ばし、召喚獣"ワイバーン"を呼び出す。呼ばれた飛行型の竜はゾンビ達の上を旋回した後、炎を放ち、ゾンビの集団を燃やして行く。
「サチ、ガクヤだ。アイツがいるって事は相棒のパラディンのマコトも居るはずだ。あの屋敷で立てこもって、ゾンビ達の侵入を防いでいるんだ」
隣にいるサチに僕は小声で話す。サチは僕の声に頷き、ゾンビ達とガクヤを分析するように見ている。
「ガクヤ、いつまでここでじっとしてるんだよ。食糧や回復アイテムは貯蔵しているけど、ストレスが溜まっちまうぜ」
銀の鎧の騎士が大きな声を出し、ガクヤに近付く。アイツはガクヤの相棒、パラディンのマコトだ。マコトはバルコニーから下を見下ろし、燃えているゾンビ達を眺めている。すると、また奥の室内から誰かが出て来る。
「さすが、ガクヤさんだ。やっぱりあなた達の仲間になって正解でした。ブハハハ、生き残るのはここにいる俺達六人ですね」
どこかで聞いた事のある笑い声の男が、ガクヤに話し掛ける。肥満体質で短髪にメガネ、汗を拭きながらこん棒を握り締め、ガクヤに歩み寄っている。
アイツは、フトオだ。僕の元相棒で、サチに恋心を抱き、僕に嫉妬し、僕を殺そうとしたあのフトオだ。ガクヤと手を組んだのか。
僕は驚いて、注意深くガクヤの周りを観察する。ガクヤの周りにゾロゾロと他のゲーム参加者が集まって来る。よく見れば、"マキャベリストの女帝"ツボネと組んでいたジャイという大男もいる。
「全員で六人居るね。みんな男ばっかり。ユウト、どうする? アイツら倒しちゃう?」
サチがバルコニーの男達を指差し、僕に顔を向ける。僕は苦笑いをし、六人のガクヤのチームに視線を移す。
ここで生き残れるのは六人だけだ。彼等六人と僕達四人、全員が生き残る事は出来ない。そういう残酷なゲームだ。戦うのか?
難しい決断に僕は悩む。相変わらず、建物を囲んでるゾンビ達は何も考えずにドアを叩いている。
あのゾンビ達では、ガクヤ達の防御した建物を崩す事は困難だろう。となれば、ダークトライアドのアカヅキやクロスギが動くのを待つか、あるいは僕達が自らの手で……。
そんな事を考えていると、僕達の頭上を何か大きな物体が通り過ぎる。太陽の光を遮って行った為、僕はその存在に気付く。
大きな鳥か飛行系のモンスターか、まさか。
僕は驚いて、すぐさま空を見上げる。バタバタと羽を羽ばたかせる音を出しながら、その物体は屋敷のバルコニーへと突入する。
「何だ、コイツは」
ガクヤのチームメンバーの一人が叫ぶ。と同時に、その男がバルコニーから落ちていく。落ちた人物はゾンビ達の大群の中に沈んでいく。ゾンビ達は餌に群がるが如く、その人物に噛み付いて行く。
「この魔物め、あっちへ行け!」
バルコニー上で、パラディンのマコトが大剣を振るう。その物体はヒラリと交わして、再び上空へと飛び上がる。
何だ、アレは?
僕はその飛んでいる物体をじっと見る。その物体は人間の形をしていて、背中には二つの羽が生えている。頭には二本の角を、全身は赤く、目はギョロギョロと動いていて、爬虫類のように冷たかった。
「恐らく、アレが処刑人の悪魔だね」
サチがボソッと呟く。僕は悪魔を見て、唾をゴクリと飲み込んだ。
小説を読む方は、頭が良く、優秀な方が多いと聞きます。
これからも、そんな皆さんに喜んで頂けるような面白い小説を書いていきますので、もしよろしければ応援して頂けると大変嬉しいです。
読んで頂き、ありがとうございました。
また、次話でお会いしましょう。




