天才でも解けない超難問
僕の身体が痺れたような状態になり、動かなくなる。
何だ、これは? 身体が麻痺してるぞ。全然、動く事が出来ない。
僕は無言で立ち尽くす。いや、動けないから、そのままの状態を維持しているというのが正しい言い方だろう。
「不正解の方は一回お休みです。第二問目は参加出来ません」
ナゾナゾオッサンが流暢に僕に説明して来る。それが逆に僕をいらだたせる。
「答えはあんぱんだ」
サチが人差し指を上に立て、元気よくオッサンに応える。
「正解です。おめでとうございます」
ナゾナゾオッサンは笑みを浮かべ、サチに拍手する。
「ユウト、今のはサービス問題だったのだよ。何でもパンの名前を言えば正解だったのに。深読みし過ぎなのだよ、君は」
サチは笑いながら、動けない僕の方を指差す。力を入れても身体が動かない為、僕は何のリアクションも起こせない。そんな状態で、ナゾナゾオッサンの第二問が始まる。
「続いて、第二問。問題、朝と昼間は使わずに、夜の間だけ使う台所道具は?」
ナゾナゾオッサンは自信満々に、ふんぞり返っている。まさに、どうだ、この問題は解けまいと言わんばかりだ。
サチはアゴに手を当て、微動だにせず考えている。ナゾナゾオッサンはニヤニヤとしながら、サチの方を見ている。
解答権の無い僕も答えを真剣に考える。しかし、何も思い浮かばない。答えが出て来ない。自分の閃きの無さを悔しく思う。
しばらくの間、沈黙の時間が流れる。声も上げられず、指一本も動かせず、僕はサチの方をじっと見守っている。
「そろそろ、時間切れですよ。ギブアップですかな?」
ナゾナゾオッサンがニヤリと余裕の笑みを浮かべた瞬間、サチの目がカッと開く。
そして、アゴに当てていた手を下ろし、彼女は笑みを浮かべる。
「答えはヤカンだよ」
「……正解です。やりますね、お姉さん」
ナゾナゾオッサンは感心した表情を浮かべ、再びニヤリと顔を歪める。
僕は目でサチに解説を求める。理由が分からなかったからだ。
「ヤカンと夜間、そういうことなのだよ」
サチはウインクをして、僕に伝える。なるほどと僕は納得をする。
「じゃ、そちらのお兄さん。復活ですよ。身体の縛りを解いて上げましょう」
ナゾナゾオッサンがそう口にすると、僕の身体の麻痺が解ける。手をグー、パーと何回もしながら、僕は身体が動く事を確かめる。
「いよいよ、最後の問題です。準備はいいですか? 超難問ですよ。止めてもいいんですよ」
ナゾナゾオッサンは相変わらず笑った顔をして、僕達を挑発して来る。
「いつでもいいのだよ。さぁ、問題を」
サチも腕組みをし、胸を張って応える。両者、自信満々のようだ。
何か、僕だけ蚊帳の外のような感じだな。ま、いいか。サチが居れば、何とかなるでしょ?
頭の良い相棒をチラリと見て、僕はオッサンからの問題を待つ。
「では、最後の問題。正解なら、あなた達の勝ち。不正解なら私の勝ちですよ」
「いいから、早くするのだよ」
「問題、私は女性にコスプレをしてもらうのが好きなのですが、私の最も好きなコスプレの衣装はなんでしょう?」
な、何っ? 最後の問題に来て、なぞなぞじゃなくて、オッサンの個人的な趣味の問題だと? ふざけるな。
驚きと怒りの感情が入り混じり、僕はオッサンの顔を睨み付ける。
ナゾナゾオッサンは少しエロい顔になっている。少し照れているとも言えるような顔だ。気持ち悪いよ、僕はそう思い、隣のサチの方を見る。
サチも明らかに嫌悪感をあらわにしている。ナゾナゾオッサンを軽蔑の目で見ている。ナゾナゾオッサンはサチのそんな顔を見て、スゴく興奮しているみたいだ。
このオッサン、召喚獣ではなく、ただのエロい変態のオッサンだ。
ナゾナゾオッサンの事を僕はそう位置付ける。正直、この勝負もどうでも良くなって来た。正解しても、あのオッサンが味方になるだけで、戦力の期待はほとんど無い。
でも、待てよ。不正解の場合、僕達はどうなるのだ? まさか、死ぬとかは無いよな?
僕は不安になり、考え始める。不正解の場合、どうなるのかがスゴく気になり始める。
隣のサチが小さな声でブツブツと独り言を言っている。
「看護師さんじゃ、普通だしな。バニーガールとかセーラー服かな? このセンも危ういな。うーん、分からない」
サチが真剣な顔で考えている。ナゾナゾオッサンはそんなサチを見て、また喜んでいる。そして、サチは意を決したように応える。
「正解は、浴衣かな?」
サチは少し迷っているようだった。応えた後も不安な顔をしている。
それは、そうだ。そんなもの分かるはずがないし、分かりたくもない。
「ブーッ。不正解です。お姉さんは動けなくなります」
その声と同時に、サチの身体が固まる。少しも動いていない。サチは苦しそうな表情をして、突っ立っている。
「ねぇ、オッサン。もし、僕が不正解になったらどうなるの?」
僕はたまらず質問してみる。
「身体の動かないあなた達を私が食べます」
ナゾナゾオッサンは眉一つ動かさず応える。
は? まさか、命懸けの問答だったのか? しまった、見掛けに騙されて、忘れていた。アイツは召喚獣だった。こちらが殺されるリスクを完全に忘れていた。
僕はあらゆる選択肢を模索し、考える。HSP特有の共感能力を使い、オッサンの立場になって、オッサンの気持ちを考える。
分からない……。どれも正解のような気もするし、どれも違うような気がする。
何を真剣に僕は考えているんだ。ただのあのオッサンの好みだぞ。どうでもいい話ではないか?
今の状況がホントに嫌になる。泣きそうになる。
僕はフゥッとため息をつくと、目をつぶる。
ゴメン、レイコ。どうやら僕はここまでみたいだ。君を生き返らせれなくて、ホントにゴメン……。
僕は死を覚悟し、命懸けの言葉を告げた……。
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