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大魔王を倒したらどんな願いでも叶えてくれるそうです。繊細さん(HSP)な僕は殺された彼女を生き返らせます。  作者: かたりべダンロー
人狼編

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男として譲れないもの

 スケマルのその一言で、僕の頭の中が真っ白になる。


 信じたくなかった。でも、彼が人狼ではないという証拠を探そうとすればするほど、疑惑が深まっていってしまった。そんな目を伏せたい現実に、僕は押し潰されそうになる。


「何で? 何で君は人狼なんかやってるんだよ? 君の目的は一体何なんだよ?」


 僕は泣きそうになりながら、必死で言葉を絞り出す。スケマルはフッと笑うと、寂しそうに僕に言葉を返してくる。


「拙者は魔物なのでござる。なぜ、魔物が人間に化けているのか、そう聞いてくれた方が正しい質問なのでござるよ」


「君は、人間じゃなくて魔物なのか? 人間が魔物になったんじゃなくて、魔物として生まれて来たのか?」


 スケマルは無言で頷く。そして、彼は真剣な目をし、僕の目を見て話を続ける。


「拙者は言うなれば、スパイのような者でござる。異世界から来た40名のゲーム参加者に紛れ込み、参加者を倒して行くのが役目でござる。つまり、拙者は大魔王様側の陣営。ユウト殿の敵なのでござるよ」


「そんな……」


 僕は愕然とし、口元を手で押さえる。

 

 仲良くなった友達が裏切り者で、僕達を殺すのが目的だったのだ。僕の心の中を絶望が支配し始める。


「だから、大魔王様を倒そうとするゲームの上位ランカーを狙ったのでござる。キオウを殺し、クロスギを狙ったのは、そういう理由なのでござる」


「じゃあ、何でミホノさんを攻撃したんだ? ミホノさんは上位ランカーじゃないのに……」


「クロスギの追撃を振り切る為でござる。奴は必ず、傷を負った拙者を追って、始末しに来るのが分かったのでござる。だから、拙者の代わりに人狼だと疑われる人物を作る必要があったのでござる。ミホノ殿はたまたまそこに居たので、代わりになってもらった、そういう事なのでござる」


「そんな勝手な理由で、何の関係もない彼女を……」


「ミホノ殿もゲームの参加者の一人でござるよ。拙者の身代わりの為に殺した所で、何の問題もないのでござる」


 スケマルは淡々と応える。いつものビクビクとして、弱々しい印象は全く受けない。僕の目の前にいるのは、人間の皮を被った冷徹な魔物であった。

 

 これが本当の彼の姿なのか?

 

 演じられた偽物の姿を見せ続けられた事に、僕は怒りの感情を抱く。


「それならなぜ、僕とサチを攻撃して来なかった? いつでも襲って来られた状況にあったのに。僕が最下位ランカーで襲う価値もないと、そう判断したからなのか?」


 僕は語気を強める。裏切られたショックと戦う価値がないと判断された事が、どうしても許せなかったからだ。


「それは……。それは違うのでござる……。拙者はただ、ユウト殿と戦いたくなかった。それだけなのでござる。今さらこんな事を言っても、信じてもらえないでござるが、拙者はユウト殿の事を本当に友として思っていたのでござる」


 スケマルがまた真剣な目で僕を見ている。嘘の無い目だ。僕は目を閉じうつむき、涙をこらえる。


「ユウト殿の戦う理由を前に聞いた上で、もう一度お願いするのでござる。このゲームをドロップアウトして欲しいのでござる。ダメでござろうか?」


「ゴメン、前にも言ったけど、それは無理だ。ドロップアウトすれば、僕は必ず後悔をする。その選択はない。スケマルくんこそ、大魔王側から抜け出す事は出来ないの? 僕も君と敵にはなりたくない」


「拙者も無理なのでござる。大魔王様には恩義があるゆえ。男の仁義として、命を掛けて、己の役目を貫くでござる」


 スケマルと目が合う。お互いの覚悟を感じ取る。そして、お互い退けない事を僕達は理解し合う。


「拙者はユウト殿と戦いたくないでござる。だから、拙者の正体を皆に黙っておいて下さらぬでござろうか?」


 スケマルが手を合わせて頼み込んで来る。


「僕も君とは戦いたくない。分かってるよ。君の正体は誰にも言わない。でも、相棒のサチには君の事、伝えて良いかな? コンビ間での情報の共有は大事だから」


 僕は軽くスケマルに返す。スケマルが人狼だと知った時はかなり驚いたが、彼との友人関係も保たれ、交渉も上手くいっている。僕はそう確信していたからこそ、安心をしかけていたのだ。


「ユウト殿……。申し訳ないでござるが、もう一つ条件として、サチ殿とのコンビを解消して頂けないでござろうか?」


 スケマルの意外な申し出に、再び僕は絶句する。


「サチ殿は大魔王様を倒すほどの力を秘めているのでござる。今はまだ、そのレベルに到達していないものの、いずれあの方は我々の最大の敵となる可能性があるのでござる」


 スケマルはまた淡々と話を進めていく。僕の気持ちを全く考えないで。


「だから、拙者はサチ殿を亡き者にせねばならぬのでござる。ユウト殿が相棒では、スゴくやりにくいのでござる。分かってもらえるでござるか?」


「ゴメン、スケマルくん。その申し出も受けられないよ。サチを殺させる訳にはいかないから。君の方こそ、サチを見逃す事は出来ないのか?」


「出来ないのでござる。彼女は我々にとって、それ程の存在でござるゆえ」


「サチは僕が守ると決めたんだ。例え、君との戦いになったとしても、僕は絶対に譲る事は出来ない」




 

読んで頂き、ありがとうございました。

もし良かったら今後の執筆の励みにしますので、ブックマーク、評価などをよろしくお願いします。

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